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第二十四話

「そろそろ時間か。」


 エミリアはアレースのコクピットで時計を確認していた。


『アークウィン大佐。作戦は想定通り進んでいます。親衛隊各機出撃してください。』

「了解。親衛隊各機、今回の作戦は予定通りに行う。各自ルートの確認を怠らないように。」


 エミリアは予定通り作戦が遂行していることに安堵しながら機体のモニターに侵攻ルートを表示させる。そして機体をいつでも動かせる状態にしている間にカタパルトの発進ゲートについていた。


「エミリア・アークウィン、アレース、発進します。」


 いつも通りの言葉を出すと同時に電磁カタパルトによって機体に負荷がかかる。当然ではあるがそれは中にいる彼女にも、いくら魔法で加速力を制御しているとはいえそれなりの力が加わる。それが一年前ならまだしも今となってはその加速力にも慣れてしまっていた。


 あくまでいつも通りとエミリアは白い機体を青い空に浮かべると少しだけブースターを噴かせる。機体を低速で滑空させ他の親衛隊中隊の機体が出てくるのを待っていた。


『大佐。全機揃いました。』

「親衛隊各機、作戦行動を始めなさい。」


 エミリアはその言葉を吐くと同時にアレースのブースターを更に強く噴かせ巡航速度で移動させた。



「何をしているの、アイン。」

「バクディード攻略の様子を観察しています」


 アインの答えにアズリトもモニターに表示されている戦闘を見ていた。そして少し経ってからアズリトを二回見る。


「どうやってこの部屋に入ったんですか?」


 そう低い声を出してしまう。カギは閉めたはずだ、と思う。彼女はきょとんとした顔をしていた。


「普通に入れたけど?」


 ノックもなしに入ってくるのかと思いながらもアインは部屋のカギを手元にあるボタンで閉める。


「どうしたの? 鍵なんて閉めて? そんなにこれ不味い映像なの?」

「でしょうね。独断で無人偵察機送り込みましたから。ドローンもこれが終わると爆発する仕組みになっていますし。」

「ユリアにでも言えばいいのに。」


 アズリトは若干引きながらもアインにそうかつて彼らの同僚であった女性の名前を告げた告げた。それにアインは苦笑いを浮かべると違うんだけどなぁって顔で


「多分言えば認めたでしょうね。けどそれじゃ何か引っかかりそうで。」

「それで誰が気になるの?」


 これ以上この話を続ける意味もないかとアズリトは唐突に違う質問をする。


「そんなのアルバート・デグレアに決まっているじゃないですか。」


 アインはエミリアと共に戦っているグレーのアレースを見ている。


「もしあいつが記憶を失っていて、かつてみたいに戦えない今ならどうするのか、それを確認したいんです。」


 その言葉はアルバートを値踏みする言葉であった。



 連合国の首都、バグディード上空をいくつもの色のレーザ砲が飛び交う。その色合いはまるでコンサートのもののようであったが、緊迫感が全く違っていた。


 二度に渡る侵攻作戦によって連合国はかなり疲弊していた。主力機であるエイノールは二千機のうち六割が撃墜、新型機であるギデオンも四十機ほどあったが、乗れるパイロットが五人程度しかいなかった。

 そのためエミリアたちは連合国の巨大要塞にある程度接近することは容易であった。


「三時の方向!」


 しかし連合国の巨大要塞にエミリア・アークウィンはかなりの苦戦を強いられていた。直掩であるキャスターはいなかったが要塞の迎撃兵器に進路を阻まれていた。


『隊長! 上!』


 アルバートの声にエミリアはすぐに攻撃を確認すると最小の運動で回避をする。彼女の考えた隊列は巨大要塞の前ではあまり意味を成していないというわけではなかった。実際その指示に関しては見事なもので親衛隊中隊ではいまだに撃墜された機体は無かった。だが要塞への突破口はいまだに開けてはいなかった。

 どうするべきかとエミリアは考える。


 彼女の今指示している親衛隊中隊の隊員は総じてレベルが高く、動きにも癖は無かった。彼女としてもそれなら戦術は立てやすいとは思う。

 しかしエミリアの前の親衛隊隊長、ブライム・エイブラウのように傑出したパイロットはいなかった。彼女自身も歴代の親衛隊の隊長としてかなり優秀な部類ではあった。しかしそれは戦術面での意味合いが強くパイロットとしての操縦技術はブライムほどではなかった。そしてブライムと対等と言えるほどまでの操縦技術を身に着けていたアルバートも記憶をなくしたことでその腕はかなり低下していた。


 そのために戦術を立てたにも関わらず、皮肉にもそれを実現できるパイロットはいなかった。だから彼女は戦術で対応する。しかしその理想を邪魔するように巨大な兵器が牙をむいてくる。


「せめてもう少し敵に接近できれば。」


 比較的安全策を取り続けていた彼女も今回はそのマージンを捨てるしかない状況に追い込まれていた。


 撤退もルート自体は確保してはいたが上からの指示がない以上できるものではなかった。かといってこのまま巨大要塞からの攻撃を耐えきるほどの体力が親衛隊にも残ってはいなかった。

 その時親衛隊の一機が撃墜されたことの報告が入る。幸いにも脱出はできたので胸をなでおろす。だがそれでも状況は何一つよくなっていない。


 だがもう迷っている暇はないと彼女は自分に言い聞かせた。


「全機、ルート45で敵要塞内部に突撃を開始!」


 だからエミリアは一番可能性が高いルートを選択した。どのルートの成功確率もたいして変わらないことに気づきながらもそう指示を出さざるを得ない。


 それが分かっていたからこそエミリアは自分の機体を他の機体よりも前進させた。

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