第十五話 目覚め(2)
「この機体なら!」
連合国の新型機であるギデオンに乗っていたラウダは帝国軍の機体、アルバートとエマソンの乗るアレースに対して圧倒的な攻撃力で攻撃をしていた。
「それにあの二機は!」
更に攻撃を激して行く。それを二機は躱しながら接近をする。
「あの二機は墜とさないと!」
アドハムのためにもあの二機は必ず墜とすと覚悟を決める。しかし二機へ攻撃は当たらなかった。その原因は三機の連携が取れていないことだったが、彼女たちはそれに気づくことなく攻撃を継続していく。
「私が!」
*
『あの三機、かなり攻撃力が高いですね。』
「そうですね。」
なんとか射程距離まで近づくことが出来たアルバートとエマソンはギデオン三機の部隊をなんとか相手にしていた。
『少佐! 上!』
彼女の言葉にアルバートは即座にアレースのプラズマサーベルを引き抜く。そして上に突き立てる。
接近戦を仕掛けたギデオンの一機はそれを躱しきることが出来ず、深々とプラズマサーベルが突き刺さっていた。
「これで一機! 後は一人一機ずつですね。」
『分かりました。一機は押さえますからもう一機は倒してくださいね。』
「もちろんです。」
そう肯定しながらもアルバートは目の前の敵をどうするか考える。
「機体から発せられている魔術波長を見ると、パイロットは強奪部隊の一人か。ただ……。」
どう攻撃をするべきか考える。
「だめだ。どう戦えばいいのか分からないな。」
ギデオンに対してアルバートも攻撃を加えているが、決め手に欠けていた。アレースのプラズマライフルは弾かれ、かといって出力が高いエネルギーサーベルを使おうにも交戦距離が遠い。もっと詰めれば可能ではあるが、有効かどうかも分からないエネルギーサーベルを使うために危険に身を晒すのは一瞬ためらわれた。
「いや、昔の俺は出来ていたんだ。今の俺に出来ないわけがない。」
アルバートはそういうと一気にギデオンに接近する。アレースのメインスラスターを全開にして距離を詰める。そして敵からの攻撃をその反応速度で強引に躱していく。
常に全速力を出しているせいで機体の動きは徐々に不安定になる。それを強引にサブスラスターで制御していく。
その結果連合国の新型機になんとかついていくことは出来ていた。しかし機体の安定性はとうに失っていた。
いつもより操縦を慎重に行う。その結果命中率が下がるが、気にする余裕は無かった。
かつての自分ほどの力があれば良かったのにと何回も思う。
「だけど、このままお前たちをのさぼらせる訳には!」
『なんで、私たちの邪魔をするのよ!』
そのとき敵であるラウダからの声がコックピット内に聞こえた。
そしてその言葉の意味をアルバートは理解できなかった。
彼が戦っているのは上から命じられたからだった。
「兵士が国を護るために戦う。そこに理由はいるのか?」
『なんで今の国を支えようと思うのよ! 世界的に魔術師を戦争の道具として人ではないと扱っている国を! そんなものに意味なんて!』
「だけどその国には仲間が、好きな人がいる! だったらそれを護るために戦うのは当たり前のことだ!」
『そう。よっぽど恵まれた環境にいるのね。私達みたいにただ単に使い捨てられていくパーツとは違う……。私達みたいに家族を人質に取られて戦争に行くことはない環境。そんな恵まれた環境にいられない人だっている。』
「だから見逃せと? 今戦争をしかけているお前たちを?」
会話をしながら目の前の敵に集中する。
どこかに弱点はないか、なにか隙はないのかと、目の前を見続ける。
機体はついてくる。まだいける。
そのときに彼はギデオンの動きが徐々に大ぶりなものになっていることに気づく。
「これなら!」
アルバートは今までの劣等感を払拭すべく右腕のエネルギーサーベルを引き抜くと攻撃を加える。それは前の大戦でアルバート・デグレアがよくしていた戦い方によく似ていた。
その状態で更に攻撃を続けていく。
『あなたたちに負ける訳にはいかない! 私達の国を変えるためにも!』
アルバートはもう彼女の言葉に耳を傾ける気は無かった。そうして攻撃をしていた時だった。
『ここまで出来れば上出来よ、デグレア少佐。』
エミリアのその声とともに、彼女のアレースが狙撃を行っていた。その一発はギデオンの脆くなっていた装甲を貫く。そのままラウダが乗っていたギデオンは力を失ったようにブースタの出力を落としていった。そしてその数瞬後に爆発を起こした。
