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第四十三話 引っかかり

 アルバートは追撃の手を緩めずに一方的に敵部隊への攻撃をしていた。既に周囲にはデュラハンの部隊は存在せず、残っているのは敵艦隊のみとなっていた。


「後は!」


 対空砲火をしている駆逐艦を、右腕のライフルで撃沈していく。

 そのとき彼のアレースの右脚が一本の細い筋によって切断された。


「迎撃兵器か。」


 しかしすぐさまその攻撃に対応をする。通常であれば躱せないその攻撃をアルバートは躱していた。


「岬に設置しているか。」


 大きさ三十センチ程度の砲台を見つける。恐らく彼の機体が到着するまでカモフラージュをしていたためか、周囲には飛び散った草が見える。

 それを右腕に搭載していたライフルで、砲台からの攻撃を回避しながら破壊していく。


 そうこうしているうちに残っている敵空母が直掩機を発進させる準備をしていた。アルバートはカタパルトに乗せられている機体に向かってライフルを撃つ。


「カタパルトは破壊できたな。」


 甲板上で炎上しているデュラハンを確認すると機体の高度を一気に下げる。左腕でエネルギーサーベルを引き抜くと一気に空母の艦橋を破壊する。そして出力を一機に上げるとそのまま船体を叩き斬る。


「これで終わりか。」


 アルバートがそう下の光景を確認するときになってエミリアのアレースが到着した。



 アルバートのアレースを連れイレスコ基地に戻ったエミリアは格納庫で彼に対し不機嫌そうな顔で詰め寄っていた。


「どうしてあのとき指示に従わなかったの?」


 その声音にはかなりの苛立ちが混じっていた。


「戦争になる前に叩き潰したかったからです。」


 一方でアルバートはエミリアの目を見てはっきりとそう答えた。

 その瞳をエミリアはよく知っていた。

 覚悟を決めた昔の彼の目と同じだと。この状態の彼になにを言っても意味が無いということを一番理解していたのはエミリアだった。

 そしてこの状態に追い込んだ一因は自分の言葉にもあるのかもしれないという考えが頭をよぎる。


 だからどう話を切り出そうか考えている時だった。


「アークウィン大佐、大変だ!」


 ダン・ヘンリーが話をしている二人の間に入り込む。


「どうしたのですか?」

「イルキア基地が陥落した。」

「え?」

「しかも最悪なことに一機のキャスターによってほぼ壊滅したみたいだ。」

「誰がやったのですか?」

「アルベルト・シュタイナーだ。」


 そのときに出て来た名前に彼女は驚くのと同時にやっぱりかという思いも混在していた。



「いやぁ、それにしても凄いねぇ、少尉。」

「いえ、大したことはありません。」


 陥落したイルキア基地の飛行場でイオクに話かけられたアルベルトはそう答える。


「絶対防御のエネルギーフィールドをブースターの爆発で強引に穴をあけて入るなんて普通考えても出来ないよ?」

「確かにもう二度とやりたくは無いですね。机上では可能だと分かっていても……。」


 史上最も高速なキャスターでの戦闘を行った彼は疲れ果てた顔で遠い目をして座る。


「あれだけ機体の動きが早いとロックオンとかも厳しいんじゃない?」


 しかしそんな彼に対してイオクは相当戦闘に興味があるのか、アルベルトに質問攻めをする。


「はい。マニュアルで実施しました。本当はあまりやりたくなかったんですが、やらざるを得ないので。」

「やっぱりねー。」


 イオクは座り込んだアルベルトの横に座る。


「まぁ今日は基地に戻ってゆっくりと休むといいよ。」


 イオクがそうねぎらうように言う。


「あ、少尉。丁度いいところにいた。」


 そのとき一緒に出撃していたルーシーが彼らの元に寄ってくる。


「司令からの通達です。ダーロヴィ小隊はしばらくイルキア基地で待機しているようにとのことです。」


 その言葉に彼は心底嫌そうな顔をした。



 エミリアは入手したイルキア基地戦闘時のデータを確認していた。


『敵キャスターが単機でこちらに突撃してきます!』


 司令室内部で声が反響している。


『迎撃しろ。』

『無理です! 敵の速度がマッハ10を超えていて捉えきれません!』


 司令部内は緊迫に満ちていた。


『ドローン用の迎撃兵器で構わん。カーテンも展開しろ。』


 オズワルドの声が響く同時に神秘的な神々しいオーロラのような虹色の光が窓から差し込むことからイルキア基地で鉄壁を誇るエネルギーフィールドが展開される。


 エネルギーとは言っているものの実際には大気中の物質をプラズマ化することで高熱にし、実体弾は溶かしてしまい、エネルギーライフルも干渉によって威力が落ちてしまう。そして仮に爆風で穴を作りミサイルを撃ち込んだところで迎撃兵器によって撃ち落とされるのが当然の帰結であった。

 また一部に穴が空いたところで、そこにはすぐにドローンが展開し

 一方でエネルギーフィールドの防御壁としての展開時間も三時間ほどで長いものでは無かった。


『敵キャスター、カーテンを突破! 同時に第三発電施設を破壊!』

『なんだと!?』


 やはり敵に弱点がばれていたかとエミリアは思う。


『第五発電所が破壊!  カーテンの維持できません!』


それと同時に窓から差し込んでいた神々しい虹色の輝きは徐々に無色透明になっていく。


『まさか、弱点を知って!』


 オズワルドはその報告に普段は出さない声を出す。


『第一、第二防衛……!』


 短時間であちこちに被害が出ているのか、大きな爆発音が鳴りやまない。同時に大きな振動もあるせいかカメラの映像がブレブレになっていた。


『上位階級に内通者が……。まさか、ブライム・エイブラウが生きて……。』


 その声が聞こえた瞬間最高出力に設定されたウルの薄い赤色のエネルギーサーベルが指令室に突き刺さり映像は終わった。


「シュタイナー少尉、あなたは一体……。」


 エミリアにはアルベルト・シュタイナーという人間がよく分からなくなっていた。

 しかしその戦い方に一人の人物が思い浮かぶ。


「いや、いくら正確が似ているからって。だけど、記憶がないアルバートのことを考えたら。」


 ある一つの推測にたどり着く。


「だけどあの短時間でアルからの記憶を受け継げるわけでもないし。それにいくら似ていると言っても彼の場合は……。」


 だとしたら違うかと思いながらもエミリアは心に引っかかるものがあった。

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