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第五十三話 複製と人造と

「俺はイルキア基地で研究されていた戦闘能力を高めたパイロットとして造られた。」


 ダース・ユリオンは目の前で戦っているイオクに対して語り掛ける。


『いや、別に自分は興味ないのでいいです。どうせ少尉が原因で追い出されて帝国に来たとかそういうことじゃないんですか? そうやって自分だけがベラベラと話しているからバーベラ大佐にも鬱陶しがられていたんですよ。』


 対してイオクはダースに対して冷静に返す。そういつもなにかにつけて正論ばかりを言ってくる彼がダースは嫌いだった。


「相変わらずつれないことを!」


 切り結びをほどくとイオクの機体にライフルで攻撃をする。優秀とは言ってもそれなりの期間一緒に過ごしたダースにはイオクの動きはある程度予測出来ていた。

 そのためそれなりに攻撃は直撃をしていた。


 二機は被弾箇所が徐々に増えていった。

 ただ有利な状況を作っていたのはダースの方だった。


 後もう少しでイオクを倒すことが出来ると思った時だった。


『ユリオン大佐。アクタール基地への攻撃は失敗だ。撤退するぞ。』


 ウラフ・ベリュミルからの通信に短く舌打ちする。


「了解です。」


 すぐさまスモークを焚くとイオクの乗るウルから離れた。


「やはり無理だったか。まぁバラノフ家も思ったよりも早くやられたみたいだし、当然と言えば当然か。」


 ダースは忌々し気にアクタール基地の方角を睨むと離れていった。

 彼にとって今回の敗北はあくまで他の部隊が弱かったから負けたそういう認識であった。



「司令、少尉の容態はどうなんですか?」


 戦闘を終えたイオクはアルベルトの病室に入るとユリアにそう尋ねた。


「あぁ、それならそこまで心配する必要はないらしい。二日程度あれば退院できるそうだ。」


 彼女はそう答えるものの、その顔はあまり晴れ晴れとしたものではなかった。


「ところで一つ聞きたいのですが、少尉は一体誰なんですか?」

「こいつは前の戦争でアルバート・デグレアと呼ばれいた、今帝国にいるアルバート・デグレアのクローンだ。本物が目覚めたから拾った。」

「どういう経緯でそうなったんですか?」

「本物が目覚めたことで不要になったこいつを消そうとバラノフが帝国のアークウィンと手を組んで消そうとしたらしい。」

「もしかしてこれってあまり触れちゃいけないやつだったりします?」


 イオクはユリアの言葉の節々からすこしやばそうな気配を察する。


「いや、今となってはそこまでヤバイものではない。まぁ今回のクーデターを起こすまではかなり気を付けてはいたが。実際このことを連邦で知っていたのは私とバーベラ大佐だけだったしな。」

「でもどうして少尉を消そうとしていた計画を知っていたのですか?」

「私の兄であるフィリップと仲が良かった帝国のオリバー・パトンという兵士がいてな。そいつから頼まれた。こいつを引き取ってほしいと。」


 そういえばアルベルトにその話をしたときに驚いていたなと思い出す。


「中々凄い言いようですね。」

「どうやらかなり不味い状態だったらしい。アルベルトがいた帝国にいたときの隊長もかなり過激な方向に舵を切ろうとしていてそれに巻き込まれる可能性もあったようだし。それに加えてアークウィンとバラノフはこいつを殺そうとしている。だから連邦に任せようと考えたみたいだな。」

「ですがどうしてそこまで少尉に肩入れしてたんでしょうか? 所詮他人ですよね?」

「そこまでは私も分からん。ただシュタイナー少尉の義理の父親に世話になったようだ。確か命の恩人だと言っていたな。だから助けると言っていたな。」


 それだけ覚悟を決めていたみたいだが生前アルベルトには全く気付かれていなかったがとユリアは思う。


「それで宇宙要塞モズの時に回収したんですか?」

「そうだ。ソフィアには凄い反対されたがな。なんで拾ってきた、こんなんかなり危険だと、親衛隊の隊長としては容認できないと。」

「そんなこと言っていたんですか? その割には結構少尉のことを可愛がっているように見えましたけど。」

「最初の彼女の反対の様子はダースなど比較にならないほど凄かったぞ。まぁ色々とあって最終的にはかなり可愛がっていたが。なにかあったら私の代わりにこいつを頼れというくらいには。」


 そういいながらユリアはアルベルトの頭をやさしくなでる。


「その割にはダーロヴィ大尉の部隊に配属しましたよね。」

「それはソフィアからの提案だ。彼女はソフィアと交流があったからな。ただパイロットとして問題があったからな。」

「問題ですか?」

「あぁ。ダーロヴィはパイロットとしての腕は悪くない。ただ兵士としての評価は低い。その理由はなにか分かるか?」

「いえ、あまりよく知らないので分からないです。」

「答えは割と単純でな。あいつはとにかくマニュアル操作をと言っていた。実際今では補助システムに一任している発進や巡航、着陸などを全部マニュアルでやっていたからな。なんなら戦闘中に補助システムを切っていたからな。ただその辺アルベルトはうまく使いこなして戦果を出していたからその辺を見直して欲しいというのがソフィアの想いだった。」


 まぁ実際にはソフィアやユリアの思惑から外れてあんな風に裏切って死んでしまったがとユリアは思う。


「せめてもう少し私が見ていたら良かったんだろうな。」


 そう呟く彼女の言葉はかなり後悔があるように見えた。


「そういえば少尉は今後親衛隊に戻るんですよね?」

「いや、親衛隊にはもう戻さない。昇進させて中隊を新設してもらいそのまま中隊長になって少佐まで昇進させる。」

「ということはあの機体の完成が近いということですか?」

「あぁ。天使シリーズと対をなす悪魔シリーズ。後もう少しで完成する。」

 

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