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そして覇者になる ~織田信長の物語~  作者: ノーネアユミ
第二章 美濃攻略編

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十四条合戦と於口の戦い

 本陣に敵の首を持って帰る者が増えてきた。

 敵軍も後ろに下がっていくようだ。


「このまま進むぞ、砦を占拠(せんきょ)せよ」


 斎藤軍は墨俣(すのまた)を捨てて稲葉山に逃げて行く。


 墨俣は長良(ながら)川とその支流(しりゅう)に挟まれた要所だ。

 信長軍は支流を渡り砦に入る。


「良き場所じゃ。もっと堅固(けんご)に造れば美濃攻めも容易(ようい)になろう」


 さっそく柴田権六に伝え、墨俣を拠点に町や田を放火して回る。


 稲葉山に攻め入る雰囲気は出すけど、もちろん目的は敵の陽動(ようどう)



 十日ほどねばった早朝に斥候が情報を持ってきた。

「稲葉山から軍勢がくり広げられております」


 信長はすぐ敵のいる十四条村に軍を出す。


 さあ決戦と弓を放ち足軽たちが槍を打ちあう。


 そこまではいつも通りであったが、乱戦になる前に隊を率いていた武将の一人が討たれてしまった。

 司令官が討たれるとその隊は統制が取れなくなり退くしかない。


 勢いをそがれては戦いに勝つことはできない。泥仕合は日がしずむまで続いた。


夜襲(やしゅう)(そな)えよ」


 真っ暗な中で敵地を進むのは愚策(ぐさく)

 信長は陣幕(じんまく)で一晩すごした。


 敵兵は夜のうちに退いてくれたから、夜が明けると共に墨俣に帰る。



 本来なら態勢を立て直して攻め直すはずなんだけど、今回は問題がもう一つ。


 早々と討ち死にした武将にあった。


「お従兄弟(いとこ)君が残念なことに‥」

「うむ、犬山の気を損ねてしまうな」


 討たれたのは信長の従兄弟で犬山城の城主である織田信清(のぶきよ)の弟。

 この時代、親兄弟といえども完璧な味方ではない。

 従兄弟であればなおさら。


 信長はそんな一族をまとめるために従軍させたのだけど、()くなったら裏目(うらめ)に出ちゃう。


「犬山城の出方が分からぬ。今は清州に戻るぞ」

 墨俣の城には守備兵を置いて尾張に戻った。



 犬山城の織田信清は信長の従兄弟だ。

 信長が岩倉の伊勢守(いせのかみ)家を倒す時から信長に味方していた。


 しかし弟を亡くしたうらみか斎藤家に調略(ちょうりゃく)でもされたのか、やはり信長に反旗をひるがえす。

[*桶狭間の戦い以降、尾張は信長の独裁が目立ち織田一族として不満がたまっていたとの説もある]


「犬山勢、砦を築いています」

「やはり裏切(うらぎ)ったか、者共(ものども)! 進軍じゃ」


 砦のある小口の丘に軍を進める。

 

 犬山城の付近は平地と丘が混ざる土地である。

 つまり砦を築こうと思えばいくらでも造れる場所であった。


 小高い丘はとにかく攻めにくい。

 砦も一つだけなら簡単だけど小口・犬山の城に加え、美濃からも援軍があるようだ。

 両軍戦死者を出しながら時間だけが無駄に過ぎる。


 数時間、後やっとのことで城壁は破ったけれど自軍もボロボロ。

 信長は決着がつけられないまま清州に帰った。


 城は取れないわ、お気に入りの小姓(美少年)まで失ってしまうわで信長の気分は最悪。


(ええい、清州はまだか)


 帰り道まで長く感じた。



古典の戦記物には美少年の死がよく描かれます。

人々の記憶に残りやすいんでしょうね。ああもったいないって。

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