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第二十話 繰り返される光景

「クソ! あのジジイ!」


 アルベルトは自身が用意した包囲網を突破したギデオンの一機と対峙していた。


 本来であればこの時間にはギデオンの部隊を殲滅し主力部隊と合流、連合国の主力部隊を撃破して帝国と共に首都への侵攻を始める手筈だった。


「クソ!」


 ギデオンとの距離が近すぎるため一旦取離れようとする。しかし機動力に差があるため中々上手くいかない。


「ここまで崩されたら、もう立て直しは出来ないな。」


 アルベルトは当初の目的が達成できないことを悟る。


「もう死ねよ。」


 一言冷たい声で愚痴る。

 同時に一気に集中力を高め、目の前の機体を注視する。そして溢れんばかりの情報とクリアになっていく思考で機体に対する対策を考える。


「この性能差では撃破は難しいな。」


 敵からの攻撃を必死に避けながらアルベルトは逃げ道を考える。


「残っている武装はライフルのみ。せめて武器を破壊するくらいなら……、いけるか?」


 目の前の機体に対し残り少なくなった武装でどう対処するか考える。


「ウルならともかくデュラハンでは流石に無謀か。」


 しかし、すぐに倒す方法を考えるのを放棄した。そしてなんとか必死に距離を取ろうとする。しかし砲撃の位置を徐々に狭められ、逃げ道を失っていき、敵機の両手で機体を抑えられてしまう。


「このままではじり貧だな。」


 ここでパニック状態に陥らないのが彼の強みであった。

 目の前の機体の腹部に搭載されているビーム砲の砲口が明るくなる。


「ベイルアウト!」


 アルベルトはコックピットに搭載されている黄色いレバーを力の限り引く。するとすぐに自身の体に不快なGがかかる。同時に非常用の小型モニタでギデオンを確認する。

 キャスターに搭載されている動力炉の爆発によりギデオンは黒煙にまみれていた。各部装甲もボロボロではあるが、機体自体はまだ戦闘継続が可能だった。


 そしてギデオンの銃口がアルベルトの脱出ポッドに向く。

 その瞬間、間を割ってはいるようにアレースがエネルギーサーベルでギデオンの腹部を突き刺す。そしてすぐに大きく退いた。

 ギデオンはそのまま腹部の高出力砲が誘爆を起こし、爆発を始めた。その数瞬前に脱出ポッドが大きく揺れるが、それが爆発によるものであるか、そうでないかはアルベルトに判断は出来なかった。


『大丈夫ですか?』


 接触回線の声にアルベルトは目を見開く。それが自分がエミリアに助けられたということを悟る。


「助かりました。ありがとうございます。」


そう答えるアルベルトの声は少し震えていた。



 揺れるコックピットブロックで気分がただでさえ優れないのに、それに加えて目の前で嫌いな顔を見るのは辛かった。


「今回の命令無視はどういうつもりだ。」


 エミリアからソフィアにコックピットブロックごと渡されたアルベルトはアクタール基地に着くなり、憲兵に取り押さえられ連行されるとバザロフに尋問を受けていた。


「命令無視はしていませんよ。ただ疑義を唱えただけです。」

「その時間さえなければあんな敵機に捕まらず、主力部隊に合流し、帝国との連携が出来ていたはずだ!」


 それがどれだけ難しいことか目の前の相手は知らないのだろうなと思う。

 同時に昔は前線でかなり名の知れたパイロットであっても現場の様子まではわからないかと思う。


「あのタイミングが少し変わったところでそこまで大きな違いはありません。すぐに追いつかれます。」


 色々と思うことはあったものの、アルベルトは努めて冷静に普段通りの声で返したつもりだったが、その声音は少し面倒臭さが混ざっていた。


「そのせいで帝国に戦果を譲ってしまったではないか! あそこまで私がお膳立てしたというのに! 帝国のあの汚い小娘が戦果を全て奪ってしまったではないか!」


 その言葉にアルベルトは眼光を鋭くする。


「なんだ、その目は!」


 バザロフが殴り掛かろうとした時だった。尋問室の扉が開く。


「バザロフ中佐。そこまでです。」


ソフィアが間に割って入った。


「なんだと?」

「あなたには我々に対する人事権はありません。そして懲罰権も。彼の処遇は上官である私やベッソノワ准将が決めるべきことです。それをお忘れなきように。行くわよ、シュタイナー少尉。」


 そういってソフィアが部屋から出ようとした時だった。


「シュタイナー少尉。貴官には処分を下すまで自室での待機を命じる。」


 ユリアはそれだけ言うとその場から立ち去った。



「連邦は一体なにを考えているのかしら。」


 エミリアは自分の部屋のソファーに座ると開口一番そう言う。部屋の中にはいつも通りアルバートもいた。


「連邦というのも実体は複雑ですから、なにかしらの派閥争いに巻き込まれたのでは?」

「そういえばアクタール基地は元々バラノフ家所有のものだったわね。そしてベッソノワ家は当初モスキュールの近辺にある基地の司令官と。その辺かしら。」

「そういえば、今連邦ではバラノフ家が最も力を持ってますが、なにかあったのですか?」

「さぁ? ただバラノフ家は身の振り方が上手かったわね。」

「どういうことですか?」

「今の帝国と連邦はかなり密接な関係になっている。そして何人かで協力してベッソノワ家を嵌めたみたい。」


 まぁ詳細は分からないけどと付け加えるとエミリアは立ち上がる。


「この話は他の兵士達には秘密にしておいて。」

「はい。それはもちろんそうなのですが……。大佐はこれからどうするつもりか考えているのですか?」

「それは今考えているけどなかなか答えが見つからないというのが実際のところよ。」


 そう告げるエミリアの顔は何とも言えない表情であった。


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