表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/200

第十一話 開戦

「ラウダ、無事か?」


 撤退の最中、フォルセティのコックピットブロックをアドハムは回収していた。


『えぇ、なんとか。』


 ラウダの声が思ったより元気そうで安心する。


「そうか。あともう少しで連合国に戻れる。それまでは休んでおけ。お前にはもう少し一緒に戦ってもらいたいからな。」

『うん。ありがとう。』

「なにか必要なものがあったら言ってくれ。すぐに対応するから。」


 通信を切るとアドハムは一度ため息をついた。


「三機のキャスターを奪取して、一機は撃墜、もう一機も大破。残りの一機は中破か。タダではすまないか……。」


アドハムは連合国をもう変える機会は無いのだと感じた。


「終わりか……。」


 恐らくラウダもただではすまないだろうと思う。

 だからこそアドハムはこのままラウダを連合国に連れて帰っても良いのだろうかと思う。

 このまま帝国に投稿したほうが良いのでは無かろうか。

 だがそれをすると今度は家族を殺されることは分かっていた。近い家族だけでなく一族だ。最近子供が出来た従兄弟もいた。

 それはラウダも同じような境遇であった。

 それ故に彼らは連合国に戻る以外手はなかった。



「以上が今回の作戦の報告となります。」


 エニシエト連邦の辺境伯ユリア・ベッソノワは副官であり親衛隊隊長のソフィアの報告を聞くとため息をついた。まだ少女の幼さを残した若い司令官はピンク色の長髪を指でくるくると巻いて考えをまとめていた。


「そうか。大体の内容は分かった。今回のエイノールの部隊はアウスール連合国の正規軍で間違いないんだな?」

「はい。あれは連合軍の部隊で間違いありません。クーデターが起きたという情報もないので。」


 彼女の言葉にユリアは椅子に深く座り直すとため息を吐いた。


「確かに連合にとって連邦と帝国が手を組んだら、後の手がないものな。」

「仕方ないと言えば仕方ないですね。それに連合といえば厄介なテロリストもいますし。」

「そうだな。そう言った意味では今回の連合からの攻撃は僥倖と言ったら僥倖なのだろうな。だが、なぜここまで急に技術力が上がった?」


 ユリアはその答えに気付いていながらもソフィアにも確認をとるように聞く。


「どう見ても内通者がいますね。」

「出どころは帝国だろうな。イルキア基地からの機体奪取作戦を立てているあたり内部を知っている人間など連邦にはいないからな。私も詳しいことは分からないし。」

「目的は連合を潰すことでしょうか?」

「あぁ。恐らくだが、まず外敵を完膚なきまでに潰す。そしてその次は……。」

「連邦と帝国を一枚岩にするといったところですか。」


 ご名答といった感じでユリアは軽く頷く。


「厄介なものだな。」

「そうですね。」

「実際各家も今は地盤固めに奔走している。」


 まぁそういう自分のところもやってはいるがとユリアは言う。


「だが、元々ベッソノワ家はアスタル家と仲がいいからな。そしてアスタル候はどうやらアガニコフ候と手を組むらしい。そうなるとそっちの派閥に行くことになるだろうな。」

「そうでしょうね。私はベッソノワ家に仕える身なので、主君を変更する予定はありませんが。」

「あぁ。頼む。」

「ですが、何人か離れるかもしれませんね。」

「そうだな。元々このアクタール基地にはバラノフの腹心たちが多いからな。ある意味それでいいのかもしれないな。」


 例え数が減ったとしても一枚岩にしたほうがいいとユリアは後々のことを考える。


「これからも任せたぞ。」

「はい。」


 ソフィアはそういうと部屋から出ていった。


「後もう少しで気が訪れる。そうすれば、全て終わらせることが出来るか。」



「そうか。ブラギだけ逃したか。」


 イルキア基地に戻ったエミリアは父親であるオズワルド・アークウィンに事の子細を報告していた。


「はい。申し訳ありません。」


 エミリアの声や表情はいつもと同じものであったが、手の位置がいつもより少し低いことからオズワルドは珍しく落ち込んでいるのだと察する。


「駄目だったものは仕方あるまい。別に奪われたところでそこまで意味はないものだしな。」


 そう突き放した言い方が二人の仲をいつまでもよくしないことに気づかないのは彼の悪いところだった。しかしそれを四十代後半に差し掛かった彼には気づくことが出来なかった。


