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第二十話 失敗の連続

「クソ。馬鹿みたいに硬いな。」


 アルバートたちがヘンリッヒと交戦している間、ブライム・エイブラウもまたアスピドケロンと交戦していた。

 クロノスの右腕に搭載されているプラズマライフルを撃つ。しかし直撃すれども装甲には傷ひとつつかなかった。


「コーティングが効いているのか?」


 プラズマライフルのモードを変えて対コーティング装甲用の弾を撃つ。しかしそれすら連邦の新型であるアスピドケロンにはダメージがつかなかった。


「これはマズいかもな……。」


 これでは地上部隊を投入したところで意味が無いと判断を下さざるを得なかった。



「クソ! あの防御力と攻撃力はなんなんだ!?」


 ヘンリッヒの乗るアスピドケロンからの攻撃を避けながら、なんとか取り付こうとアルバートはしていた。


『アル! 近づき過ぎ! 離れて!』


 アルバートのクロノスのみに攻撃が集中している状況を見てエミリアは指示を出す。彼としてはそちらのが気が楽で良かった。


「しかしデータを取るのならもっと近づかないと無理だぞ。」

『それはそうだけど……。』

「それに隊長も来ると言っておいて来ない。それなら情報だけ集めておいた方がいいだろ。」

『けど、あまり危険な真似は……。』

「どうせあいつは俺にしか興味が無いし、それなら丁度いいだろ。それに最近は調子もいいし、やってみせるさ。」


 アルバートはそう言うと、機体の高度を下げる。そんな彼をエミリアは止めることが出来なかった。



「当たりなさいよ!」


 ヘンリッヒは接近するアルバートのクロノスに対し対空砲火を行う。しかしその攻撃は一つたりとも直撃することはなかった。


「不味いわね、とでも言うと思った!?」


 アスピドケロンは体躯に対して細見だが腕を展開する。アルバートはその腕に狙いを絞って攻撃をするものの、先程までと同様に傷ひとつつけることは出来なかった。


「無駄よ! 無駄無駄! アスピドケロンは鉄壁なのよ! 分厚い装甲! そこに私の魔力を集中させたフィールドのお陰で何一つ傷など付けられないのよ!」


 アルバートは接近戦を諦めたのか一旦距離を取る。


「相変わらず連れないわね!」


 アスピドケロンは離れていくクロノスに背後から砲撃を集中させる。それでも一発も直撃することはなかった。



「とりあえず、解析装置はつけたが……。データ集めに時間がかかりそうか。」


 SCAN中と表示されているコックピットのモニターを見て適度な距離を保つ。


『アークウィン少佐、デグレア少尉。そちらの方は何とかなりそうか?』


 ブライムから通信が入る。


『少々難しいかと。』

『少尉はどう思う?』

「分かりません。ですが今のところ砲撃は効かないみたいです。」

『そうか。』


 ブライムは考えるように唸っていた。


『二人とも一旦その戦域を離れろ。艦砲射撃を行う。』

「待ってください! 今データを集めているんです! それに今まで集めたデータからだと戦艦の砲弾でも破壊は不可能です!」

『だが、やっていない限りは分からんだろう。これは命令だ!』

「この敵相手だと現時点での攻撃は無理です。それよりは情報を集めて次の手を打つべきかと。」

『しかし、こちらとて試していないものをやってみなければ分からんのだ! いいから早く下がれ!』


 この辺が潮時かとアルバートは考える。これ以上揉めたところでなにものにもならないと。

 幸いにもSCAN完了という表示が出たので下がる。そのすぐ後に艦砲射撃が行われアスピドケロンに着弾するが、装甲に傷をつけることは出来なかった。


 これが決定打となりマリノアス基地への攻撃は再度失敗に終わった。


 *


「少尉、さっきは悪かったな。」


 作戦が終わるとアルバートは格納庫でブライムに呼び止められていた。


「いえ、こちらこそすみません。」

「だが少尉、分かっているな。軍隊というのは一人で好き勝手やっていいところではない。」


 そうブライムがいうとエミリアがそれに驚いたような顔でブライムを見る。


「一人の無責任な行動が他の隊員を、下手したら市民を巻き込んで死ぬかもしれないんだ。それを理解しろ。」


 ブライムはアルバートが反省していると考えてそこまで今回は強く言う気は無かったのでそれぐらいにして済ませた。


「申し訳ありませんでした。」

「分かったなら部屋に戻っていい。」


 そういうとアルバートは一度敬礼すると部屋に戻る。そして今度は入れ替わりにエミリアがブライムの元を訪れていた。


「大佐が無責任な行動とかいうのに素直に驚いたのですが。」

「まるで普段から私がそんなことをしているといった感じだな、アークウィン少佐。」

「違うんですか? 新入りのお守りほったらかして因縁の敵に攻撃しに行ったりとか、新入りに出来もしない数の敵を押し付けたりとか。」


 これは明かなエミリアの嫌味だった。


「まぁ、それに関しては否定しないが。」

「いつも心配することになるこちらの身になってください。」

「次からは気を付ける。」

「では私もこれで失礼します。」


 そう言って出ていくエミリアをブライムはため息をつきながら見送った。


「それにしても少尉の判断が正しかったか。」


 ブライムは自分のクロノスを見上げる。


「俺もそろそろ潮時か。」



「アル? 入るわよ?」


エミリアはアルバートの部屋に遠慮なく入る。


「今間が無いことなかったか?」


 アルバートは恨めしそうな目でエミリアを見る。それに対して彼女は暗い部屋で彼の顔をじっとみた。


「なんかしてたの?」

「いや、なにも。」

「そう。まぁいいわ。」


 彼女はアルバートのベッドに座る。


「それにしても珍しいわね。アルが上に反抗するの。」

「そうか? 割と昔から、いやそうでもないか。」

「あんまりアルらしくないけど、なにか焦ってるの?」

「焦ってる?」


 エミリアのその言葉にアルバートは一瞬イラッと来たが流した。

 こういうときに人の感情を掻き乱すのは辞めて欲しいと本当に思う。それを言っても無駄だと言うこともまた彼には分かっていた。

 しかし、その偶像化がアルバートにとって一番辛かった。

 だから心を落ち着かせるために一度言葉を変えて受け止める。


「焦っているか……。まぁ確かにそうかもな。」


 そんなことは分かっていた。


「戦果を出さなければ意味がないからな。能力が無ければエミリアの隣に経ち続けることは出来ない。そんなのはお前もよく分かっているだろう?」


 分かっている。これはエミリアに対する八つ当たりだと。こんな卑怯な逃げ道の塞ぎ方があるかと、アルバートは彼女の顔を見ることが出来ず、顔を背ける。


「珍しいわね。アルがそういうこと言うの。というか懐かしいかも。」


 それに対するエミリアの答えはなぜか異なっていた。


「私があなたを手放すことは無いのはよく知っているでしょ? だからゆっくりでいいのよ、アル。別に撃墜数が少なくてもいいじゃない。」


 そう言ってアルバートの頭を撫で始める。

 しかしその言葉はアルバートには更に焦りを与えるだけだった。

次は水曜日の22時半頃に投稿します。

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