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そして覇者になる ~織田信長の物語~  作者: ノーネアユミ
第一章 桶狭間編

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34/61

33 決戦当日早朝 敦盛

  多分この日の朝焼けはきれい。

「失礼いたします」


 小姓(こしょう)()ぶ声に目を開いた。

 どうやら少し(ねむ)っていたらしい。


 障子(しょうじ)が赤く()まって夜明(よあ)けをつげている。


鷲津(わしづ)丸根(まるね)(とりで)が敵に攻撃されています!」


「そうか」


 信長の頭は一気に回転した。


先鋒(せんぽう)は砦攻めにかかりきりになる。とすると後ろを気にする余裕などないな。その間に義元の位置を突き止められれば)


 しかし失敗したら織田軍は全滅(ぜんめつ)


(勝利か死か)


 信長は立ち上がる。

 体中がわき立つような興奮(こうふん)であふれているのに思考はやけに静かだった。


橋介(きょうすけ)敦盛(あつもり)を歌え」


 そばの小姓に命じる。


「は? 歌でございますか」

 いきなり歌えと言われて橋介は目をキョロキョロさせる。


 信長がもう一度「敦盛じゃ」と念を押してやっと歌い出した。


「人間五十年~下天(げてん)(うち)をくらぶれば~夢幻(ゆめまぼろし)のごとくなり~」


 信長は声に合わせてゆっくり()う。


(人生はたった五十年、生まれた命は必ず(ほろ)ぶか。ならそれが今日であっても‥かまわぬわ)


 心は決まった。


「みなに伝えよ、うって出る! 戦支度(いくさじたく)じゃ。(かゆ)を持って来い」


 寝ずにひかえていた小姓たちがわらわら動き出す。


 武具(ぶぐ)を用意する者、食事を持って来る者、他の家臣に知らせる者たちで、屋敷(やしき)の中は一気にさわがしくなった。


 信長は具足(ぐそく)を身にまとわせながら粥をすする。


 この作戦は時間との勝負だ。


「みな、熱田(あつた)神宮(じんぐう)に向え!」

 信長は馬にまたがる。


 あまりに急な展開に主君(しゅくん)について行けたのはたったの五人であった。


敦盛は平家物語に出て来る美少年の死を

テーマにした歌です。


人生五十年は平均寿命じゃなくて

長生きして五十年らしい。

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