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第四話 かつての敵は味方(2)

『今、連邦軍の機体ごと新型機破壊しようとしなかった?』

「いえ、あの角度だとあそこしか威嚇射撃ができませんでした。後程ビデオを確認していただければ分かります。」


 上官であるエミリアの言葉をアルバートは心外だといった感じで否定した。


『そう。ならいいわ。今回の私達の目標はVIPの護衛とこの目の前にいる三機の新型機の足止めあるいは破壊よ。それだけはくれぐれも間違えないようにしなさい。敵は連邦軍ではなく、このテロ組織なのだから。』


 アルバートはエミリアの言葉に頷くと目の前の三機に切りかかる。

 二対三と不利ではあるが、エミリアと連携を取っているアルバートは戦場を優位な状態で進めていた。


「所詮はテロリスト。練度がそこまで高いという訳ではない!」


 アルバートが一機を相手にするとエミリアが即座に残りの二機が近づかないように援護射撃を行う。それをターゲットを変えて何回も行い足止めをする。


「増援部隊の到着まであと60、それまで逃がさないように抑え込むが、敵の動きもこちらの攻撃に慣れてきたものになってきたな。そうなると逃げられる可能性も上がるか。」


 冷静な判断を下し、どう対処していくか考える。


「一機を人質にとって逃がさないようにする? いや、流石にテロリスト相手にそれは効果が薄いか。」


 戦闘をしながら戦術を考えていく。それがアルバートがエミリアから教え込まれていたことだった。


『少佐。私も前に出ます。』

「了解しました。」


 その言葉と共にエミリアの機体が前進を始めた。同時に戦況が大きく変わる。強奪された三機が先行するエミリアの機体へと、集中砲火を浴びせる。しかしエミリアはその攻撃に怯むことなくすべての攻撃を避けながら、目星をつけたブラギに斬撃を加える。

 一撃一撃は致命傷を与えることはなかったものの、プラズマサーベル一つでブラギを押し込んでいく。


 アルバートは他の二機がエミリアの邪魔をしないようにかく乱をする。先ほどまでとやっていることが異なっていたが、攻撃の息はぴったりだった。そして二人で三機を追い詰めていた時だった。

 コックピットに大きなアラート音が鳴り響く。


「基地から?」

『デグレア少佐! すぐに下がりなさい!』


 緊迫感のある言葉にアルバートは彼女に倣ってすぐに機体を後退させる。

 同時に遠方から光が見える。それが艦砲射撃によるものだということに気づくのと同時にイルキア基地の自動防御システムが展開され砲弾が細かく寸断される。そしてその自動防御システムによる対空砲火はエミリア達と奪取された三機の間を引き裂いていた。

 

 その少しの間で三機は全力で撤退をした。



「ここまでか。」


 アドハムは舌打ちをすると忌々し気に二機の帝国軍の高級量産機であるアレースを見た。


「仕方ないな。もう少しだけ戦果を出したかったが……。」


 アドハムは悔しそうに言う。

目標は達成できなかったが、その上に奪取した新型機すら失えば自分どころか家族の立場すら危うくなる、そう判断をしたアドハムは撤退の指示を出す。


「これで及第点とするしか。」


 母艦に向かって撤退するコックピットの中でもう少し戦果を出したかったとぼやくしか無かった。



「撤退したか。」


 強奪された三機のキャスターがイルキア基地から離れたのを見てアルバートは一度だけ息をついた。

 そのまま空中でスラスターをふかし、格納庫の近くのハンガーに移動する。彼の眼下には力尽きたように両腕が無い状態で膝をついて鎮座している式典用のデュラハンがあった。白く鏡面磨きされていたであろう塗装はあちこち剥がれ、数刻前のきらびやかさなどは微塵も残っていなかった。


「まさかあんな機体であそこまでやるとは。」


 そう言いながらデュラハンの前で疲れたように座っているパイロットをちらりと見る。


「俺には出来ないだろうな。あんな無謀なこと。」


 それはエミリアに散々教え込まれていたことだった。

 無謀なことをするな。目の前の敵には色々と戦術を考えた上で対応をすることと。


 しかし一方でこうも思う。

 あのデュラハンが無謀なことをしてあそこであの三機を止めなければ、帝国連邦両国の要人たちが死んだこと、それだけは認めなければならないと思う。そして下手をすれば自分たちもそこに巻き込まれていただろう。


 だからこそ彼にはそれが悔しかった。


 自分の軍服の左胸についている勲章を見る。それは宇宙要塞モズの攻略戦にて三機の天使シリーズの機体を撃退したことに対しての勲章であった。

 しかしそのときの記憶はもう彼には無かった。だから今彼にかかっている重圧を跳ね飛ばすには戦果が必要であった。


(俺がエミリアの隣に立つにはもっと戦果がいるが、今のやり方だとそれは……。)


 だからこそ彼にはそのデュラハンは羨ましくもあり、そして憎たらしくもあった。

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