14 変身
そして会見当日。
信長の姿を見た家臣たちは口をあんぐり開ける。
マゲは髪を黄色のヒモでグルグルしばっただけ。
着物はそでをぬいで腕がむき出し。
腰にはヒョウタンや袋を何個もぶらさげて、大刀をさしている。
刀が金銀で飾られている以外はまだいつもの格好。
見慣れている兵も多い。
しかし、それにプラスしてトラ皮とヒョウ皮で作られた袴なんて物をはいているのだ。
「殿が変わっているのは知ってたけど、今日は‥一段と変だな」
「あんな成りで美濃の大将に会いに行くとはなぁ。金さえかければ良いわけじゃねえぞ‥」
本人には自分を強く目立たせ、かつ相手を威圧するためと目的がはっきりしている。
でも家臣はかえって不安になっちゃうことは分かっていない。
美濃衆も信長の行列を見てポカンと口を開けた。
斎藤家の家臣たちは上品な衣装を着て礼儀正しく並んで座っている。
注目されるのは大成功でもあきれられてしまう。
しかし‥それすら今回は信長の想定内であった!
「屏風をだせ」
馬から下りると休憩用の部屋に通される。
そしてすぐ小姓に屏風を引かせて周りから隠れた。
周りは訳が分からないのでザワザワする。
準備が整った信長は、ジャジャーンと登場した。
無造作だった髪はていねいにマゲを結われ、袴は渋い色の長袴。
見せつけるような大刀は止めて、上品な小刀を差している。
もちろん腰には何もぶら下げていないし、妙な着くずしなど一切ない。
文句のつけようのない正装だった。
織田家の者も斎藤家の家臣も全員あっけにとられる。
信長のねらい通りに。
(ふっふっふ、さて勝負はここからじゃ)
大河ドラマに良く出てくるシーンです。
画像検索は大分行いましたが、トラ&ヒョウの
袴姿は見つかりません。
今ならフェイクファーがあるから
実写で見たいですね。
斎藤道三がのぞき見する話は
坂口安吾・山岡荘八・司馬遼太郎の
三人とも書いていたので止めました。