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第三話 かつての敵は味方?(1)

 あちこちから黒煙が上がっている帝国軍が有するイルキア基地、その上空では二機のキャスターが戦っていた。


「なんだ、この機体!」


 帝国軍の新型機ブラギを奪取した少年兵であるアドハムは目の前にいる式典用の機体を相手に苦戦をしていた。ハンガー周辺で式典に向けた警備をしていた帝国の現行主力機クロノスを数機を撃破した。そして今目の前で戦っている式典装備のデュラハンと呼ばれる機体、かつて帝国と戦争をしていた連邦軍の一世代前の機体数十機を一瞬で撃破した。それほどの性能差があった。

 にも関わらず目の前のまともな武装を持っていないデュラハンには押されていた。


「なぜこの動きについてこれる!」


 機動力では数倍の差がある旧型機に負けそうになっていた。


「この任務を失敗するわけには!」


 彼の目標である帝国や連邦の要人を殺せなくなってしまう。そのためには目の前の機体を無視して進めばよいのだが、それが出来なかった。

 このとき、機体性能の差があまりにも大きいためにデュラハンでは致命打を与えることが出来ないため無視して全力で進めれば進めたはずだった。

 しかし何回かそれを阻止されたことからアドハムは目の前の機体を対処しなければ行けないと思いこんでいた。


『アドハム。こっちの方は終わったけど援護いる?』


 そのときコックピットに仲間である女性の声が届く。


「あぁ、頼む。ラウダ。」

『了解。』


 小隊の中では自分が一番優秀だと思っていた彼にとっては誰かの助けを受けるというのは屈辱的なものだった。しかし、そんなプライドに捕らわれていた結果が今の助けに来る状況だということは分かっていた。


 こうなったら任務を成功させるしかないとアドハムは目の前の機体を対処する算段を練り直した。



「合流されるか……、不味いな……。」


 連邦軍のデュラハンのパイロット、アルベルト・シュタイナーは目の前にいる一機のキャスターを単独で抑えていたが、他の二機の新型も集まりつつある状況は明らかに彼にとって不利であった。


『シュタイナー准尉。今貴官の近くに奪取された帝国の新型機を確認することはできるか?』


 輸送機のパイロットからの声が響く。その声がひっ迫したものであるから、レーダではなにか不味いことが起こっているのだろうかと考える。


「今そのうちの一機と戦闘状態に入っていますよ!」


 アルベルトは額に脂汗を浮かべながら怒鳴るように答える。


「第一どうして帝国軍の新型機が奪われてるんですか!」


 彼の声音は怒りではなく焦りから来ているものであったが、鬼気迫るものであった。その瞬間機体の装甲に傷がつく。


「帝国軍、ましてやイルキア基地なんて昔の新型機奪取でより警戒が強くなっているはずなのに!」

『そんな詮索は後だ。それよりその機体撃破できそうか?』

「いやいやいや、流石にそれは無理です。一つ前の、しかもキャスターが恐竜的進化をする前の世代の機体、さらに武器が無い機体で勝てると思います? 新型の、しかもフラッグシップ機に。」

『それでもやってもらわなければならない!』

「武器が無い状態でどうやって!」


 その後にくだらないプライドを張っていないで早く援護を呼べと口に出かけた言葉を飲み込む。恐らく撃破という指示は連邦としての変な意地が張っているのだと彼は考えていた。


 普通に考えてこの状況ならばアークウィン家の部隊が動いていないはずはないのだ。そして援軍の打診は来ているのだが、自分の部隊で危機を救ったという実績が欲しいためにこんなバカなことを言っているのだろうと思う。


『だがその後ろにある館にはベッソノワ司令がいる。』

「そんなことは分かっています! だけど援護が無ければどのみち押し切られますよ!」

『分かった。後もう少しだけその場を持たせろ。帝国軍から援軍が来る。』

「何機ですか?」


 しかしアルベルトのレーダには帝国軍の増援の部隊が全く見えなかった。


『二機だ。』

「二機だけですか?」


 その言葉にアルベルトは不満そうな声を隠さずに言う。


『安心しろ。帝国のエースパイロットのアークウィン大佐とデグレア少佐だ。』

「分かりました。」


 アルベルトは不機嫌そうに答えると戦闘に集中するため通信を切る。そして激しくなる敵からの攻撃を機体各部のスラスターを使いながら回避していた時だった。

 そんな彼の機体に対して突如別方向から青白い光の筋が走り、胴体のくびれた装甲の一部が溶かされていた。


「敵の合流がおもったより早いか。」


 更なる追撃を防ぐため緊急回避をする。しかし体にかかる不快なGは覚悟していても消えることはない。加えてそんな戦い方をしていれば当然機体にも限界が来る。


「しまった!」


 予想されていたより機体の痛みが激しく右足首のモータが過熱し異常を示す警告音が鳴り響く。


「こんなところで! 死んでたまるか!」


しかし、そのときに生じた焦りでデュラハンが姿勢をおおきく崩す。


「こ、のぉぉぉぉ!」


 手に持っていた式典用の剣を突き出す。突き刺されば装甲にかすり傷を付けることができる程度だとアルベルトも理解していた。そんな武器であっても今の彼にとっては頼りになる相棒であった。

 しかしそんな期待も空しく剣は帝国軍の新型機であったブラギの装甲に傷ひとつつけることは無かった。

 二機はそんなアルベルトを取り囲むとなぶるようにデュラハンの右手を切り落とす。そのまま左腕を切り落し止めを刺そうとする。


 コクピットにアラーム音が鳴り響く。それが背後から迫っているものだと近くするのと同時に機体を下降させる。同時に先ほどまでデュラハンがあったところを一筋の光が走る。


 帝国軍の新型機であり、現在の帝国軍の主力量産機クロノスの上位機種に当たるアレースがモニターに映る。そして放たれたプラズマライフルの筋が背面の一部をかすったせいでデュラハンに二基搭載されているメインスラスターのうちの一つが出力を下げていく。


「機体のバランスが!」


 そうして空間での制御を失った機体は、撃ち落とされた鳥のようにクルクルと回転し、地面に墜ちていく。


 地上にぶつかる衝撃を最小限にするためにブースターを必死に操作するも結構大きな音を出して墜落した。従来の飛行機などであれば、パイロットは無事では済まない。しかし、キャスターであれば、パイロット自動保護装置が何重にも働きそのようなことは無かった。

実際中にいたアルベルトは身体自体は問題なかった。


 一方で格納庫間の通路に落下したデュラハンは機体のフレームが大破しており、修復は不可能となっていた。幸いにも燃料は先程全部使いきったため、爆発の心配をすることはなく外に出る。

 周囲からは爆発による煙の匂いが立ち込める。


「助けてもらったとはいえ、最悪のタイミングだぞ。」


 空を見上げて戦っている二機のキャスターを睨む以外今の彼に出来ることは無かった。

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