24 稲生の戦い・後
「権六を倒した今、我らに敵はない」
信長は進軍の向きを林隊に向ける。
確かに信長軍は勢いがあった。
しかし連戦は兵を疲れさせる。
つまり決着は中々つかない。
「ワシも行くぞ」
信長も前線に向け馬を駆けさせた。
敵軍の中に立派な鎧の武者が見えた。
どうも隊の采配を取っている。
「あれを攻めるぞ、ついて来い」
小姓たちに声をかけ、周りのジャマな敵をけちらす。
「あれは‥林の弟か」
那古野組を率いていたのは家老の弟、美馬作守。
「覚悟!」
「ふぅっ」
槍を構えて突きかかるが向こうもよける。
しかし信長の小姓が別の方角から襲いかかる。
信長も馬の向きを戻して、また槍を突き出す。
数人がかりで何とか突き落としに成功した。
将の首をかかげれば、残りの敵は総崩れ。
意気ようよう城に戻った。
次の日は清州の軍勢をほとんど出陣させる。
敵の兵力が減っている今こそ城攻めのチャンス。
籠城策を取る那古野城は無視して末森に向った。
「城を引き渡せ」
信長が門の外からどなる。
返事がなければ門を破壊する。
でも、城攻め準備をしている途中に扉が開き使者が二人出て来た。
「我らは土田御前様に降伏を命じられました。ただどうか信勝様のお命だけはお助け下さい」
土田御前は信長と信勝の母親だ。父の生前から末森城に住んでいた。
(母上か)
信長はちょっとだけ思案する。
幼い頃はあまり良い思い出がない。
大体は弟や妹の方をかわいがり、泥だらけの信長はしかられてばかりいた。
信勝が謀反を起こしたのだって、母親が甘やかしながら育てた結果と言えなくもない。
(しっかし‥さすがに弟を討つのはな。よし、今回だけは母上の顔を立てるか)
斎藤氏と今川氏が敵の今、身内で争う余裕などない。
弟も柴田も林も許す。
使える駒は多い方が良かった。




