第三話:演出師(エンシュツシ)の罠
俺は気づけば、奇妙な劇場の中にいた。
廃ビルの奥で響いた「パチン」という音に導かれ、足を踏み入れた場所。だが、そこはまるで“舞台”のようだった。
赤いカーテン、くすんだスポットライト、そして観客のいない座席。
――ガラララッ
スポットが点き、ステージに現れたのは、マジシャンのような風貌の男だった。燕尾服に、リール柄のシルクハット。顔には笑っていない仮面。
「ようこそ、仮面ライダー・ジャックポット。本日の演出をお楽しみください」
「てめぇがテンカイの幹部か……」
男は一礼した。
「私は“演出師”。この街を彩るリーチの魔術師。あなたの“運”が本物かどうか、確かめさせていただきましょう」
パチン――指を鳴らすと、劇場全体が赤い光に染まり、地面がスロットリールのように回転を始めた。
「演出開始――『スーパーリーチ・ホールの迷宮』!」
足元が崩れ、俺は暗闇へ落下した。
目を覚ますと、俺は白い廊下にいた。空間が歪み、道がリールのように回転している。
「こいつ……空間ごと“演出”にしたのか」
《チャンス到来! 分岐演出発生!》
頭上にホログラムのアナウンス。出現するのは複数の敵。偽物か? 本物か?
「紛らわしい演出で翻弄するつもりか……!」
戦いながら、俺は感じていた。この演出は、タイミングを間違えれば致命傷になりかねない。
「なら――俺が“見極める”!」
ラックドライバーに新たなリールコアを装填する。
《フォームチェンジ――ジャックポット・リーチブレイカー!》
変身エフェクトが始まる。全身は漆黒と紫を基調とした装甲へと変化し、肩にはレバー型のセンサー、目元にはリールの数字が流れるバイザー。
「これは……動きが“見える”」
敵が動く。背後からの奇襲――リールが「リーチ」と表示された瞬間、俺は反射的にレバーを下げる。
「カウンター演出、発動!」
ビシィッ――!
敵の攻撃を受け流し、スロットナックルで逆撃。衝撃とともに敵は爆散。
「このフォーム……相手の攻撃タイミングを“演出”ごと読めるのか」
再び現れる敵たち。今度は「擬似連演出」。だが、俺にはわかる。三体目が“本命”だ。
「ブレイクチャンス――!」
バイザーのリールが「3」「3」「3」で揃い、腕のナックルが光を放つ。
「リーチブレイカー・カウンターバースト!」
拳に集まるエネルギー――そして、一閃!
敵はまとめて粉砕され、迷宮の空間が音を立てて崩壊していく。
元の劇場に戻ると、ステージにはエンシュツシが立っていた。拍手をしながら。
「なるほど……リーチを“破る”とは、さすがですね」
「次はお前の番だ、演出師」
男は微笑み、舞台袖へと消えた。
「また次の“演目”でお会いしましょう……ライダー」
その場に残されたのは、一枚のチケット。
《FINAL JACKPOT SHOW:開演まで、あと7日》
次回:「運命のライバル、スロットレイヴン」――突きつけられたのは“期限付きの予告状”。テンカイの陰謀が一層深まり、レイは仲間となる存在と出会う――!?