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2話 3歳になりました

 俺も今年で3歳になった。最近では、文字も読めるようになったし、言葉もゆっくりならば喋れるようになってきていて、うちの書斎に入り浸っている。

 この世界について記述された書物が相当量あったし、魔法について詳しく書かれたものも数多く蔵書されていた。

 さて、まずは貨幣についてだ。この世界には、鉄貨、銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、魔銀貨(ミスリルコイン)の7種が存在する。

 下から順に、10円、100円、1,000円、10,000円、50,000円、1,000,000円、100,000,000円相当となっている。後半の桁数が大きいのは、そちらは大きい取引で使うからで、普段使いは大銀貨まで、使ったとしても金貨までとなっている。

 この価値換算は、この世界の貴族御用達の高級品が、地球の普段使いの日用品と同じ感じだったから、そこから換算した。ちなみに、こちらは物価がかなり安いので、大銀貨が8枚もあれば庶民4人家族が2ヶ月は生きていけるらしい。

 次に、うち、ドラグローマの血筋についてだ。この血筋は、太古の昔より、竜と交流してきた血筋らしく、5歳になると竜と契約するのがしきたりだそう。

 国防や軍事上、ドラグローマの竜の力は最重要らしいので、ここフルベリア王国では、本家は公爵、分家は侯爵の地位を頂いているらしい。

 そういえば過去、ドラグローマ最強と謳われた竜使いは、竜族の頂点に近い存在、黒竜と白竜と契約したのだそうだ。

 ほーん、強そうだな。だが、重要なのはそこではない。重要なのは、契約が、5歳で行われるということだ。あと、あと2年…ついに俺も竜使いになれるということ…堪らんぞ!

 …さて、それはもう時間が経てば叶うことだから一旦置いておくとして、次は魔法だ。魔法の発動には、大抵の場合、詠唱が必要になるらしい。例を挙げるとすると、『偉大なる水の力よ、大いなるその御力に拠りて敵を打ち滅ぼす濁流とならん、ウォーターボール』とかだな。

 こんな厨二チックな詠唱を声を張り上げて読み上げるんだから、文化や価値観の違いというのは末恐ろしい。俺はというと、イメージするだけで使えるから、長ったらしい詠唱なんて無用の長物だけども。イメージといっても、文明の利器…水圧カッターやら、火炎放射器やらだ。

 はっきりとイメージできるものほど魔法の威力や精度も上がることがわかったからな。

 あ、余談だが、無詠唱はラノベとかであるあるの超高等テクだ。

 

「ちょっと練習」


 俺は、普段から使っている修練場に行き、的をおく。今回は、国民的アニメの、白と紫の宇宙の帝王の技、デ◯ビームを再現してみる。イメージさえ固まっちゃえばあとは簡単なお仕事。

 人差し指で的を指差し、魔力を巡らせる。魔力というのは、魔法の発動に欠かせないもので、その魔力を消費することで魔法を使うことができる。俺の場合だと、イメージに魔力を流し込んで発動する。溶けた金属を鋳型に流し込んで鋳造するのに近い感覚だ。多分…

 気を取り直して。イメージは固まった。いくぞ。


「デ◯ビーム!」


 紫色に光る一条の光線が、的どころか修練場の壁を突き破った。

 …あれ…やっちゃった?

 しばらくして、修練場と屋敷を繋ぐ廊下の戸がバンと開いて、父が入ってきた。


「おい、ルーク……お前が、今のをやったのか?」

「は、はい…」


 俺の返答に、父はワナワナと震えた。これ、怒られるやつだ。

 よし、先に謝っとこう。


「あの、ごめんなさい…」

「む?何故謝る?褒めにきたのだぞ?」

「ほめに?」

「そうだ」


 どうやら俺の先ほどの魔法を褒めにきたらしい。

 でも何故?

 自分の屋敷の設備が壊れたんだから、次からはダメって叱るところじゃないのか?


「まさかお前が、本家相伝の光属性魔法を受け継いでいるとはな」


 …そういうことか。

 重要なことが抜け落ちていた。

 俺は基本イメージするだけで魔法が使えるから忘れていたけど、普通、魔法には適正属性があるんだった。

 魔法属性はそれぞれ、火、土、風、水の4つの属性に加え、独立した相互関係の光、闇の属性の計6属性が存在している。

 父なら、土属性に適性がある。

 俺は、適性もクソもないが。


「他にも使えるのであれば、その魔法も見せてみなさい」

「はい…」


 じゃあ、火炎放射だ。

 結構な火力の火を掌から吐き出す。


「光を見せてほしいということだったんだが…お前、火にも適性があるのか……しかも詠唱なしで…ほ、他にもいけるのか?」


 あ、そっち…でも、俺はデ◯ビームとか、スペ◯ウム光線とかしか知らないから、似たり寄ったりになるぞ。ま、使えるもんは全て見せておいたほうがいいだろう。


「やってみます」


 光火ときて、次は水にすることにした。初めて打った水圧カッターと同様のものにする。

 そして案の定、こちらも修練場の壁を貫いた。

父を見ると、口をパクパクさせて、『この子は天才やぁ』と、心ここに在らずな状態で呟いていた。

 ついでだ。衝撃はいっぺんに受けておいた方がいいだろうし。

 俺は、銃弾をイメージして、土魔法で金属の弾丸を作り出して飛ばす。

 壁に大穴を開けてしまった。

 次に風。竜巻でいいか。天井が崩れ落ちた。

 最後に闇。

 …ブラックホールでいいか。

 修練場のあったところが円形に抉り取られた。父は俺が守っていたので無事だ。


「…んはっ、死んだばあちゃんが川の向こうで手招いているのが見えた…」

「おかえりなさいませ、おとうさま」

「あ、ああ…は?修練場は?」

「ボクのやみまほうでけしとびました」

「ん?私の聞き間違いか?消し飛ばしたと聞こえたが」

「はい」


 父が寝込んだ。

 ここ数日、『おばあちゃん、おばあちゃん』と夢でうなされているらしい。

 なんか、申し訳ないことしちゃったな。

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