第十三話:魔王様と西の魔王様
とうとう最後の西の魔王様も到着です。
さあ、なにが始まるのでしょうね?
ユーリィは厨房でそれを見てにっこりとする。
「上手く行ってるね!」
「ユーリィか…… お前、これもの凄く大変だぞ?」
ローゼフはユーリィを見てそう恨めしそうに言う。
それもそのはず、この二日間四天王の数人を巻き込んで牛の丸焼きを焼いていたのだから。
牛一頭丸々焼くのはとても手間がかかる。
豚の丸焼きとはわけが違い、中心部まで火を通そうとすると表面が黒焦げの炭になる。
熱を内部まで伝える為には火加減を注意しながらじっくりと時間をかけて焼いてゆくしか方法がない。
おかげで表面は奇麗にきつね色になっていて、牛本来の姿もしっかりと残っている。
「しかし、魔王様の為とあらば致し方あるまい」
今、火の番をしているのは四天王が一人、武のガゼルその人だ。
魔力を調節しながら炎を操り、焦がさない様に丁寧に牛を焼いている。
時たました滴り落ちる脂が火に焦がされ、じゅっと音を立てていい香りを漂わせる。
「ふう~ん、良い匂いがするから何かと思ったら、牛を丸々一匹焼いていたんだね? いやはや凄い凄い」
いきなり聞こえてきたその声に驚き、後ろを見るとオレンジ色を基調とした鎧に身を包んだ魔族が立っていた。
見慣れないその姿にユーリィは首をかしげるも、ローゼフやガゼルは驚きその場で膝をつく。
「西の魔王、ロベルバード=レナ・ド・ウェスタ―・ロマネテ様、お着きになられておられたのですね」
武のガゼルがそう言うと、ロベルバードはにっこり笑って言う。
「いいよそんなにかしこまらなくても。それより料理の最中だったんだろ? 面白いよね、牛を丸々焼くだなんんて!」
何となく軽い感じがするも、これが西の魔王だという。
ユーリィは改めて西の魔王を見る。
見た目は魔王と同じくらいの年に見える。
頭以外を鎧で全部包んでいたが、その顔はかなりフレンドリーであった。
どちらかと言えば優男。
女性ならすぐになびきそうなイケメンではあるが、やたらと軽そうな印象を受ける。
しかし片膝をついたままのガゼルやローゼフはピクリとも動かず、額に脂汗を溜めている。
「ん~、君は人間だね? なんで君がここに居るの??」
「あ、ぼ、僕は魔王の小姓で、魔王に言われて料理を作って……」
「ふぅ~ん、でも料理よりも君の方がずっと美味しそうなんだけど?」
そう言ってロベルバードはずいっとユーリィに顔を近づける。
「恐れながら、ロベルバード様。こ奴は我が主の小姓ゆえ、その辺でおやめいただきたい」
「ん? 君は確かザルバードの四天王の……」
「武のガゼルにございます」
ガゼルのその言葉にロベルバードは、すっとユーリィから離れる。
そしてにっこりと笑って手の平をひらひらさせながら去って行った。
「ごめんね、邪魔しちゃったね。それじゃぁ人間の少年、また後でね」
ロベルバードが去って、ガゼルもローゼフも大きく息を吐く。
「まったく、いきなり西の魔王が現れるとは思ってもみなんだ」
「ひぇええぇぇ、相変わらずおっかねぇ人だよな」
ガゼルとローゼフのその言葉を聞いてユーリィは驚く。
まるで西の魔王を恐れているかのようなそぶりに。
「二人とも、あの西の魔王ってそんなに凄い人なの?」
「魔力でいえば我が主を超えるやもしれんからな」
「いやはや、七十年前と全く変わらず、もの凄い魔力だよな」
ガゼルはそう言って額の汗をぬぐう。
ローゼフはいなくなったその先を見ながら身震いをしている。
しかしユーリィには全くそんな感じには思えなかった。
「そんなにヤバい人なのかな? 今までの魔王の中で一番大人しそうなのに」
ユーリィはそう言いながら最後の仕上げの指示をするのだった。
* * * * *
「お前ら、よく集まってくれた」
魔王は円卓のテーブルに着きながら集まった他の魔王たちにそう言う。
「ふむ、やっと全員そろったか」
「久しぶりだね、みんな」
「いやはや、ザルバードが呼んでくれるとはね」
魔王たちは各々の椅子に座りながらそんな事を言っている。
そして東の魔王であるザルバードは全員が着席したのを見計らってにんまりとして話を始めるのだった。
「さあ、グランドクロスの円卓の会議を始めるぜ!」
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