20 謀反・尾張
「これでまた敵に囲まれたな」
信長はため息をつく。
「この清州にいれば大丈夫でございますよ」
側近が機嫌を取ろうとしてくる。
「北の岩倉には攻めやすくござる。それに那古野の城を守っておられるのは、殿を元服前からお支えしている林殿ですよ、ご安心を」
しかしその林が裏切った。
子供の頃から知っていると言うことは吉法師のバカ騒ぎをずっと見て来たことでもある。
林にとっては信長はただの乱暴者。戦が多少好きなだけで我がままに家臣を振り回すダメ殿だ。
(織田家を率いるのであれば、学問を修め、礼儀も正しく、我らの言葉に素直に耳をかたむける方でなくては)
それは信長じゃない。
(ふさわしいのは信勝様じゃ)
林は信長の弟である末森城の信勝に目をつけた。
末森の家老、柴田権六に話を持ちかける。
「美濃が敵になった今、信長様では織田家が危うい。当主であるべきは信勝様であろう」
「しかしそれは謀反じゃ」
柴田は当たり前な理由で断る。
その程度で林はあきらめない。
柴田は頑固者だ。だからこそ一度味方に引き入れさえすれば、以降はつげ口の心配もない。
「権六殿はこのまま主家が滅びるのを見ておられるつもりか。それがしには那古野城がありまする。後は権六殿の武勇さえござれば、うつけなど相手になりませぬぞ」
「それは‥そうであるな」
権六は林の口車に乗った。
そして家老を引きこめれば信勝の説得も簡単。
信勝は昔からずっと兄はうつけで自分は優秀だと言われ続けていた。
本人にも兄を軽んじる気があったのだろう、すぐその気になる。
柴田権六勝家 今なら脳筋あつかいでしょうか。




