表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/200

第十四話 目覚め(1)

 初めての大規模作戦にアルバートは緊張していた。既に旗艦であるコンゴウからは発艦し海上の上を進んでいたが、それでも緊張は収まらない。


『デグレア少佐、大丈夫そうですか?』


 同じ部隊に所属しているエマソン・エチュードからの言葉にアルバートは顔を上げた。


「はい。問題ありません。」


 緊張を悟られないように平静な声を出す。それが寧ろ緊張している証拠だと、エマソンは数年来の付き合いから感じていたがあえて口には出さない。

 むしろ記憶を失っていてもこういった基本的なところは変わらないのだと感心すら覚えた。


『別に緊張するなとか言う気は無いです。ただ流れ弾には気をつけてくださいね。アレースの装甲であれば敵からの攻撃はなんともありませんが、味方からの攻撃だとどうなるか分からないので。』


 エマソンの言葉は半分冗談であったが、もう半分は本気だった。以前の戦争でオリバー・パトンから恨みを買っていたアルバートは攻撃をされたこともあった。だからこその言葉でもあった。そしてアルバートが理解する以上にエマソンは自分の気を引き締め直す。

 もしこれでアルバートの身になにかあったら、今度は自分がエミリアに殺されかねないと感じたためであった。


「流れ弾に気をつけると。」


 一方でアルバートはエマソンの意図を汲み取っていなかった。そして言葉の意味通りの意図で受け取った。特に味方からの流れ弾で撃墜など目も当てられない事態になることは明らかなので、とにかく祈るほか無かった。


『敵部隊、四百機を確認。大隊各機、敵部隊の排除を行うぞ。だが場所が場所だ。街の中にはあまり落とすなよ!』


 親衛隊と他の部隊を組み合わせた一個大隊を率いたエミリア・アークウィンからの指示にアルバートはアレースのセーフティを解除する。

 そして連合国の主力キャスターであるエイノールの一機に照準を合わせトリガーに指をかける。


『全機攻撃開始!』


 その言葉に合わせて、帝国軍のキャスター部隊は敵の射程圏外から一斉にライフルを発射する。

その矛先には前方に爆炎が上がる。同時に帝国軍部隊はエネルギーがライフルに充填されたのを確認し、再度目標を定め撃つ。


 遠距離からの一方的な攻撃が十回ほど繰り返されたところでエイノールはようやく帝国軍のキャスターを射程圏内に捕える。ただしその頃には十分の一以下に減っていた。

 しかしそんな一方的な状況は終わりだとばかりにエイノールは実弾のライフルを撃つ。しかしその攻撃はアルバート達の乗るアレースや帝国軍の主力部隊であるクロノスの部隊に有効な攻撃となることは無くそのままエネルギーライフルの斉射でどんどんと数が減っていく。この一方的な戦況によって帝国軍の優位性は揺らぐことがないほどに絶対的になっていた。

 思ったよりなにもなくアルバートは拍子抜けする。


「奪取した機体は首都攻略まで温存する気か?」


 アルバートは訝しみながらも更に攻撃をしようとした時だった。


『前方より敵新型機三機が接近。その後方からエイノール及び旧世代機のナメルの混合部隊六百機を確認。』


 指揮官機としてセンサーを強化されているエミリアの機体が新しい部隊を発見する。


「戦力が減って敵が焦った? あるいはなにか他に目的が?」

『その中に紛れて新型機が三機接近、これにはデグレア少佐とエチュード少佐が当たれ。」

「了解です。」

『全機ブリーフィング通りに分かれて作戦を開始。』


 アルバートはエマソンの機体の後ろに着くと一緒に行動する。


「分隊で行動するなんて珍しいですね。」

『今接近している機体の速度が速すぎますね。現行の主力キャスターの速度どころか新型機よりも。』


 エマソンもそう言っていた時だった。正面から太い筋が来る。

 それを二人はバレルロールしながら回避する。


「敵との距離は?」


 アルバートは狙撃した機体を探すが、レーダに反応は無かった。


『敵はこちらの射程圏外から攻撃をしていますね。』

「つまり近づかなければなにもできないということですか。」

『そうです。だからブースターの消費を抑えながら接近するしかないですが……!』


 エマソンは敵からの遠距離攻撃をギリギリで回避する。

 それと同時にアルバートのアレースにも敵の様子が表示される。アルバートは敵からの攻撃を慎重に回避すると距離を詰めていく。接近して漸く勝てる見込みがある、分が悪い賭けであった。



「いくら倒してもキリがないな。」


 エニシエト連邦辺境伯であるエフゲニー・バラノフの義息であるアイン・バラノフは三十機目のエイノールを切り伏せる。しかし乗っている機体が普段の超高性能機である天使シリーズの一機、ガブリエルではないため戦い辛くはあった。そのせいか、普段に比べて部隊の陣形も思いどおりにはいかないものの、作戦自体は順調に進んでいた。


「他の機体も特に大きな損傷はなさそうですね。」

『このまま何事もなく終わればいいですけど。』

「特になにもないと思いますよ。向こうの方も順調に事が進んでいるようだし。」


 アインはそう言ってアルバート達の戦いを遠方からであるが確認する。


「向こうの方に新型機が回ったみたいですね。」


 アインはそう言って一度だけレーダに目を落とす。

 目の前の艦隊に対してどうしたら勝てるのか考える。


『じゃあ私たちはこのまま敵艦隊を攻撃する?』

「まぁ、彼等なら支援は要らないでしょうしそれでいいでしょう。」


 アインはそれだけ言うと直進する。


「自分が敵艦隊を叩きます。」

『一機で大丈夫?』

「問題ありません。メルジアの最高速力なら敵艦隊もロックすら出来ないでしょうし。」


 スラスターのペダルを踏み、機体を一気に加速させる。

 そして部隊から離れると敵母艦を視認する。旧世代の艦艇であれば現行のキャスターを捕捉することは出来ない。後は突破するだけだと機体を更に前に進める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