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第十話 足の引っ張り合い

「これが親衛隊隊長の……。」


 アルバートはブライムの動きを見て感嘆の声を出していた。その動きはアルバートが今まで好んで行っていた動きと違うものであった。

 これまで彼が行っていた動きは敵の攻撃をギリギリまで引き付けて回避することがメインだった。

 それに対してブライムは機体のスラスターを全力で噴かしていた。そして機体の細かい制御を偏向ノズルの方向と機体各部に搭載された姿勢制御スラスターで操っていた。文字にすると簡単であるが、ブライムが機体を動かす速度は本来ゼウスであればバランスを崩すような速度であった。それをは操り切っていた。


「ここまで差があるとは。」


 ブライムのゼウスを追撃している一機の新型機に狙いを定める。先程までと異なり今回は一発で仕留めなければならないため慎重に照準を合わせる。


「今だ!」


 そうして打ったレールガンは目的である敵機に直撃し一機の撃墜に成功する。


「後三機!」


 しかし先ほどまでのように今度は慎重に狙いを定められる環境ではなかった。


「やっぱり一機来るか!」

『デグレア准尉。後の対応は可能だな?』


 ブライムの言葉にアルバートはやっぱりこうなるかと思いながら接近戦を想定して左腕はすぐに実体剣を抜けるように準備する。メルジアが撃ってくるライフルの弾を回避する。


 そしてゼウスの右側で持っているレールガンを撃つ。無駄球を撃たないように慎重に狙いを定めて二、三発撃つが当たることは無かった。


 二機はそのまま距離を詰めると近接格当戦の距離になる。アルバートはすぐさまライフルを左肩部のラックにかけると同時に左腕に実体剣を持つ。

 メルジアと何回か剣を合わせる。その数回でアルバートは敵の動きを分析する。


「これならどうだ!」


 アルバートは敵の動きを推測して斬撃をギリギリで回避すると動きから反応できなさそうな箇所に斬撃を加えた。流石にコックピットには直撃しなかったものの、敵の右腕を破壊する。

 このまま敵を叩けると一気にとどめを刺そうとした時だった。急にアルバートの背後から砲弾が来るというアラーム音が鳴る。その大きな音に一瞬びっくりするのと同時にゼウスの左腕が落とされた。


「どこから!」


 その答えは分かっていたがそれでも叫ばずにはいられなかった。そしてその隙をついてメルジアはアルバートのゼウスから距離を取っていた。

 オリバー・パトンの攻撃に舌打ちをする。


『貴様は下がっていろ! 邪魔だ!』


 そのままオリバーのゼウスから体当たりを食らいよろけながらもアルバートはなんとか機体の姿勢を崩さないように制御していた。しかし基地からの対空砲火で各部装甲が破損していく。衝撃がある状態で体勢を立て直すと更に対空砲火の回避に少し専念した。

 そして突撃していくゼウスの様子を見る。

 一旦レールガンを構えるが、彼の機体が邪魔で攻撃することは出来なかった。


『デグレア准尉。敵キャスター部隊が撤退するので貴官も迎撃兵器破壊に向かえ。』


 ブライムからの通信が来る。


「了解しました。」


 後はただの空爆かと雲の上を舞っていたアルバートのゼウスは高度を落とし、敵の迎撃兵器を事も無げに破壊した。


 *


『デグレア准尉。こちらコンゴウ。着艦の確認をせよ。』

「了解です。これより着艦シーケンスに入ります。」


左腕が無い状態での着艦は初めてであったが、バランサーを起動させ機体の速度をゆっくりと着陸させる。


「なんとかなったか。」


アルバートは機体を歩かせると母艦であるコンゴウの格納庫に入った。

コンゴウの格納庫に入ったのは初めてだっため、中の光景を興味深く見ていると、ゼウスはハンガーについた。


『もう降りて大丈夫だ。』


外からメカニックが話しかけてくるのでアルバートはコックピットハッチを開けて機体から降りた。


「随分と派手に壊してくれたな。」


メカニックがそう話しかけてくる。


「味方に撃たれたんですよ。」


それにアルバートは不機嫌そうに返す。それを受けてメカニックもむっとした顔をする。しかしアルバートはそれに気づかず、オリバーの機体をにらんだ。


「今度誤射したら撃ち落としてやる。」


そう物騒な言葉を吐く。


「おい、ブライム。お前のところの新入り生意気だな。機体を壊したくせに。」

「すみません。ただ今回のは本当に味方から撃墜する気での誤射があったので許してあげてください。」


 アルバートの様子を見に来たブライムがアルバートの代わりに謝る。


「新人の教育ぐらいしっかりとやっておけ。」

「申し訳ありません。」


 ブライムが頭を下げるとメカニックは渋々と引き下がった。


「それで、この被弾はほとんどパトン中佐からのものか?」

「はい。左腕をライフルでやられました。各部装甲は体当たりですね。そのせいでバランスを崩されて対空砲火にも当たりましたし。」

「それで、そこまで怖い顔になっているのか……。」

「そんな怖い顔になってますか?」

「あぁ、今にも人を噛み殺しそうだ。」

「狼男じゃないんですから……。」


 そう笑いをとるためにブライムがいった冗談をアルバートはばっさりと切り捨てた。そのときになってアルバートが心配だったエミリアも傍に来た。


「ところであれって利敵行為とかその辺で何とかならないのですか?」

「そういえば准尉は法律についてはそこまでやっていないのだったな。その件に関してはレコーダーで記録が確認でき次第上に報告するが、多分もみ消されるだろうな。」

「そうですか。」


 アルバートはため息をつくように言う。

 下手をするとこちらの方が不味いといったところか。


「だが、それ以前に今回の作戦であいつの撃墜スコアは二機、それに対して准尉の方のスコアはキャスター四機に敵防衛施設の破壊。もしかしたらあいつはそれで切り捨てられるかもしれない。それを祈るしかないな。」


 これは要するに運次第だということだった。

 普通の大人なら不条理なことだと受け流せるかもしれないし、アルバートも普段の状態なら受け流していただろう。

 だがその前にオリバーによる不条理にさらされていたアルバートには既に限界であった。


「ですが、もしそうならなければ今度はどうなっても分かりませんよ。流石にあんなのに殺されるくらいならあいつを殺して自分も死んだ方がマシです。」


 アルバートは怒りを込めてブライムを見る。アルバート自身もこの怒りをブライムにぶつけることは間違っているどころか下手すると自分の身を危険にさらすということも理解はできていた。

 しかしそれを踏まえたうえでも怒りが収まらなかった。


「気持ちは分からなくもないがこればかりはどうしようもできん。お前が上に逆らえないように俺も上には逆らえん。」

「ですが、それだと自分の身を保護してくれるということも反故にされるということになると思いますが?」


 流石にこの言葉にはブライムもイラっと来る。


「大人にもいろいろ事情があるんだ。」


 そう苛立たし気に吐き捨てて格納庫から出て行った。


「やり過ぎよ。」


 エミリアもそれを咎めるように言う。


「分かっている。」

「なら……。」


 だがアルバートはそういうエミリアを無視して部屋に戻る。

 初めてそんな態度をとられたエミリアはアルバートの背中を見送るしかできなかった。

明日は21時半頃に投稿します。

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