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第四十話 クーデター勃発

「やっぱりこうなったか。」


 エミリアは自分の部屋のモニターで連邦で起きたクーデターの映像を見ていた。


『我々魔術師は世界のためを思いこれまで魔術師の叡知によってこれまでいくつもの不可能と呼ばれた問題を解決するために尽力し、解決してきた。』


 四十代半ばとは思えないくらいに顔のあちこちにしわを刻ませた男である連邦七家門アガニコフ家当主、アリード・アガニコフはそう抑揚をつけた話かたをする。


『しかし非魔術師たちは我々の努力を知ろうともしなかった! それどころか魔術師は我々の知らないところでいい思いをしている、そう思い続け敵意のみを向けていることが先の同時多発テロによって白日の下にさらされた! 』


 ここまでは筋は通っていると思う。


『その結果我々魔術師たちは住む場所を奪われた。いわれなき誹謗中傷を受けようとも報復活動はしなかった。それはなぜか!? そんなことをしても意味が無いからと分かっていたからだ。にも関わらず、いやむしろ報復をしなかったからこそ非魔術師たちは決して少なくない、罪すらない、そしてこれからの時代を担う魔術師たちを虐殺した! これが一時の過ちであるならば我々はまだ非魔術師たちと共存できたのであろう。しかし更にテロ攻撃を仕掛けて来た!』


 エミリアは演説方法がうまいなと思いながらアガニコフの真意を探る。


『これに対して政府が対策を打ったならばまだ我々は我慢できたであろう! しかし実態は異なる。非魔術師たちは魔術師なら世界のために尽くすのは当たり前、むしろ尽くさない魔術師たちは何の役にも立たないと! そして先日あったデモを行った魔術師たちがいた。しかし、国は、いや政府側の部隊や国防軍は彼らを全て殺した! 抵抗すらないままに虐殺したのだ!  故に我々は今こそ立ち上がらねばならない!  これは我々魔術師の人権を無視したものである。ゆえに我々は今こそ立ち上がるべきだと判断した! 我々は連邦、帝国という垣根を超え、今こそ魔術師のための国を作ることを今ここに宣言する!』


 アリードの映像はそこで途切れる。その後にクーデターに参加している貴族の名前が羅列される。そこには連邦のみだけでなく帝国の貴族もいた。


「馬鹿なことを。」


 アルバートはその演説を一通り聞いた後そう吐き捨てるように言った。


「そうね。力での革命なんて意味なんてないというのに。」


 エミリアもまたアガニコフの言葉に否定的だった。これでは非魔術師との溝が更に深くなって共栄は不可能だと。


「たとえその革命が成功したとしても戦争は無くならない。魔術師たちが気に入らないことがあれば力で解決できると思い込んでしまえば周辺諸外国に力での圧力を始める。そうなればまた大きな戦争が始まるかもしれないというのに……。」

「ですがこんなことにまさか帝国側の七家門からも離反するとは……。やはりアニクウェス候の力も落ちているということですかね。」


 そう吐き捨てるようにアルバートは言う。そこには呆れが入っているのをエミリアは見逃さなかった。


「辞めなさい、少佐。」

「すみません。」


 そう謝ると大人しくなる。なんとなくエミリアの機嫌がよくないことを察したかのようにそれ以上何かを口にすることはしなかった。


 そのとき部屋に甲高い電子音が鳴り響く。彼女はすぐに顔を引き締めると自分のデスクに向かい応答ボタンを押す。画面に現れたのはエミリアの父親である、オズワルド・アークウィンだった。


『大佐。』

「作戦ですか。」

「流石にもうニュースは見ていたか。そうだ。流石に我々としても動かないわけにはいかないのでな。これより反乱軍どもの鎮圧を始める。とは言っても今回は敵の戦力も戦力だ。複数個所を同時に叩くほどの余力もない。ゆえに敵は最初に重要なところであまり戦力が無いところを叩く。」


 オズワルドの説明を聞きながらもエミリアはその本題が何か気になった。だが、先程の言葉からするとイルキア基地を戦力が弱い箇所にしたいのだろうという気もした。


「つまり?」


 それが熟考に熟考を重ねたエミリアの答えだった。


『そうだ。貴官らにはダン・ヘンリーが所持するイレスコ基地の援護に行ってもらう。』

「分かりました。ですが、この基地は大丈夫なのですか?」

「イルキア基地攻略が難しいことは敵もよく知っているはずだ。反乱を起こして攻撃されることは無いだろう。」


 その言葉にエミリアは一瞬言い掛けた言葉を飲み込む。


「分かりました。すぐにイレスコ基地に向かいます。」


 彼女はオズワルドからの通信を切ると立ち上がる。


「少佐。すぐにイレスコ基地に向かうから準備をしなさい。」

「了解です。」


 アルバートが部屋から出ていくのを見てエミリアは一度だけため息を吐く。


「こんな一時の感情で戦争を始めていたら戦争が終わることなんて絶対無いというのに。前の戦争の意味だって。」


 エミリアは一体自分たちは何のために戦っていたのだろうかと、そう思いながら移動をする準備を始めた。

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