13 斎藤道三
平手を失ったショックが収まる前に、またピンチがやって来る。
鳴海の城に続き、松葉と深田の城が取られた。
今度の敵は清州の大和守家。
やっぱり信長をうつけだと判断したみたい。
しかし松葉と深田は平地にある。攻めやすく守りにくい。
それに信長だって考えている。
(前回は手勢だけで向かったのが失敗だった)
今度は弟や叔父の助けも借りたから何とか勝てた。
まあ落ちた評判は中々戻らないけど。
織田のうつけのうわさは美濃にも届く。
「道三様、尾張のムコ殿のうわさをご存じでございましょうか」
話しかけられた斎藤道三はあごひげをなでた。
「はたして本物のタワケなのかのう。周りを油断させるための嘘かもしれぬぞ」
「しかし、親の葬儀にまで無礼なふるまいをするなど聞いたことがござりませぬよ」
「ふふ‥では一度会って確かめてみるか」
道三にとって信長がバカでも利口でもどちらでも良かった。
バカなら簡単にあやつれるし、たとえ頭が良くてもまだ二十歳程度の若造である。
(小ざかしい奴なら殺してしまえば良い。娘を嫁がせたのは尾張を手に入れるためであるし)
会見の場所は美濃と尾張の中間にある聖徳寺に決める。
「義父殿に会いに行くのじゃ、準備はおこたるなよ」
久しぶりの面白イベントで信長に気合が入る。
濃姫の父親で同盟者の斎藤道三ではあるけど、あなどられるのは絶対にさけたい。
「我らの強さを見せつけようぞ」
長槍組には朱色にぬった新しい槍を持たせる。
弓兵には買い集めた鉄砲五百を持たせて、鉄砲組にしたてる。
ちなみに彼らは全員が身分の低い足軽だ。
「これからの戦いは足軽が主力になるのだからな」
信長は満足そうに笑う。
「長袴に小刀も用意せい、それとあれを‥」
服装にも念を入れる。
ただ、言いつけた小姓には顔をしかめられた。
「あれ‥ですかぁ」
攻めやすく守りにくい城は城と言えるのだろうか?