22 川
信長の住む清州城と林が立てこもる那古野城の間には川が流れている。
浅い川だけど渡るとしたらどうしても動きは制限されちゃう。
軍勢が渡っている最中に攻撃されることはさけたい。
「川の東に砦を築け」
家老の佐久間に命じた。
川を越えた先に砦があれば川を渡る間の防衛もできるし、城攻めの拠点にもなる。
そしてもう一つの利点も。
「敵城では戦支度が進んでいるようです」
斥候が知らせを運んでくる。
砦の作業は敵に丸見え。完成する前に攻撃したいのだろう。
「分かった、こちらも兵を出す」
信長はニヤリと笑った。
(想定通り)
清州も那古野も真っ平らな平野だが、城は少しでも小高い場所に造られる。
那古野城は特に北側と西側が崖になっている。攻め落とすのは困難。
だから籠城されたくはなかった。向こうから兵を出してくれた方が好都合。
「しかし昨夜は雨です。川を渡れるかどうか」
増水した川を渡るのは危険がともなう。
「今を逃したら砦も勝機も失う。行くぞ」
信長は精鋭部隊である七百名だけで出陣した。
軍勢が川岸に到着する。川の流れは速く水は濁っていて深さが分からない。
しかし信長は迷わなかった。
「あの松のあたりなら中州がある。水はひざまで来ぬであろう」
この於多井川は信長が那古野に来てからずっと水練を行っていた川である。
渡りやすい場所も当たり前のように覚えていた。
砦の予定地から平野を見渡すと、一軍が近づいて来る。
おそらく砦の完成を妨害するための兵だ。
那古野の城からも出陣しようとしている。
あちらは信長の出陣に気がついたからだろう。
那古野兵が到着する前に手前の軍勢を片付ける必要があった。
もしはさみうちにされたらお終いだから。
一手も間違えることができないピンチなのに信長はぞくぞくする。
「皆の者、うって出るぞ!」
未完成の砦などあっさり後にした。
現在の小田井川は水深も深いので
入っちゃダメですよ。
良い子は橋を渡りましょう。
当時は橋がないので徒歩か舟で渡ります。




