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第五十二話 因縁

「アルベルト! 返事をしろ!」


 ユリアを庇い破損したクロノスにユリアは何回も呼びかける。しかしアルベルトからの返事は無かった。そのためイルクオーレはコックピット付近が壊れたクロノスを右腕で支えていた。

 そうして周囲を見ていると戦況が少しずつ変わっていることに彼女は気づく。


『司令! ベリュミル少将の部隊がイルキア基地へ攻撃をしています!』

「ベリュミルが? あいつ、人の恩を仇で返した上に裏切ったということか……! 状況はどうなっている!?」


 アクタール基地司令部からの言葉にユリアは状況を確認する。


『現在バラノフ家の部隊とベリュミル家の部隊がアクタール基地へ攻撃をしています。敵味方識別信号についてはバラノフ家から離反したパイロットについては味方に組み込んでいます。』

「戦力差は?」

『敵との差はそこまで大きく無いかと。』

「分かった。それとダース・ユリオン、ベニカ・ダーロヴィ、テロルド・アーバン以外で部隊から離反したものはいるか?」

『今のところはタール中佐の中隊が離反しています。また基地内でも反乱が起きていますが、現在鎮圧用のドローンを投入しています。基地の鎮圧はすぐに終了します。』

「分かった。それなら問題は無いな。ダース・ユリオンは親衛隊でやる。後は先ほどまでと同様にチートス准将に任せる。」

『了解です。』


 ユリアはひとまず指示は出し切るとすぐにイオクに繋ぐ。


「リャーエフ中佐、悪いがダース・ユリオンを任せてもいいか? 今ここで逃がすには危険すぎる。」

『了解です。司令はシュタイナー少尉をよろしくです。』

「言われなくとも分かっている。」


 ユリアはイオクとの通信を切ると、すぐにイルクオーレを戦闘がなさそうなエリアの格納庫に着陸させる。その際にはクロノスに衝撃が極力伝わらないよう通常よりも神経を使い慎重に着陸させた。

 ただそのことに対して感銘もなく彼女はコックピットから降りイルクオーレの手に飛び乗ると、指の腹の部分にあるコントローラを使いクロノスのコックピットへ移動する。そしてすぐに外側からの強制解除ボタンでクロノスのハッチを開けて中の様子を確認する。


 コックピット内部は大きな損傷は確認できなかったが、モニタやフレームの破片が乱雑に飛び散っていた。そのまま中で力無く座っているアルベルトのヘルメットを外すと彼の首元に手を当てる。


「脈はまだあるな。」


 他の箇所も確認をすると四肢に欠損はないものの、腹部に刺さった破片からの出血が思ったよりも酷かった


「メディック!」


 医療班を呼ぶのと同時にクロノスのサバイバルキットから鋏を取り出すと座席のシートベルトを切る。 再び傷などを確認するが他には大きな外傷は確認できなかった。だが呼吸が徐々に弱くなっていくためあまり悠長なことはしていられないと判断する。

 医療班の位置を確認するために一度ユリアは外に出る。すると保安部隊に医療班が阻まれていた。面倒なことになったなと思いながらもユリアはイルクオーレに乗り移る。


「そこを開けろ。負傷者の治療が最優先だ。」

「ですが、それは敵の機体です!」

「私が許可を出している。早く通せ!」


 ユリアはそう言いながらイルクオーレの手を医療班の前に出す。

 少しでも早くアルベルトに治療を受けさせる、そう考えて彼女は先手先手を考える。


 そしてコックピットからユリアはイルクオーレの手に再び再び飛び移る。


「司令、降ろしてもらえますか?」

「あぁ、分かった。」


 すぐにコントロールパネルで掌を地上に降ろす。


「アルベルトの状態はどうだ?」

「助かるとは思います。」

「そうか。ならば絶対に殺すな。後は任せる。」


 ユリアはそれだけ言うとイルクオーレのコックピットハッチを閉じる。


「イルクオーレの武器を。それが終わり次第直ちに発進する。」


 それだけ言うとユリアはコックピットのモニター越しに運ばれているアルベルトを見守っていた。



「見つけた。」


 イオクはルーシーと離れ単独でダースの乗るウルへと突撃をする。当然彼の機体は逃げようとするが、そうはさせないとライフルでその妨害をする。その間に一気に距離を詰めると左腕にプラズマサーベルを引き抜き背面から切りかかる。それをダースのウルは振り返ると正面から切り結んだ。


「これは、隊長。いつから裏切っていたんですか?」


つい先ほどまで上官だったダース・ユリオンに対してイオクは嫌味たっぷりにそういう。


『裏切る? 裏切っていたのはユリア・ベッソノワの方だろ? 俺の出自を知っていながらアルバート・デグレアのクローンを受け入れたんだ!』

「なにを言ってるんですか? 司令が一体何を裏切ったというんですか? それにクローン?」


 ダースから出て来たたくさんの言葉にイオクは戸惑いを隠しきれなかった。


『そうか、お前は知らなかったな。だったら、良いだろう。教えてやろう。俺とあいつの関係について!』


 そういいながらも攻撃をしてくるダースの攻撃をイオクは軽くいなす。


『物事はお前が思っているよりもはるかに複雑であるということを!』

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