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第1話「狐娘はつままれる」

それから、俺は数ある世界で稲荷家の長女、

稲荷 翔として生まれた。

幼少期は、稲荷家の娘、巫女として様々な礼儀や仕来りを学び、

小学生になってからは自分が狐娘としてバレないように変幻の力を使い尻尾と耳を隠して学校生活を送り、

休みの日などは神様のお告げを聞いて使命をこなしていた。

そうして、俺は中学生になった。


■□■□■□■□■□


「……」

ポチポチとスマホで誰かに到着して待っていることを伝える。


トットっと、走ってこちらに向かってくる一人の人物。


「ごめん~待った?」

彼女の名は橘 楓(たちばな・かえで)

サイドを外巻きにしたロングの茶髪に前髪を真ん中分けにしてヘアピンをしている。

制服はきちんと着崩さずに、スカートも膝丈より少し短いくらいだ。

そして胸元にはハート型のペンダントをつけている。


「いつも、髪の手入れに時間がかかるなら切っちゃえば?」

ショートヘアーでサイドバンクを肩まで伸ばしている俺を指差して言ってみる。


「それは、それで私のアイデンティティが崩れる気がして」

楓は一見するとギャルっぽいが、彼女から発せられる雰囲気はおっとりとしていて柔らかい印象を受ける。

顔立ちはとても整っていて美人だが、どこか幼さが残る可愛らしさがある。

身長はやや高めで、スタイルはスレンダーである。

そんな彼女が俺の幼馴染みで元初恋の人である。


「じゃ、行くよ」

そう、私たちは今日入学式なのだ。

(なにをやっているのであろう)


■□■□■□■□■□


それから、体育館で開式の辞、校長先生のお話しが終わり1人の在校生が演台に立つ。


「新入生の皆さん。

今日は晴れ渡る空の元、この学舎に集い。

これから、ここでで学んでいくことを楽しみにしているでしょう」

おーなんか凄いなぁと聞き流しながら目線を逸らしていると

「では次に新入生代表挨拶です」

とアナウンスがあり

「新入生代表 一年A組 稲荷 翔さん」

……ん? 呼ばれた名前に反応して視線を戻す。


「え? あっはい」

席を立ち壇上に上がりながら横を見ると、してやったりという顔をしたさっき話していた彼女がいた。


あいつかぁ!!!!くっそぉ!!!

仕方なく前を向き、咳払いをして声を整える。


うわぁ……めっちゃ見られてるよ……緊張するなぁ……。

まあでもやるしかないよな。

俺はそう覚悟を決めて口を開く。

そして、


■□■□■□■□■□

入学式が終わり教室に戻った僕達は担任の教師から説明を受けていた。

ちなみに僕のクラスは1-A、隣には楓がいる。

そして今受けている授業もこの学校についての話だったりする。

俺は基本的に聞き流しているけど、楓は真剣に聞いているようだ。

『真面目だなぁ……』

と、そんなことを思っていると先生の話が終わった。


これから各自で自己紹介をする流れになった。

俺は名前と趣味くらいしか言うことがないので軽くで済まそうと思った。

下手に自己紹介すると墓穴を掘る事にもなるし……

とりあえず前の人が終わってから考えるか。

そう思って前を見ると、ちょうど前の人の自己紹介も終わったところらしく、次の人に回ってきた。

次……俺か。


その場に立ち皆の方を向く、

「ちーす。今朝の挨拶にも出ました。稲荷 翔です。趣味は読書。おねしゃーす。」


「えぇ!?それだけ?」

隣に座っている女子が驚いた様子で声を上げた。

「えっ、だって」

「もっとなんかあるだろ?趣味とか特技とかさぁ!」

今度は前の席に座る男子生徒が身を乗り出しながら聞いてくる。


「いや、特にないけど・・・強いて言えばゲームかな?」

俺の言葉を聞きクラスの奴らはざわめき始める。


「マジかよ!お前ゲーオタなのかよ!!」

「いや別にオタクって程じゃないけどな」

「はぁ?じゃあなんでゲームやってんだよ!意味わかんねぇんだけど!」

「まあまあ落ち着けって、俺は普通にゲームが好きなんだからさ。あと別にそんな熱くなるような事でもないと思うぞ?」

俺がそう言うと前の席の男は黙り込んだ。

そしてそのまま静かに着席する。

どうやら納得してくれたようだ。

『ふぅ~なんとかなったか』

俺が内心ほっとしていると、クラスの自己紹介は終了した。


「えっ、これから3年間宜しくお願い致します。では、今日は解散ね」

「きり~つ。」

「れ~い」

こうして俺の中学生活1日目が終わった。

教室を出て帰ろうとすると後ろから声をかけられた。

「ちょっと待ってよ。一緒に帰りましょ?」

「うん?あぁいいぞ」

楓だ。

今日は普通に帰っていいので一緒に帰ることにする。


「最近のさぁ~翔、冷たい」

「そうか?何も変わらないが?」

「前より遊んでくれなくなったし、行っても留守だし一人でどこ行ってんの?」

「ゔっ、それは……」

言えない、巫女服で耳と尻尾を露出して人助けをしているなんて……

今回、全校生徒の前であいさつしたのも、ウチの母と校長が仲がいいのもあるし、

俺がさっき言ったけど善行をしている事も関係している。


「……言えない」

「えーー。教えてよ?」

「すまん……」



言えるわけがないだろ!!



でも、こいつには感謝しないとな。

このお陰で今があるんだから。


「まぁ、言いたくないならいいや。私と翔の関係ってそんなものだったんだね……」

「違うぞ!お前とはずっと友達だから!」

「じゃあ、また明日ね。バイバーイ」

「おう、また明日な!」

俺は急いで帰っていった。

あいつ、あんな言い方する奴だったかな? ちょっと気になるな。


確かに、最近天界との交流が忙しい。

と、歩いて行くと人の背倍ほどの鳥居が整列した石階(いしばし)を潜る。

その頂きに辿り着くと最近立て直された社とそれに続く母屋。大きな樹齢1500年だったか楠が社の裏に植わっている。


「ただいまー」

「おかえり、翔」

この人が俺の母、稲荷 天(いなり・そら)

金髪は稲荷家の巫女にだけ継がれる遺伝で、現役の時は母も巫女をしていたらしい。


「あっ、そうそう学校の人……(しずか)ちゃん、来てるわよ」

準備ができたら縁側に行きなさい。


!……大事なこと、思い出した。


俺は、今日の事に僅かばかりの苛立ちを思い出しながら、自分の部屋に行き、

制服を脱ぎハンガーに掛けると、いつでも使える様出してある巫女服を衣紋掛けから外し着なおす。

そして、縁側に向かった。


■□■□■□■□■□

その人物は、淹れてもらった湯吞みに注がれた茶を手に、小鳥と遊んでいた。

いつも、向かってくる音自体荒々しいモノがあるが今日はいつにも増して響いてくる。

少し、ずり落ちた眼鏡を直すと音の主は後ろにいた。

「平。何の用?」

「あら、翔。遅いじゃない。もう少し、遅かったらちょっと寝ていた所よ」


そこにいたのは、入学式。生徒会長として呼ばれた柳森 平(やなぎもり・しずか)その人だった。




続く…

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