「まぁ、いい。それで今回の敵機はエイノールだったんだな?」

「はい。ですが、新型の敵艦隊はどこの国かは分かりませんでした。」

「まさか、こっちがまだ研究しているバッテリータイプのエネルギーライフルを完成させているとは……。しかも艦載型であの出力とは……。」


 戦闘データを見ながらオズワルドはため息を吐く。


「だがこれで今回あの機体を奪取したのはアウスール連合国で決まりだろうな。」


 その時オズワルドの電話からコールが鳴る。


「私だ。」

『連合国から重大発表があるそうです。今その通信を回します。』


 部屋の空中に大きなモニターが映る。


『魔術師はこの世の理に反した存在だ!』


 モニターに映っているのはドミニア帝国とエニシエト連邦の次に大きい大国、アウスール連合国首長であるジャミル・ルルーシュだった。


髪 の色以外は齢70であることを感じさせないはっきりと、そして力強い姿と声に、その演説を直に見ている群衆が手を挙げて雄たけびを上げる。

 その様相がモニターにはっきりと映し出されていた。


「やっぱりこうなったか。」


 オズワルドはうんざりとした声を出す。


『彼らは我々がうまく制御しなければ厄をもたらすものだと神は我々に伝えた! しかしアウスール教を信仰していない者たちは人権だなんだと言い魔術師を制御しようとしない!』


 テレビに映っている白髪の老人、アウスール連合国首長、ジャミル・ルルーシュはここで一度溜めるように息を吸い込む。


『だからこそ我々はここに宣言する! 我々は異教の者どもをすべて排除すると!』



『魔術師は人の平等という概念から大きく外れた人材だ。』


 アルバートは食堂で連合国の宣戦布告を見ていた。彼の隣には同じ親衛隊のエマソン・エチュードが座っていた。


「もし魔術師の人権が保護されていたら徴用などされていないでしょうに。」


 エマソンはあきれたような声でそういう。アルバートもまた彼女と同意見だった。


 彼らがいる世界では魔術師は重宝されているというより使い捨ての道具であるという認識のが強かった。実際魔術師のうち半数ほどは、現在発電所にて魔力を利用した電力供給の材料として、青春時代である二十代を過ごす。

 そして残りの半数はキャスターのパイロットとして二十代を過ごす。彼らには職業選択の自由はなく、そして与えられる報酬は非魔術師の反発なども考えて、貴族を除いてはそこまで高くは無かった。


 そんな現状を知っていてよく言うと二人は同じことを考えていた。


 だが、当然ではあるが、彼らの思惑など知らないジャミルは少しだけ笑うとバックスクリーンの大型のモニターに映像を出した。それはアウスール連合国と接しているエニシエト連邦の魔術師の街の一つが蹂躙されている映像だった。


「これは……。」


それを見てアルバートとエマソンは言葉を失った。


『我々はこの世界を正す。そのために帝国・連邦両国の非魔術師たちにも協力していただきたい。そして共に倒そうではないか! 現在の国家を蝕んでいる魔術師達を! 弱者を虐げ甘い思いをしている魔術師たちを!』


 その言葉とともに中継は切れた。


「こんなんで人は集まるんですか?」

「集まりますね。」


 エマソンの言葉にアルバートは言葉を失う。

 そんな彼の様子を見て、エマソンはため息をつくと、茶色い瞳で彼を見る。


「魔術師の立場というのはあまりよくありません。皆が平等に使えない力を持っている、それだけでやっかまれるのです。それに加えて、もっと自分はできると感じる人が多いのです。そして今回の国家を蝕むという発言、そこにシンパを感じる非魔術師が多いのも事実です。流石にそんなにたくさんいないとは信じたいですが、また明日基地周辺でデモでも起きると思いますよ。反戦の。」

「自分たちにですか?」

「ええ、もちろん。投降して連合国の意見を聞いて話し合おうというデモが。まぁそんなの無視するに越したことは無いですが。」


 ショートカットの金髪の同僚の予想にアルバートはいくらなんでもそんなことは無いだろうとたかを括っていた。


 しかしエマソンの想像通り、数時間後には反戦運動のデモが基地前に広がっていた。

次回投稿は明後日の22時半ごろになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