36 決戦当日正午 朗報
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善照寺に義元の居場所が伝わる。
「まことなのか」
梁田に柴田権六がつめ寄った。
「は‥はい、馬印と塗輿を見ました。間違いはないかと」
馬印とは長い棒のてっぺんに飾りを取りつけた物。
戦場で味方に大将の居場所を知らせる役目がある。
輿は人が担ぐ乗り物で、身分が高い者だけが乗ることを許されている。
塗輿と言うからには色がぬってあるのだろう。
つまり高級品。使えるのは大将だけだ。
今川義元が桶狭間にいるのはまず間違いない。
「我が軍はこれから中島に向かう」
今までは雑兵ばかりだったから誰も信長には反対しなかった。できなかったのだ。
しかし重臣たちならできる。
主君の無茶ぶりに口をそろえて反対した。
「丘から下りたら敵の的ですぞ」
(それはそうだ)
「この先の田は深田です。うっかり落ちれば足を取られますぞ」
(知ってるって)
「大体平地に出たら兵の少なさが相手に丸見えでしょう」
(集まってやっと二千だものな)
家臣の言葉に信長は心の中だけで同意する。
欠点はいくらだってあるのだ。
しかし作戦が決定した今、それらは全てささいなことであった。
「みな聞いたな、このあたりの田は深い、けして入るな、敵をけ落とせ」
反対を押し切り、信長は二千の軍勢を川ぞいに連れて行く。




