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プロローグ『古の契約』

願い……それは、生き物としている限り誰しもが抱く衝動。


腹が減った、飯が食いたい。

起きているのが辛い、床に就く。


といった日常的なものから、


僕私、○○○○になりたい(したい)。


といった、目標や欲も願いのひとつだろう。


これは、その願いが叶ってしまった1人の者の物語。


■□■□■□■□■□


西暦2030年。


20年代に流行した病は少し強力な風のようになり、街中でもマスクを付けて生活するものも殆どいなくなったそんな世界線。


俺……こと、伊藤(いとう) (かける)29歳。

やってた事は、アプリ開発の会社でプログラマーをしていた。

職場環境も人間関係も何一つ悪いものはなく俺もその会社に勤めてよかったと思っている。

ただ、小規模の会社の為人員不足で案件にもよっては何日、何週も徹夜に近い労働環境で働いていた。


さっきも、会社のデスクで仕事をしていたはずだ。


ここは、どこだ……


そこは濃霧に包まれて、何も見えない。

と途端にお香の様な香りが漂ってきて、

それに伴い、体を惹かれていく。



どこへ向かってるんだ……


徐々に視界が開けていく、

自分が赤い何からを潜らされていて、足元が平らな所から玉砂利道に変化している事に気づく。


あれ、服は何処に……おぉおお!


と、途端に霧が晴れた。

屋久杉のように太く、スカイツリーより高い樹の前に

大小の社が迷路のように構成されている。


「ここは、どこだ?」

「ここは幽世(あのよ)よ。」


背後から声をかけられ思わず振り向く。

そこには派手な花柄の入った赤い着物をに身纏い、

長い金髪を簪で止めている背の高い女性がいた。


ふぁさ~


1つ違和感のあるとしたらその人には狐の耳と立派な尾が視界に入る。


「き、狐?」

「お主も狐じゃろうに」


ひょこひょこ。

髪から突き出た耳と腰に生えている小さな尾が自分の感覚にリンクされ動き始める。


「えっ、えっ?えっ?!」

狐になっている事にも驚いたがその前に自分が男で無くなったことにも気付き驚愕を隠せない。


「なんで」

「それは、お主が……確か、中学生だったかの。私にお願いしたのを覚えているかの?」

「お願い?」


はて、なんの事だ。

中学生?一体何の話を……はっ?!


俺は頭を抱えて蹲る。


「高校受験の時か……」

「当たり!」

あの時、受からなかったら親から家を出て行けと言われたが、

厨二病のせいで勉強が手につかず、ダメ元で地元の稲荷社

に行き願ったのだ。


「確か、''()()()()()()()()()()()()()高校に行かせてください''だったかの?」

「あの時はナイスでした」


と伝えると神様はGoodサインをくれた。


「って事で、お主には狐になってもらった。」

「はい」

「お主には2つ選択肢がある」


ひとつは、ここ幽世で小間使いとして入り生涯を尽くす生活。


もうひとつは、

「現世で我のメッセンジャーになる生活じゃ、人生やり直すのもありじゃろ」

「人生をやり直す……ハッ」

学生の話が出たので軽く記憶をよく思い返してみると俺には叶えられなかった願いがあった。


「それって、俺が元いた世界でもいいのか?」

「現世は沢山あるからの~出来るぞ」

神はそう言った。


俺の叶えられなかった願い……

それは、初恋と仲良くなる事だ。

昔の俺はそんな勇気はなく、その人とは言葉1つ交えることなく学生を終えた。

今ならそれが叶うかもしれないのだ。


「じゃあ、もう一つだけお願いだ。○○って子と幼馴染にしてくれ。」

「分かった、狐の手はいくらあっても足りないからの」

神は1つの扉を指差す。


「そこを潜りたまえ。お主の事、期待しておるよ」

「ありがとう」

そういって、扉に手をかけると俺は大事な事に気が付いた。


「なぁ、あんた。名は?」


神はふっ、と息を漏らすと続けて言った。

稲荷 神(いなり かなえ)


「行ってきます神様(かなえさま)


俺はそういって、ガタついた引き戸を開き、

1歩前進した。





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