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第二十七話 因縁と……

『貴様があのとき、邪魔をしなければ、あの二国の閣僚どもを排除できたというのに!』


 アルベルト・シュタイナーは目の前に現れた連合国の新型のキャスター、イフリートのパイロットの声をどこかで聞いたことがあると考える。


『そうすればバハーは! ラウダも死ぬことはなったのに!』

「あの時の強奪部隊か。」


 イルキア基地でデュラハンに乗って戦っていた時のことを思い出す。


『前の戦争で帝国と連邦が魔術師の有用性を示さなければこんなことにはならなかった! こんな魔術師を、同じ人を道具として扱うようなことには!』

「そんなのはどのみち他の誰かが証明する。」

『しかし私たちにはそうもいかないのだ! 貴様ら大国が魔術師の能力を認めれば認めるほど、小国は魔術師を酷使するしかなくなる! だったら!』


そう言って攻撃を仕掛ける機体にアルベルトは落ち着いた様子で対処する。


『だからこそ貴様らはあの巨大兵器にやられてもらわなければ!』


 そうして魔術師が有用ではないということを示せば自分たちももう戦わなくて済むと。


「それでも人々は魔術師に対して重荷を背負わせるだけだ。」


アルベルトは今まで見てきたことを元にそう答える。


「費用対効果が高い兵器としてな。」

『貴様らが強すぎたからああいう要塞が作られる!』

「そうだ。これ以上あんなものを作る口実を与えるわけにはいかない。あんなものをこれ以上作れば、その破壊のために魔術師が死んでいくだけだ。」


二機の機体性能の差は歴然としたものであったが、その差を感じさせないほどのパイロットの能力の差があった。


『どちらがテロリストだ! 自分たちの発展のためだけに他の国を支配して、発展する機会を奪ったくせに!』

「しかし、こちらの発展が無ければそっちの国の発展も無かった。」


アドハムが感情的である一方でアルベルトはただ淡々と事実のみを返す。


『それは強者の理論だ!』

「だったら、今ここにある大きな兵器を持っているお前たちは強者ではないと? 周辺国を支配し、帝国や連邦に負けない武力を持とうとしているのは違うと?」

『そうだ。だから俺はこの国を変えるために!』

「変える? どうやって? ここまで民間人を巻き込み続けている国が成長できると?」

『そんなのは貴様らを倒して上に上がってからやらせてもらう!』


 アルベルトは一度だけため息を吐くと通信を切る。

 そのまま目の前の機体の攻撃を受け流しながら少しずつ距離を取る。

 それを逃がさまいと接近する。


「しつこい!」


 ただまぁ普通は逃がさないかと思うと、機体に搭載してあった燃料タンクを投棄した。

 イフリートはわざわざ燃料タンクに突っ込む必要はないと考えたのか、一度だけ動きを止める。

 その僅かな時間でアルベルトはウルに搭載されているチャフを投げる。投げ出されたチャフは一瞬で爆発すると周囲に銀片を撒く。同時に搭載されていたスモークグレネードも投げる。

 銀色の破片の周囲を覆い囲むように広がる雨雲よりも黒い雲によって、ウルとイフリートはお互いの姿をレーダで捉えるどころか、光学カメラによって捉えることすら不可能となっていた。

 しかしそんな中でアルベルトはただ冷静にライフルを黒い暗雲に定めると発砲をした。

 その銃弾は先ほどアルベルトが投棄した燃料タンクに直撃し、そしてそこから周囲に大きな爆炎が連鎖して大きな火球となる。そしてその中心にいたイフリートもまた無事ではなく、装甲があちこち溶けていた。


「これで終わりだ!」


 アルベルトは躊躇うことなく攻撃を仕掛ける。だがその瞬間動きを止めていたイフリートが再び動き出す。


『捕まえた! 貴様だけは!』


 ウルの両腕を掴み接触回線でアドハムの言葉が響く。


「もう見飽きたよ! それは!」


 しかしアルベルトはウルのつま先に装備されている隠しプラズマサーベルでイフリートの左腕の関節を切り落とす。


『ク、ソ!』


 そして剥がれた装甲にプラズマライフルを突きつけると、アルベルトは最大出力で照射する。それによって内部の回路が熱によって暴走する。そして各部から小規模な爆発が起き、燃料タンクに誘爆し大きな火玉となる。それによってウルの装甲が焼けただれてしまう。しかしそんなことを気にしている暇はないとレーダで戦況を把握する。


「今度は連邦側に攻撃を集中してきたか。」


 ソフィアたちの陣形が崩れているのを確認する。そのため戦場を移動していたのだが、そのときに三機のギデオンに囲まれていた。


直進的に突っ込んでくるギデオンの部隊をギリギリのタイミングでいなす。


「こんなやつを相手にしている場合では……!」


舌打ちをしながらどう部隊と合流するか考える。このまま敵を引き連れていくのも一つの手としてはある。しかしその場合連携が取れるようなら寧ろ不利になる可能性が高くなる。ならばここで倒したいがそれには少しばかり時間がかかるのもまた事実だった。


『少尉。』


その考えを察知したかのようにソフィアがアルベルトに通信をする。


「大佐!」

『下手にこっちに戻ってこなくていい。それよりもそっちを早く倒せ。』

「……。分かりました。」


すぐに目の前の状況に意識を集中させる。ソフィアからの指示に一瞬反論しかけた言葉を飲み込む。この指示があるということはなにか考えがあるのだろうと思う。


「そろそろ決着をつけたいが……。中々そうもいかないか。」


そしていつの間にか連合国主力機エイノールにもアルベルトは囲まれていた。


「だが、エイノール程度の攻撃なら!」


エイノールの銃弾が飛び交う中を躊躇いなく突き進む。


「誘い込んだつもりだろうが!」


周囲の状況を確認する。するとエイノールの一機が目に付く。

その機体から放たれた銃弾は、少しだけ色が違うことに気づくと即座に躱す。


「高電圧の弾か。」


それを躱すと近くにいたギデオンにプラズマサーベルを押し当て、内部フレームを露出させる。


アルベルトはプラズマサーベルの柄を話すとエネルギーライフルの銃口をその切り込みに当てる。


「残り二機!」


そのまま容赦なくトリガーを引くとギデオン内部が高温になり機体が溶解していった。

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