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エッセイ

時にはこんなこともあるよね

作者: 山本大介

 ちょっとしたツイてない日。

 

 私の仕事あがりからの〜なんちゃって旅行へと向かう車中の事です。

「今日ホテルから宿泊の確認があって、併設する温泉の浴場が故障して使用できないって」

 と、奥さん。

「ふーん、じゃあ、部屋のユニットバスを使うってこと?」

 私は返します。

「えっとね、露天風呂とサウナは利用できるそうよ」

「そっかあ」

 楽しみの温泉がまともに入れないのは、テンションが下がります。


 私たちは、ホテルに到着しチェックイン後、外で夕飯をとって、ホテルに戻り部屋でダラダラと過ごします。

「ねえ、温泉どうする?」

 奥さんが私に尋ねます。

「せっかくだから、行ってみる?」

 乗り気はしないもののせっかくの旅です。

「そうね」

 で、遅めの23時前に温泉へと向かいます。


 おりしも今日は大寒波到来、ホテルの外は雪がチラついています。

 隣の温泉施設まで二人で猛ダッシュしました。

 中へ入りほっとしていると、カウンターにいた従業員のマダムが、

「温泉入られますか?」

 の一言、

(そりゃあ、ここにいるんだからそうでしょ)

 と思いつつ、 

「はい。お願いします」

「あいにく、お客様が多くてメインのお風呂が使えないんですよ」

「それは聞いています」

「露天風呂とサウナは使えますけど、ちょっと待つかもしれませんし・・・ねぇ、寒いですから、ホテルのお風呂を使われた方がいいかと」

 ここまで来た、お客に言う台詞かと思いましたが、これもマダムの親切心からなのでしょう。

「じゃあ、様子を見つつ、入らせていただきます」

 私たちは温泉に入る決意は揺らぎません。

「はい。どうぞ」

 私たちは男湯女湯へと歩く途中小声で、

「言い方が・・・」

「キツイよね・・・商売っ気ないなぁ」

 と、ブツブツ。


 しかし、いざ、脱衣所で全裸となり温泉施設へ向かうと、洗い場はめっちゃ寒く、急いでサウナへと向かいました。

 ひとあたたまりして、露天風呂をのぞくと、大混雑のすし詰め状態に嫌気がして、私は即撤退しました。

 せっかくなので、限定のスイーツでも買っていくかと、カウンターへ行くと、さっきのマダムが「すいませんね。お風呂が壊れていて」

 の社交辞令。

「いえ。知っていた事ですから」

 と、私は苦笑いで返します。

 奥さんより先にホテルへ戻って、部屋のユニットバスに浸かろうかと思いましたが、ひょっとしたら奥さんも早くあがってくるかもと思い、ここで待つ事にしました。

「すいません。休憩所で相方を待たせていただきます」

「どうぞ」

 私は、椅子に腰かけ、本棚の「サライ」を手に取り浮世絵特集を読み耽ります。

 しばらくして・・・。

「あのすいません」

 と男性から突然の声、

「その履物、俺のですよね」

「へっ?」

 私は、はたと焦ります。

(そういや、下駄箱に置いたつもりのところに無くて、似たような履物を選んだのかも)

「すいません。間違えていたかも」

「・・・どうも」

 男性の方は訝し気に去っていきました。

 あのマダムが笑っています。

(にゃろ)

 私は裸足で下駄箱へ戻り、履物をみつけました。

(はぁあ・・・こういうこともあるよね。しっかり確認しなかったから・・・)

 多少、凹みつつも考えます。

 いや、さっさと戻っていたら、履物を間違えたままになっていたし、これはこれでよかったんよねと思い直します。

(怪我の功名か・・・)

 24時で閉まる温泉ですので、マダムが正面の大きな窓にブラインドを降ろし店じまいをはじめます。

 奥さんはずいぶんガッツリと温泉へ入っていて一行にやってきません。

(戻っていた方が良かった?・・・いやいや)

 と、もうしばらく、雑誌を読み進めます。

 すると、

「あ、ごめん。待っとったと」

 奥さんは、がっつりと温泉を満喫してたようで・・・。

 なんだかなあ。

 こういう日もあるよね。


 あるよね~。

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