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第十六話 連邦の実情(1)

「イーゴレ大佐にミロン中佐、それにレナート大佐まで亡くなるとは……。バラノフめ。余計なことを。」


 連邦の辺境伯の一人であるユリア・ベッソノワは第一次連合国への攻撃の報告書を読んでいた。そこには引き戻しを考えていた部下の名前もあった。


「ちなみにだが、メーチェ少佐。バラノフの部隊の被害はどうなっている?」


 そして同じく司令室にいる彼女のショートの金髪の若い女性に確認をとった。


「バラノフ派閥の方にはアイン・バラノフ大佐以外あまり被害が無かったようです。」

「恐らくアインが必死にカバーをしたのもあるのだろうし、元々バラノフ派閥の人間をあまり重要なところに置かなかったのだろうな。バラノフ派も強かった者は前の大戦で死んでしまったからな。まぁ他の家の戦力を落としたかったのだろう。」


 だからと言ってこうも直接的な手段を使うとは思わなかったとユリアは思う。


「それともう一つ悪い報告があります。」

「連合国の首都攻略に部隊を出せと?」


 そう返答するユリアにルーシーはそっと頷く。


「まぁそうなるだろうな。どのみちあそこまで戦力が減った部隊ではまともに戦闘することは出来ないだろう。そうなると派遣する部隊を考えなければならないか。」

「それがその部隊についても既に指示があります。親衛隊と第十二大隊を出せとのことです。」


 その言葉に苛立たし気に息を吐く。


「それは最小限か? それともそれ以外の部隊は出せないどちらだ?」

「後者の方です。バラノフ家としては首都攻略に自分たちの部隊を参加したことにしたいとのことでしたし。」

「つまり自分たちの部隊を出すから、他の家には補給が最小限となるように部隊を減らせということが。どうせ部隊編成にも口は出せないのだろう。」

「はい。」

「了解した。それぞれの部隊にその旨を伝えてくれ。」

「それと作戦の立案についてはこちらに任せるとのことです。ただ……。」

「それすらも口を出すのか。どうせバザロフにでもやらせろと言われているのだろ?」

「はい。」


 ユリアは忌々しい顔でエフゲニー・バラノフから送られた参謀将校の顔を思い出す。


「ですが、バザロフ中佐では……。」

「そうだな。あいつには荷が重すぎるだろう。」


 ルーシーの指摘など既にわかっているという感じで答える。


「なぜ彼はこちらの部隊に送られたのですか?」

「一応こちらの参謀の参考にと送ってきたらしい。だが実際には昔の知識をひけらかす役にも立たない左遷人事だ。それに加えて私の監視という名目もあるらしい。奴としては何としても戦果を挙げてバラノフの元に戻りたいのだろうな。」


 どれだけ成果を出そうがもう居場所などないのにな、とユリアは付け足すように言った。



「新型のエネルギーフィールドとミサイル、そして高出力の迎撃兵器か。古典的でどうしようもできないのが太刀が悪いわね。」


 エミリアは自分の部屋でアインが敵要塞からの攻撃を回避し艦隊が反撃するのを見ていた。

 一言で言うと圧倒的だった。

 艦隊からのミサイルは全て迎撃し、アインの乗機であるメルジアの高出力プラズマライフルの攻撃は無力化していた。

 いくら超遠距離から発砲したため減衰していたとしても戦艦クラスなら撃破できる威力だった。


「そうですね。まさか攻撃手段を全て無力化されるとは。」


アルバートも渋い顔をしながら答える。


「それが問題なのよね。今回艦隊は撃破出来たもののその被害は決して小さいものでもないし。そのうえ首都に侵攻するには厄介な要塞を破壊しなければならない。」


そうため息をつくとエミリアは完全に手詰まりだとばかりに机に突っ伏す。


「しかもまた明後日に攻撃を始める上に今度は連邦の他の部隊も加わるんでしょ?」


連邦との共同作戦はもうこりごりだとばかりにエミリアはため息をつく。


「確かにバラノフ家以外の練度はあまり高くないと聞いてはいますが。」


アルバートはもう嫌だといっている彼女に追い打ちをかけるようにそう言葉を加える。


「今回は連邦もメンツがあるから練度が一番高いといわれていた第一艦隊を宛がったんでしょうけど。だけどアインでもあんなにやられたのに他の家の部隊なんて入ってきたらもう滅茶苦茶よ。」


エミリアは前回の戦いでのことを思い出し嫌そうな顔をする。


「第一アインも大した成果を出すこともせずに撤退するし。どう見ても前にノーヘッドでブラギとかを抑えていた准尉さんのが強いわ。」

「確か、アルベルト・シュタイナー准尉でしたか。」


アルバートの言葉にエミリアは頷く。


「ですが、准尉ということは与えられている機体もノーヘッドではないですか? そうなると流石に戦力にはならないのでは?」


アルバートは旧世代機に乗っているのを思い出してそう補足をする。それならばまだ自分のがマシだとでも言いたいように。


「それなのよね。あれだけの能力があるならアレースで凄い戦果を挙げてくれそうだけど。」

「そうですか?」


そのエミリアの言葉に対しアルバートは不機嫌そうな顔をする。


「それに優秀な軍人がいたほうが私達も楽になるじゃない?」

「それは確かにそうですが……。」

「それでいいじゃない。私達はパイロットだけが全てじゃないんだから。」


そういって笑うエミリアにアルバートはなにか言うことは出来なかった。

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