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第五十一話 再びの再会

『アイン! 六時の方角! 今度はレオラ中佐の部隊が裏切った!』


 アズリトからの声にアインは頭を抱えそうになる。彼はクーデターによって造反したユリアが有するアクタール基地攻略のために二百機のキャスターの部隊を連れて来ていた。しかしその半分近くが裏切っているこの状況は彼にとって不味いものだった。


「内部分裂でここまでやられるとは……。」


 基地の侵攻状況に対して部隊の損耗率がかなり良くなかった。また時間も予定よりかかっていた。


『どうする? 撤退する?』

「いや、もう少し待ちましょう。ベッソノワ家の本隊が戻ってくれば戦力も戻ります。」


 アズリトからの言葉にアインはそう答えるしかなかった。



「後どれくらいで終わりますか?」


 アルベルト・シュタイナーはイルキア基地から撤退をしていたベッソノワ家の有する給油機から補給を受けていた。彼は補給機のパイロットに燃料のチャージがどれくらいで終わるか確認をしていた。


『もう少し時間がかかります。』

「分かりました。」


 座席にもたれかかると敵味方識別信号のプログラムデータを最新のものに更新をする。


『裏切りものがいることには驚きはしないが、わざわざアルバート・デグレアを連れてくるとはな。』


 通信を切り忘れた給油機のパイロット達の雑談が聞こえてくる。


『あんな奴、恨みを持っている人間のが多いだろうに。』

『本当にな。第一裏切者などまた裏切るだろう。司令もよく連れて来たよな。』


 これ以上は聴くべきじゃないなとアルベルトは通信を切る。


「こういう悪口は本人のいないところでやってくれよ。補給は、現在60%か。後もう少しだな。」


 彼は再び座面の位置を調整すると補給完了の電子音が鳴るまで目を閉じた。 



「大分混戦になっているな。」


 ユリアはアクタール基地の状況を見てそう呟く。


『バラノフ家の方でも反乱が起こっているみたいですね。』

「そうだろうな。元々バラノフ家の部隊にはベッソノワ家の部隊も多い。それに一年とかいう短期間で一枚岩に出来るものでもないだろうし。」

『どうしますか?』

「とりあえず今基地を防衛している部隊と協力して一度部隊の立て直しを図る。」


 彼女は戦闘から離れた場所で指示を出すことに専念する。敵味方識別コードが役に立たない状況での指示は難しかったが、記憶していた元ベッソノワ家の人間を味方と判断し陣形を立てていく。幸いにも彼女が覚えていた兵士は味方をしてくれるのか、それは予想よりもうまくいっていた。

 そうして後もう少しで勝てるなと感じた時だった。

 ロックオンされたという警告が来るのと同時に遠距離からプラズマライフルによる攻撃が来る。


「あの機体、アインか。」


 アインの乗る専用機ロキが突っ込んでくる。それを彼女はイルクオーレのプラズマサーベルで受け止めた。


「お前たちがわざわざ来るとはな。」


 ユリアは目の前にいる白い機体、アイン・バラノフと彼の副官であり彼女の親友でもあるアズリト・アースに話しかける。このとき使っていた通信の周波数は三人が昔いたバラノフ親衛隊にいたときの周波数だった。


『いくら前線に出る機会が少ないとは言え、あなた相手に戦えるのは私達くらいでしょうし。』

「よく言う。」


 二機は何度かサーベルを重ね合わせる。


『それにしても驚きましたよ。あそこまで他人に興味が無かったあなたがわざわざ撤退部隊の掩護に行くとは。』

「……、なにが言いたい?」

『ベッソノワ元准将、あなたのもとにいるアルベルト・シュタイナー。彼はあいつですか?』


 アインの言葉は単刀直入の質問ではなく、答えの確認だった。


「だとしたら、どうする?」


 だからユリアはそう答えた。


『以前からこの計画を練っていたと?』


 その言葉にユリアは思わず笑ってしまう。


「だとしたら何か問題があるとでも? それにあいつについては帝国が必要ないと処分しようとしていたものだ。そしてその力が私には必要だった。だったらこの選択は必然だと思うが?」

『結局、あなたも彼を利用することしか考えていないのですね。』

「純粋にあいつを殺したがっているお前には言われたくないな。」


 ユリアはアインの言葉を冷笑で返した。それにアインは一瞬怒りを覚えるがすぐに深呼吸した。あくまでこれは彼女がこちらの冷静さを欠かせるために言ったことだと自分に言い聞かせる。今、この場で有利なのは自分だと。そう言い聞かせると戦闘態勢をとる。


