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第四十一話 不可能な作戦

「これで全員揃ったな。」


 ユリアに呼ばれブリーフィングルームに到着したアルベルトは下座の席に座る。周囲を見るといたのは親衛隊の隊員であるダース・ユリオン、イオク・リャーエフに加えアルベルトの代わりに配属となったルーシー・メーチェがいた。それに加え今彼が所属している小隊の隊長であるベニカ・ダーロヴィと隊員であるテロルド・アーバンがいた。


「知っての通り、我々もアガニコフ候のクーデターに参加することになった。それにあたり、これから帝国軍アークウィン家の基地であるイルキア基地への攻撃を行う。」


 それにアルベルト以外の全員が驚いていた。


「その中でも貴官らにはそれぞれ重要な任務を担当してもらう。まず親衛隊の面々には恐らく出てくるであろう敵のデザイナーベイビーの部隊の相手をしてもらう。」


 その言葉に親衛隊の面々は頷く。


「そしてダーロヴィ小隊であるが、こちらには敵基地への先鋒を任せる。」

「鉄壁の防御力を誇っているイルキア基地への攻撃に対して僅か三人ですか?」


 ダーロヴィが異論を唱える。


「いや、実際には一人で突破をしてもらった後基地へ攻撃をしてもらう。鉄壁の防御力とは言うが、あらゆるものを迎撃するエネルギーフィールドさえ無力化してしまえば防御能力は低いしな。」

「だとしても誰があのフィールドを突破するのですか?」

「出来るな、シュタイナー少尉。当然追加用のブースターは準備するが。」

「はい。」


 アルベルトは迷いもなくそう答えた。


「司令! いくらなんでもそれは危険すぎます!」


 しかしイオクが反対をする。それに驚いたのはユリアとアルベルトだった。


「少佐、これは決定事項だ。それにこの作戦に志願したのはシュタイナー少尉だ。」


 彼女にとって今の答えはただ淡々と事実を述べたのみだった。しかしそれがイオクに与えた印象は無慈悲な印象だった。


「大丈夫ですよ、少佐。それなりに考えがあってやろうとしているので。」

「だけど、少尉。この作戦は君が思っているものよりもはるかに難しいよ。少尉がそれを判断出来ないのは実戦経験が足りないからしょうがないものだとしても司令がそれを反映しないのは話が違う。」

「難易度が高いことは重々承知してはいます。ですがそれに対する対策も用意してあるので大丈夫ですよ。」


 そのアルベルトの答えにイオクは渋々と椅子に座った。


「それでは作戦に当たるため準備をしておけ。決行前に再び指示を出す。」


 ユリアの言葉を最後にブリーフィングが終了する。


「シュタイナー少尉。」


 みんなと同じようにブリーフィングルームを退出しようとしたアルベルトはユリアに呼び止められた。


「司令。」


 ソフィアが死んで以来彼女と話すときにはどうしても緊張感が走ってしまう。しかしそんなことを表情にも出さずいつも通り無表情で彼女に接しようとする。

 ユリアはそれを微塵も感じることもなく彼の近くまで歩くとそっと両手で彼の頬を挟む。


「気をつけなさい。」


 その声が珍しく心配したもので少し驚いてしまう。


「大丈夫です。所詮は旧式の兵器ですから大したことは無いですよ。」


 その言葉に安心したのか彼女は右手の親指で彼の顎をそっとなぞると手を離した。



「お久しぶりです、ヘンリー少将。」


 帝国軍の辺境伯の一つであるヘンリー家、その党首であるダン・ヘンリーにエミリアは挨拶をする。彼はイルキア基地にほど近いイレスコ基地の司令官であるため親交は昔からあった。


「遠路はるばるお疲れ様、大佐。本当ならゆっくり休んでもらいたいのだが……。」


 ダンは青みがかかった髪をいじりながらそうばつが悪そうにいう。


「仕方ありません。状況が状況ですから。それで敵はどうしているんですか?」


 ダン・ヘンリーはエミリアと歳が二つしか変わらないため緊張感がないなとエミリアは思いながらも状況が状況だけにすぐに現状の確認に移る。


「そのことについてだが現在ウラフ・ベリュミル率いる連邦軍の第五艦隊と戦うことになると睨んでいる。」

「第五艦隊というとあのマニュアル大好き集団でしたっけ?」


 エミリアの言葉にダンもうなづく。


「あぁ。確かオートパイロットを切った状態で着陸を強制したりするのはまだいいが、作戦中にもロックせずに攻撃とか普通にしていたな。」


 以前連合国を攻撃したときに一緒に戦ったことがある彼は辟易とした声で言う。


「それ被害出たりしませんでした?」

「出ないわけが無いだろ……。」


 そう呆れたような声を出す。


「それで作戦はどうされるのですか?」


 この空気を切り替えるためにエミリアは話の主題を変える。


「予想ではあるが、敵のデュラハンは千機前後だ。なので今回は陸からの砲撃で敵の数を減らしてから主力部隊同士をぶつける。確かに敵の参謀は優秀とはいえ、前の大戦ならともかく今の技術力の差ならば大した驚異にもならないだろうよ。」

「なるほど。」


 エミリアはそれに納得をする。


「作戦についてはこれからブリーフィングを行うからその時に質問があったら聞いてもらいたい。」

「分かりました。」


要件はそれで終わりだろうと思ったエミリアはその場から去ろうとする。


「ところで君の父上のところは大丈夫なのかね?」

「どういうことですか?」


 それに疑問を呈する。特にオズワルドからは何も聞いていないので口からでた言葉はそれだった。


「先程ユリア・ベッソノワ率いる連邦の第七艦隊が攻め込もうとしていると聞いたが。」


 ヘンリーは少しばかり心配そうな声を出す。


「父なら大丈夫じゃないですか? こうして援軍を送ったりしているわけですし。」


 どうせあの狸おやじのことだからなにかしら考えているのだろうとは思う。


「まぁそれもそうなんだがな。こうして君たち精鋭部隊を送ってくるのをみると。」

「……。」


 それに対してエミリアは何も答えることはしなかった。それはエミリアと父の仲がわるいということを知るものでなければ、彼女が父を心配しているように見えたであろう。しかし彼女の本心は自分たちよりも信頼できる精鋭部隊がいるということが分かっていたから何も言えなかったのだった。


「では基地の防衛頼むよ。」


 その言葉にエミリアとアルバートは敬礼をすると部屋から出た。

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