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第三十二話 襲撃(1)

 エミリアと一緒に古城の内部を散策していたアルベルトは爆発音がするなり、すぐに彼女を庇うように覆いかぶさる。


「大丈夫ですか?」


 彼はすぐに立ち上がるとエミリアに怪我がないか確認するように見ていた。


「えぇ。大丈夫だけど。」


 あまりにじっと見られていたため、エミリアは少しだけ引いたように言う。


「なら、いいです。」


 彼はそれだけ聞くとすぐに拳銃を引き抜いた。

 エミリアも彼の邪魔にならないように立ち上がろうとするが、慣れないハイヒールのせいで中々立てなかった。

 アルベルトは彼女に銃を持っていない左手を出すとそのまま彼女を引き上げバランスよく立てるまで支える。


「ありがとう。」


 エミリアはそう言いながらも今の爆発はなんだったのだろうと思う。だがその考えもすぐに打ち消されてしまう。


「いたぞ! 魔術師だ!」


 その低い声にアルベルトはエミリアを引っ張って廊下を走る。


「あれはアークウィン家の! やつを逃がすな!」


 その声にエミリアは一瞬方をビクッとさせるが、アルベルトはそんなことなど気にはしないと走る。

 このとき彼の走る速さがエミリアがある程度本気で走ったときより遅いのは彼の優しさだと彼女は思う。実際はアルベルトが本気で走った速さであったのだが。


「あそこの廊下の角に。」


 アルベルトはそういうとエミリアを先行させる。そして振り返ると牽制のために何発か撃つ。そのままエミリアが廊下の壁に隠れたのを確認すると彼もすぐにその場所に向かった。


「絶対にあいつを、エミリア・アークウィンを殺せ! アルバート・デグレアも絶対に逃がすな。」


 そう叫んでいた人間はその次の瞬間肉塊に変わっていた。

 アルベルトは正確に狙い撃ったことへの感想などなく、廊下の角に隠れ即座に弾倉を交換する。

 そのまま走ってきている二人に慎重に頭を狙い撃つ。


 一発は外れたが、残りの二発は二人の脳天に直撃した。


「クリア。」


 アルベルトは周囲に警戒をしながら廊下の角から出る。それに合わせてエミリアも後ろから出てくる。


 あちこちから銃撃の音が聞こえてくる中アルベルトはどの方向に味方がいるのか把握するためその音を聞き分けようとする。


「帝国の銃器を使っているのはあっちの方向、連邦の銃器を使っているのはあっち。この音は連合国のモンキーモデルか。それがあっちの方から聞こえる。」


 エミリアの言葉に頷くとアルベルトはそっと前に進む。慎重に、ゆっくりと前に進むと目の前を何人か黒い影が通る。

 そのためエミリアを柱に隠そうとするが、普段と違う重心のせいで転んでしまう。

 そしてその彼女を狙って銃を向ける敵にアルベルトは間に合わないと判断すると彼女を護るようにその前に体を滑らせ、銃を撃つ。

 しかしその間に敵は二発撃っていた。


 一発は二人にあたらなかったが、二発目は彼の右腕を擦っただけで、エミリアに当たることは無かった。

 一方でアルベルトが撃った弾は正確にテロリストの脳天を打ち抜いていた。


「軍服だって高いのに。」


 アルベルトはちぎれてしまった軍服を見てぼやきながら立ち上がる。そのままテロリストの頭を蹴って生きていないか確認をする。そしてエミリアの様子からこれ以上走り回るのは得策ではないかと周囲に隠れられそうな場所がないかと探す。


「銃撃が止んだ……?」


 そう呟いたときだった。死体確認をしていた足が握られるとふわっと無重力のような感覚が体を駆け巡った瞬間アルベルトは地面に叩きつけられていた。

 声にならない声をあげながらもアルベルトは自分の状況を確認する。


 頭を強く打ったせいで目がチカチカするが、それでも目の前の状況だけは理解していた。


「サイボーグか……。」


 アルベルトは拳銃を握り締め立ち上がる。そしてターゲットをエミリアに変えた敵に対して臆することなく歩を進めた。



「無事だったか、ベッソノワ侯。」


 アルバートにエスコートされて会場へ戻ったユリアに近くにいた連邦の辺境伯の一人であり、バラノフと対をなすエルマ・アスタルが話しかける。


「アスタル侯。はい。彼にエスコートをしてもらいながら戻りました。」

「デグレア少佐か。貴官の噂はよく聞いている。それでアークウィン大佐は?」

「それが丁度今探しているところで。なにかご存じだったりしませんか?」


 ユリアが代わりに答える。


「いや、今は分からない。こっちも丁度さっき襲撃があったからな。もう会場内の鎮圧は終わったが。」


 そう三人が話していると周囲の安否確認を行っていたエフゲニー・バラノフが尋ねる。


「腕は衰えていないようだな。バラノフ候。」

「当然です。流石にご老体に無理はさせられんでしょう。」

「そりゃそうだろうな。」

「ベッソノワ候も無事か。」

「はい、お陰様で。」


 そう、もっと上手く対応してくれてもいいだろうと彼女は思うが口には出さなかった。


「とりあえずこの場は大丈夫そうか。」

「バラノフ大将。」


 バラノフが周囲を確認しているとアークウィン家当主のオズワルド・アークウィンが近づいてきた。


「どうしましたか、アークウィン大将。」

「娘を知りませんか? 先ほどから見当たらなくて。」

「ご息女ですか?」


 バラノフのその言葉でユリアもさっきまでのことを思い出す。


「私が確認に向かいます。」


 アルバートはそう告げると探しにいこうとする。


「待ちなさい、デグレア少佐。」

「ですが!」

「別に止める気は無いです。リャーエフ少佐。」


 ユリアは近くにいたイオクを呼んだ。


「デグレア少佐と一緒にアークウィン大佐を探せ。」

「了解です。」

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