『邪魔をするというのなら今ここであなたを倒させてもらう。』

「いいだろう。ならば私がここでお前を討つ。」


 ユリアの言葉に合わせて三機は戦闘を始めた。



「ユリアめ。アインと戦ってなんかあったらどうするつもりだ。」


 補給を終えたアルベルトは全速力で機体をアクタール基地に向けていた。

 モニターにアインとユリアの機体が戦っているのが表示されていた。戦闘は前線に出る機会が減った分ユリアが劣勢に立っていた。

 一応イオクとルーシーの機体は援護しようという姿勢を見せていたが、親衛隊隊長であるダース・ユリオンだけはその兆候が全く無かった。


 彼はクロノスのライフルを精密射撃モードにするとユリアとアインの機体の間にライフルを撃つ。

 するとアインの乗るロキは一瞬こちらを向いた後、こちらに対して全速力で突っ込んできた。


「アイン!」


 クロノスは何発かライフルを放つがロキには当たらなかった。

 ライフルで迎撃できる距離でなくなったので、クロノスは回避行動をとると同時にサーベルを引き抜く。

 ロキもサーベルを引き抜くと即座にクロノスに切りかかる。

 二機は数度剣を交える。

 アルベルトはこの場を撤退するとばかりに距離をとろうとする。

 しかしそうはさせないというアインの信念に気圧されて二機が衝突した。


 そのまま体勢を崩した二機はアクタール地面に衝突する。


「アイン! アイン・ダール!」

『アルバート! アルバート・デグレア!』


 二人はかつての相手の名前を忌々し気に叫ぶ。二人の中の戦争はずっと続いていた。


『お前だけは俺が殺す。あのときにお前を殺していれば!』

「戦争に巻き込んだ癖によく言う。お前があの時イルキア基地から機体を奪わなければ! 俺の友達で無かったならこんなことには! こんな!」


 アルベルトがアインに対して仕掛ける。

 機体性能だけでいうなら、アイン専用にカスタマイズされているロキのが上だった。しかし、今まで相手よりスペックの低い機体で戦い続けていたアルベルトにとってはアインの動きなど取るに足りないものだった。


 決着は昔二人が戦っていたように一瞬で蹴りがついた。しかしその勝者は異なっていた。


 一瞬でロキがアルベルトの駆るクロノスによってボロボロにされていた。


「これで終わりだ! アイン!」

『ごめん、少尉! そっちに一機行った!』


 止めを刺そうとした時にイオクからの通信が来る。アルベルトはその声に一瞬だけ機体の動きを止めた。

 その瞬間、アズリトの駆るウルがアインのロキを回収していた。


「殺せなかったか。」


 とりあえず、ユリアの護衛でもするかと彼女の機体の傍に寄った。

 そのときアルベルトは周辺の屈折率が変わっていることに気づく。すぐさま彼女の機体を押し出す。同時に頭部に搭載されているバルカンをあたり一面にばら撒く。

 

「そこ!」


 そしてバルカンの弾が光学迷彩をまとった機体に跳弾した場所を見るとプラズマサーベルで貫く。

 プラズマが周囲を焼く音と共に現れたのは彼が今所属している部隊の隊長であるベニカ・ダーロヴィの乗るウルだった。

 サーベルは胴体を深々と刺していた。


「裏切りか? だとすれば……。」


 誤射という考えもなくすぐさま裏切りだと判断したのは、イルキア基地で同じ部隊の隊員であるベニカ・ダーロヴィとテロルド・アーバンがウラフ・ベリュミルと反乱の話をしていたのを聞いていたからである。


「だとすると、テロルド・アーバンも!」


 すぐにもう一人の同僚を彼は探すため周囲を確認する。

 するとダース・ユリオンのウルが体勢を崩したユリアのイルクオーレに銃を向けていた。

 すぐさま彼は右腕に携えていたライフルでダースのウルに攻撃をする。


 その一瞬の隙に隠れていたテロルドがアルベルトのクロノスの胴体にプラズマサーベルが突き出す。

 幸いにもその部分は安全対策のための部分でなにかが爆発することはなかった。だが、衝撃はかなりのものでアルベルトは強く頭をコックピットに打ち、気を失いかける。しかしなんとか強い意思で右腕のライフルでウルのコックピットを撃つ。そのままダースの乗るウルにクロノスはライフルを何発か撃ち、直撃をさせる。


「ダース・ユリオンも裏切るか……。」


 先ほどの攻撃が燃料タンクに当たったためか、クロノスのライフルのエネルギー残量が急速に減っていく。ただこの時にはもうユリアの乗るイルクオーレが体勢を立て直し、ダースの乗るウルに対して、機体の全長ほどはある長いライフルで攻撃をしていた。

 そのままダースの乗るウルは奇襲に失敗したと悟ったのか、スモークグレネードを展開し、撤退を始めていた。


 極度の緊張状態がほどけると急に体がだるくなってきた。


『アルベルト、機体の方は大丈夫か?』


 徐々に強くなる眠気に抗えず、ユリアからの通信にも答えることは出来なかった。


『アルベルト・シュタイナー少尉、返答を! アルベルト!』


 ユリアからの声を聞きながらアルベルトはそっと目を閉じた。

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