11 新当主
天下を獲る、それは大それた願いだ。
まだ十代で少年っぽさも残る信長の頭には遠すぎる道のり。思うだけでクラクラする。
興奮のあまり普段着で葬儀に出ていることに気がついた時にはもう遅い。
あわてて後ろをふり返ると、涙目の爺が袴を抱えているのが目に入った。
瞬間、着替えをふり切って出てきてしまったことに気がつく。
(まー御仏ならこれくらいお許しくださる‥よな?)
めっちゃ恥ずかしいのを隠すため、抹香を仏前に投げつけた。
(取り合えず、強くなることは止めてはならぬ)
織田家の当主になれば使える金も増える。
村々から若者を集め自軍を強化。
この時代、土地をつげるのは長男だけなのでそれ以外はただの予備。
家や土地を受けつぐ可能性の低い次男や三男・四男・五男は喜んで織田軍に入った。
その数は約八百。
長槍や鉄砲の訓練も欠かさない。
天下をねらうのなら権威も必要になる。
「これからはワシを上総守と呼べ」
勝手に|官職名をなのる。
織田上総守信長、カッコ良い響きに信長は満足するのだが‥
これはちょっと失敗だった。
この時代、○○守と自分で勝手に名乗る武将は結構いる。
だから信長も問題なかろうと、平家物語に出てきた先祖の官職名を名乗ったつもりだった。
「信長様、上総は親王様の国です。上総守ではおかしいのですが」
平手に諭されて初めて知る。
「では、何なら良い」
「上総でしたら、守ではなく介ですねぇ」
なのですぐ上総介に変えた。
親王家は天皇家と血がつながっている家です。
官職名は作者も詳しくはないです。