35 決戦当日正午 善照寺
熱々の握り飯をほおばりながら、信長は戦況を確認する。
善照寺から少し進むと視界が一気に開けるのだ。
信長は小高い場所から周囲を見渡す。
「鷲津と丸根は落とされたか‥しかし敵はずいぶん引きつけてくれた。秀俊、盛重、良くやった」
討ち死にしたであろう部下に手を合わせる。
「これなら本隊に危険がせまっても救援はおくれる。次は中島だな」
信長は川をながめる。中島砦は二つの川が合流する地点にある。
(敵はどちらかの川ぞいから来る。どっちだ‥ん?)
信長が考えをめぐらせていると、眼下で軍勢が動いた。
今川軍は中島にも兵を向けたのだ。
そして中島の守備兵は迎撃に出る。
「やめろ! 止まれ! 砦にこもれ」
信長の必死のさけびは届かない。
織田家の旗がボロボロ倒れる。
清州からの兵が到着したのはそんな中だった。
「権六、勝三郎、遅い」
時間がかかりすぎた家臣をしかりつける。
戦いに集中しすぎて、自分の行動が突飛すぎることには気がつけない。
信長が本陣を善照寺にしいたことは周囲に知れたようで、清州以外からも兵が集まる。
その一人と見られる武将が一人、信長の元へ走って来た。
「殿、殿、殿ぉ~簗田政綱にございますぅ」
「何があった、申せ」
ゼイゼイと息を切らしながら簗田は信長の前で膝をつく。
「て、敵大将の居場所、突き止めました」
信長は手を握りしめた。戦局を決定する、待ちに待った情報だ。
「で、どこじゃ」
「今川義元、桶狭間山で休憩中でござる」
(桶狭間山‥中島の南西か!)
信長の頭には義元の進軍ルートがはっきり映った。
義元の本陣がどこにあるのかは現在では不明です。




