二度目の再会は危険な香り。
「ここは?」
俺は森の中にいた。
さっきまで街中にいて、急に地面が割れて、巻き込まれたのを覚えている。
なんだ、これ。
いわゆる異世界転生ってやつか?!
あ、服は学生服のままだし、変わってない。
ってことは異世界転移か?!
どうするべ。
森を彷徨っていると、やせ細ったガキを見つけた。
白い髪に赤い瞳の子だ。
アルビノ!
特別な子だと思ったら、やっぱりそうで、魔族と聖女の間に生まれたらしい。
両親は人間と魔族側から迫害の末に死亡。
それで彼は1年ほど一人で過ごしていたらしい。
俺と彼は二人で暮らし始めた。
「これ、好きか?」
「うん」
ノルはあまり話せない子だった。
女の子みたいで可愛い。
慣れてくると徐々に笑顔を見せてくれて、いやあ、弟がいるってこんな感じなのかなあと思ったりして。
俺とノルの平和な生活は、一か月くらいで終わった。
「人間の匂いがぷんぷんする。裏切り者じゃねーか!」
牛みたいな顔の魔族が突然現れ、俺たちに襲い掛かった。
反射的に俺はノルを庇う。
いてぇえええ。
痛みが激しくて、視界がチカチカした。
そんな中、ノルが魔法を発動させた。そいつは四散して消えた。
「タツロー!お願い、死なないで。置いて行かないで」
「ごめ、んな」
ノルに触れたかったが、俺の指先はすでに感覚を失っていた。
色が……
ノルの白色の髪が黒に染まっていく。
そこで俺の記憶はない。
「辰朗!」
次に目を覚ますと病院で母親に抱きしめられた。
いきなり元の世界に戻って、俺は混乱していた。
だが、そのうち俺が経験したのは、夢の中のことだったと自覚した。
異世界移転なんて現実にありえないし、俺は陥没現場で見つかった。異世界から何かもってきていたら、証明できたんだけど、何もない。
俺が地下にいたのはたった三日間だったらしい。
異世界で過ごした日は一か月くらいだったから、あり得ない。
ノルのこともそのうち、思い出さなくなっていた。
だから、俺は今とても困っている。
目の前の、真っ黒の髪で真っ赤な瞳の男が殺気を放ちながら俺を見ている。
殺気なんて、普段まったく感じたことなかったけど、今はひしひしと感じている。動いたら殺される、全身の毛が逆立っている感じだ。
男は黒い服を着ている。
なんていうか中世っぽい。
その周りにいるのは、人間じゃない。
えっとオークって生き物っぽい。
アニメや映画の知識だけど。
どうやら、俺、異世界転移をしたらしい。
そして二年前、俺はやはり異世界転生していたらしい。
「私は、タツローのことを忘れない日はなかった。しかし、お前は違ったんだな。私のことなんて、すっかり忘れていた」
男は俺を睨んだまま、詰る。
男はノルらしい。
え?少年って言ってなかった。
うん。
俺が会ったのは少年だった。
十歳くらいの女の子みたいな。
けど、今目の前にいるのは、大人だ。うちの親よりはかなり若いけど、俺よりは絶対年上。しかもかなり上だ。
顔が同じ、よく見ればノルが成長したらこういう顔になるかもなあ、とは予想できる。
だけど、ノルと会ってから二年しか立っていない。
俺は今十八歳。
ノルも二年後であれば、十二歳くらいのはずだ。
だが、目の前の怖い綺麗なお兄さんは、自分をノルだという。
いや、わかるわけないよね?
だって、俺、あれは夢だと思ってたし、ノル、変わりすぎだろう。
俺よりかなり年上なんて、ありえない。
「タツロー。私は二十年、お前を待ち続けた」
「に、二十年!?」
「なんだ、その驚きは?」
「いや、俺は、小さいノルと会ってからまだ二年しかたっていないし」
「二、二年?!時間の流れが違うのか?私はこの二十年間で、お前が別世界からきたことを悟った。そういう魔法がないか探して、やっと召喚魔法を身に着けた」
召喚魔法、そうか、俺は召喚されたのか。
ノルに……
じゃあ、帰る方法はあるってことか。
「ノル。お前の用事が済んだら、俺を元の世界に戻してくれないか?」
「はん?何を言っている。元の世界に戻すわけないだろう。やっとタツローに会えたんだ。お前はずっとこっちにいろ」
「はあ?なんで?」
「私は黒の魔法を発動したことで、完全に魔族になった。おかげで、魔族には歓迎されるようになったがな。だけど、人間じゃなくなったから、昼は動けなくなった。光を浴びると魔族は死ぬからな。私は人間の生活に未練がある。だけど、私は人間に戻れない。光を浴びれないんだ」
あの時、そう、ノルは魔法を発動して、牛のような魔物を消滅させた。
髪色が黒色に染まったのは、黒の魔法を使ったからか。
魔物が生きていたら、俺は殺されていたかもしれない。
ノルは命の恩人だ。
「……わかった」
借りは返すのが筋だ。
もし、ノルが俺といるのが嫌になったり、飽きたら、その時元の世界に戻してもらおう。時間の流れが違うみたいだから、元の世界に戻ったとしても前みたいに誤魔化しがきくかもしれないし。
「タツロー。お前の考えていることは予想できる。残念だが、私がお前に飽きることはない。この二十年、ずっとお前のことを考えてきたからな」
俺はノルの言葉を聞き流していた。
だって、俺とノルが過ごしたのはたった1か月間。
しかもなんか俺がノルのためにご飯作ったりしていただけだからな。
飽きられるのは早いっと軽く考えていた。