*
「よし。戦況としては比較的いい状況か。」
エミリアは周囲の様子を確認する。そして戦線を整えるために司令部への指示を考える。。
「第七エリアの部隊から砲撃を!」
『分かりました。』
その十秒後には味方からの支援攻撃が届き、戦況はより優位な状況になっていた。
「これを倒せれば……。敵の前線突破も容易に!」
エマソンが相手をしている最後のギデオンをアルバートと一緒に攻撃していた。
『大佐!』
「分かっている!」
エミリアはアルバートの言葉より先にエネルギーサーベルを引き抜くと露出したケーブルに突き刺す。すると装甲内部から小規模な爆発が起こり、より大きく装甲内部のケーブルが露出する。
「これで!」
エミリアは大きく露出したジェネレータに直結されているケーブルを破壊する。
それによってギデオンの部隊を殲滅した。
「これで後は連邦と協力して敵部隊を!」
エミリアが連合国の残存部隊に更に攻撃をしようとした時だった。
『アークウィン大佐! 撤退してください!』
コンゴウから緊急通信が来る。
「なにがあった!」
『連邦が敵艦隊を撃破したのですが、それと同時に敵遠方からの攻撃を受けています!』
「了解、各機撤退をしろ!」
エミリアは自分の部隊に対して撤退の指示を出しながらも、遠距離からの攻撃に慌てて撤退をしている連邦軍の部隊を見る。
「どこから?」
攻撃している方角は分かってはいたので、エミリアはすぐにその方向のカメラを確認する。するとかなり遠くで黒煙が上がっているのを確認する。しかしその黒煙と攻撃をしている物体の大きさがほぼ同じことに気づく。
「あの大きさは一体?」
エミリアはコンピュータで計算させながらも、その大きさを頭の中ではじき出す。
「やっぱりkm単位での大きさか。」
その表情は苦々しいものであった。
「破壊するのに、面倒なものを……。」
*
「全機、急いで撤退をするんだ!」
アイン・ダールは遠距離からの攻撃にどうすることも出来ず、撤退の指示を出す。しかし、遠方から放たれる砲弾にランダムにウルなどが撃墜されていく。
「この距離で直撃させることができる敵など……。」
『大佐! 敵の新型機がこちらに一機接近してきます!』
アインはその言葉に目を大きく見開く。
「これ以上、撤退を遅らせるわけには……。」
その場でどうすることがこの場で最適なのかを考える。
「アース少佐。撤退の指揮を頼む。ここは私が当たる。」
『ですが……! いえ、了解しました。』
アインとずっと一緒に戦ってきたアズリトだからこそ、彼と今共に戦ったところで足手まといにしかならないことをすぐに理解する。
『死なないでくださいね、大佐。』
「分かっています。敵射程から離れたら教えてください。それに合わせて撤退をします。」
アインはそれだけ言うと接近してくる敵に向かえ撃つ形で攻撃を始める。
「やはりこの機体は天使シリーズに準じる機体か。」
高い移動速度を誇っている目の前の機体を冷静に分析する。同時に外部からの情報をとにかく収集する。機体のデザインは白色、所持している武装はライフルとシールドといった一般的なものであることを確認する。
「武装はオーソドックスなものか。」
だとすればまだやりようはあると感じる。
「アルバートの真似事などしたくもないが。」
アインはそれだけ言うと目の前にいる連合軍の新型機を相手に戦闘を挑んだ。
*
「作戦は失敗か。」
母艦であるコンゴウに着艦したエミリアはため息を吐く。今回ばかりはどうしようもないものではあった。
高性能な新型機ギデオンとアインが戦った新型機、そして遠距離からキャスターの装甲を破壊可能な要塞。連合の戦力として当初予定すらしていなかったものだった。それを踏まえれば今回の結果はまぁ許されるだろうという判断はあった。
今エミリアが危惧していたのはそういう類のものではなく、今後更に戦火が大きくなっていくことに対してであった。
「あんな新型機が量産されているとなれば、いくら帝国と連邦が協力しても……。」
大きな被害が出るだろうし、下手すれば敗北する。
その考えが否定できなかった。
それだけは避けなければいけないのは分かっていた。
「どうしたものか……。」
その答えは考えてもなにひとつ出なかった。




