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第二話 新型機強奪事件(2)

「今回はよろしく頼むよ。アークウィン大佐。」


 ドミニア帝国の皇帝カーバインの前でエミリア・アークウィンは最敬礼をする。アルバートとエマソンもそれに倣って最敬礼をする。


「勿体無きお言葉。私の命に換えてでも皇帝陛下の身の安全を保障いたします。」

「別にそこまで気を張らなくていい。」


 カーバインは優雅な仕草でそうプレッシャーにならないように言葉を重ねる。しかし人によってはこの言葉に対し不満を抱くものもいるのであろうが、エミリアはそれに対し人目を惹く仕事用の笑顔を張り付けたまま変えなかった。カーバインは彼女を満足そうに見ると今度はアルバートの方を向く。


「君がデグレア少佐か。君の噂はよく聞くよ。」

「ありがとうございます。」


 一方でアルバートは緊張のため、かなり張り詰めた表情をしていた。


「そんなに固くならなくていい。」


 そうは言うものの、彼の表情は1ミリも変わらない。カーバインはそれに対して少し笑ってしまう。だが、そのすぐ後にとても優しそうな目をして彼に語り掛ける。


「だが、君には期待しているよ。アレニスの息子だしかなりいいパイロットになると私は信じているよ。」


 そういってアルバートの肩をポンポンと叩くとカーバインは進路を変えた。


「こちらへどうぞ。」


 カーバインの護衛がそう言って式典会場へ連れていこうとした時だった。

基地内に耳をつんざくような大きなアラート音が響く。


「アラート? どこから!?」


 エミリアがその詳細を確認しようとした瞬間だった。

 基地内に大きな爆発音が響く。


『十三番ハンガーにて爆発を確認!』


 十三番ハンガーはこれから式典でお披露目をする新型機が入っているハンガーだった。


『同時に何者かの攻撃を受けている模様! 保安部隊は速やかに事態の収拾を行って下さい!』


 その声と同時にカーバインの周りを護衛が囲い込む。その表情は皆緊張のある面持ちだった。そしてエミリアも仕事用の笑顔を辞め、真面目な顔でこの場での対処を考える。


「避難シェルターはあっちの方です。エチュート少佐、案内を! 私はこれより事態の収拾にあたります。」

「分かりました。」


 エマソンはエミリアの言葉に頷くとすぐに護衛に道順を示す。エミリアもそれを確認すると格納庫の方へ走りだそうとした。


「気を付けていきなさい。」


 それを見てカーバインはアルバートとエミリアにはっきりと聞こえるように少し大きな声を出して言う。


「ありがとうございます!」


 カーバインの言葉に頷くとエミリアはアルバートとともに自身のキャスターに乗り込むべく格納庫に走り込む。

 格納庫内はオイルの臭いが充満していたが、そんなことを気にする余裕もなく、エミリアはパイロットスーツに着替えることなく既にコックピットが開いている自身の乗機の目の前に設置されているはしご車のような乗降用の自動スロープを使い乗り込む。


「システム起動。司令部、現在の状況を。」


 乗機であるキャスター、アレースが起動するまでの間に戦況を把握する。


『奪取された三機は現在基地内部で既に出ている式典用の機体と交戦しています。ただ戦況としてはかなり不利です。』

「敵の目標は帝国と連邦の上層部?」

『現状そこまでは確定は出来ませんが、その可能性が高いと思います。』


 オペレータと話をしている間に敵機となった元帝国の機体の位置を転送する。


「各部異常なし。デグレア少佐。」

『こちらも問題ありません。』

「了解。アレース、発進します。」


 エミリアはそういうと乗機である白色のアレースを格納庫から歩いて外に出すとメインスラスターを噴かし、上昇した。


「また戦争が始まるか。」


 エミリアはコックピットの中で下を向き一人そう呟く。


「だけど今度こそ。」


 そしてすぐにモニターに向き直るとそう決心を決める。

 今度の戦争こそアルバートが無事のまま終わらせると、彼女は最愛の人を護るため決意を固めた。



「ベッソノワ准将。こちらへ。」


 エニシエト連邦からの出席者の一人として式典に参加するために準備をしていたユリア・ベッソノワは係員からシェルターへの避難を促された。

 かつてバラノフ家の親衛隊の一員としてアルバートやエミリアと戦っていた彼女は現在ベッソノワ家の当主となっていた。


「分かりました。」


 あの戦争の後彼女の身長は伸び、彼女のことを子ども扱いする人間は皆無となった。そしてその伸びた身長によって今では窓の外の景色もはっきりと見えるようになった。


「戦闘? 式典の最中で?」

「申し訳ありません。」

「いや、別に責めているわけじゃないけど。」


 彼女はそういうと一旦窓の外を見る。あちこちに黒煙が上がっており、なにかしら反乱かテロがあったのだろうと推測する。


「あれは新型の機体か。そうか。また機体の奪取から戦争が始まるのか。」


 そう呟くと大きくため息を吐く。


「この式典が終わったらようやくゆっくり出来ると思ったのに。」


 そう呟いてから考えが既に大分戦争に毒されていることに気づく。


「今度の戦争は早く終わると良いのだが。」


 彼女はそう呟くと避難を始めた。

次話は22時半頃に投稿します。

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