10 父の死
信長の父信秀が倒れた。
強敵との|和ぼくに気がゆるんだのだろうか、疫病に感染したのだ
当主が弱るってことは大ピンチってこと。
今まで良好な関係だった岩倉の織田家まで敵に回っちゃった。
信秀はボロボロの体に無理をさせて出陣する。
追いはらうことは簡単にできた(岩倉勢も強くないからね)
けど、病気はどんどん悪化する。
薬を飲んでも神に祈っても効かない。
信長は末森の城で父の最期を|見届けた。
(あんなに強かった親父殿が)
まるで心に穴が空いたよう。
「ご葬儀はいかがいたそう」
家老たちが話し合っている。
どこの寺で葬式をするとか坊主は何人呼ぶとか。
くだらないことばかり。
経を読んで魂を浄土に送る思想が信長にはピンと来なかった。
(供養か‥ワシは何をすべきなのだ)
周りでは葬儀の準備が粛々と整っていく。
その中で信長は何もせず一人思いを深めていた。
(もう親父殿はいない。これからはワシが織田家を率いるのじゃ)
尾張の国内だけでも清州や岩倉と争っている。
国外では駿河の今川がいつ攻めて来てもおかしくない。
信長が力を示せなければ同盟相手の斎藤家だって危ない。
(ワシのなすべきこと、それは泣いたり経を唱えることではない)
それは領地を守ることだろうか?
( それだけ? 違うな。周りが絶対攻めて来れないようにするには圧倒的な強さが必要で)
圧倒的な強さとは? おそらく美濃や駿河を手に入れてもまだたりない。
心に稲妻が走る。
(天下を‥平らかにする力‥!)
信長が『天下』をねらい始めた、瞬間だった。