第三十六話 残る火種
「結局ジャミル・ルルーシュは捕まえられなかったか。」
「はい。ただ一応遺体は見つかったみたいなので、連邦・帝国両政府としてはこれで勝利したとしているみたいです。」
ユリア・ベッソノワは連邦の辺境伯の一人であるエルマ・アスタル大将と話をしていた。
五十前にもなる彼は彼女が小さいころから面識があった。
「オールイコールと合流したのであれば今後テロ対策とかしないといけないな。」
エルマ・アスタルの言葉にユリアは頷く。
「そうですね。ただそれを政府がさせてくれるかは分かりませんが。」
「それは確かにそうだな。ただもしそうなったとしたら。」
「そうですね。そのときは……。」
「あぁ。アガニコフがその準備をしているそうだ。」
「アガニコフ候が、ですか?」
ユリアはアスタルの言葉に驚いた顔をする。
「とてもそんなことをしそうな人には見えませんが。」
「生真面目なあいつだからこそだろうな。それだけ今の状況は魔術師にとって良くないということだ。」
そう告げるアスタルは変革の時は近いということを予感していた。
*
「少尉? そろそろ行かない?」
「え? あぁすみません。中に入ります。」
ティルトローター輸送機のドアの前に立っていたアルベルト・シュタイナーは同僚のイオクの声に顔を上げると機内に入る。ベッソノワ家が所有しているプライベート機の一機なので内装は軍用の物とは異なり豪華なものであった。
「扉の前で立ち止まってどうしたの?」
「いえ、基地に戻るのが嫌だったので。」
イオクは彼の言葉に大きな声で笑う。
「今の言葉司令が聞いたら凄い怒りそう。下手すれば殺されるかもね~。」
「やめてください。」
彼はそういうとイオクから離れた席に座る。
「隣に座ればいいのに~。」
美少女の容姿と声を持った彼の誘いは普通であれば乗りたくなるようなものであったが、アルベルトはそれを無視して窓の外を見た。
そこを走っていたのはアークウィン家のリムジンであった。
*
「あれはベッソノワ家の。」
エミリアは小規模な空港から飛び上がるティルトロータ機を見つける。
恐らくその中にはアルベルトが乗っているのだとなんとなく推察した。
中々面白い人だったなと色々なことを思い出す。
初めて会った時は飲もうとしてた水を頭にかぶって空にしてた。あの光景を思い出すと少し笑ってしまう。
「どうしたのですか、大佐?」
そんな彼女の声に気づいてアルバートがエミリアに話しかける。
「いや、別に?」
エミリアはそういうとローターを傾けた機体を見送った。
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第一章はこちらで終了となります。明日から第二章を投稿します。




