マリーと魔法の暖炉
なろうラジオ大賞5参加作品です。
使用ワードは「暖炉」。
ここは、深い深い森の中。
しんしんと雪が降り積もる、冷たい夜です。
1人の少女が、よろよろと森を彷徨っていました。
少女の名前はマリーといいました。
マリーは、貧しいお百姓の娘でしたが、口減らしの為に意地悪な商人のところへ奉公に出されていました。
でも、商人の虐めに耐えかねたマリーは、とうとう我慢できなくなって、こんな寒い晩にお屋敷を飛び出してきてしまったのです。
宛もなく彷徨い、知らない森に迷い込んでしまったマリーは、空腹と寒さで今にも倒れてしまいそうでした。
「ああ…私、このまま死ぬんだわ…」
ついに座り込んでしまったマリーは、ふと、木々のむこうに、扉があるのを見つけました。
最後の力を振り絞り、マリーは扉の前まで辿り着きました。
夢中でドアノブに手を伸ばすと、鍵はかかっておらず、扉はすんなりと開きました。
朦朧とする意識の中、ほとんど本能で明るく暖かい方へ身を寄せたマリーは、しばらくたって身体が温まり、少し人心地がついたとき、自分の眼の前にある暖かいものが、見知った暖炉ではないことにようやく気付きました。
そこにあったのは、ぴっかぴかのバイオエタノール暖炉だったのです。
そこへ、1人の男性が現れました。
「いやー、やっぱり鍵も掛け忘れてるし暖炉も消し忘れてるわ。注意力散漫になってるんだなぁ、スランプって怖ぇなぁー」
誰もいないと思って心の声を全部口に出していた男性は、ソファーの影に隠れていたマリーに気づくとものすごく驚きました。
マリーは、ここを追い出されては今度こそ死んでしまうと思い、一生懸命これまでのいきさつを話しました。
マリーの話を聞き終えた男性は、
「これはアレだろ、扉で異世界と繋がっちゃった的なやつだろ!マジかー、…てかこれで次回作イケるんじゃないか…?!」
と、また独り言を言いました。
実はこの男性は売れっ子小説家でしたが、最近はスランプに悩み、別荘にこもって次回作の構想を練っていたのです。
小説家は、マリーの世界の話を取材させてくれるのなら、ここで衣食住を保証すると約束してくれたのでした。
こうして、ネタ切れ小説家と薄幸少女は、お互いWIN WINな関係となり、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!