第九話 アーレイ基地奪還戦
アーレイ基地。そこは帝国の主要基地の一つであるイルキア基地と連邦の主要基地の一つであるアクタールの丁度中間にある帝国が支配してある基地であった。
しかし現在は連邦の奇襲によって占拠されていた。その基地を奪還することが今回アルバートたちの任務の1つ目であった。
アルバートたちの機体を捉えた基地からは連邦軍の主力機であるデュラハンが十二機程出撃していた。
デュラハン、その機体でまず真っ先に挙げられる特徴としては機体に頭が無いことである。
基本的にキャスターは人型をしている。そして頭部にはセンサーとコクピットが搭載されているのが普通である。
しかしデュラハンでは頭部に搭載されるべきセンサーを胴体各所に配置、またコクピットも股関節部に配置することで被弾面積を減らすという方法にした。
一方でデメリットもある。この配置方法は実際には胴体のどこかに被弾すればセンサーの一部が使えなくなり、また初期の設計からもセンサー類に対する拡張性が無かった。
だがとても扱いやすかったため現場での評価は高く、また一機あたりのコストも低かった。
そのため数も多数生産されており、傑作機とほどまでは言えないものの比較的戦闘が多かった連合国や小国との戦闘に対しては有用だった。
ただしゼウスと比較すると性能がいささかばかり低かった。
かといって数が多いので油断できる相手でもなかった。
『まず敵のキャスターの数を減らしてから基地の占領に移る。』
「了解です。」
今回の作戦に参加しているのは八機のゼウスだった。内訳としてはアルバートたち親衛隊が一個小隊四機、そしてオリバー・パトンが率いる一個小隊四機である。
今回はアルバート達が基地に正面から駐留しているキャスターの撃破と防空設備の破壊、オリバー達が基地背後からの強襲であった。
そして親衛隊内ではブライムとアルバートが前衛、エミリアとエマソンが後衛となっていた。
『全機攻撃開始!』
それに合わせてエマソンとエミリアの機体は進軍速度を落とす。一方でアルバート達は速度を落とさずにデュラハンの部隊に突撃していく。
敵からの攻撃は怖いものであったが、アルバートはブライムの機体についていく。
そして近くなったデュラハンの部隊にライフルで攻撃する。
ブライムのように一発で一機とはいかないものの、五発で一機のペースで撃墜していく。
「目の前の敵に集中。」
敵の動きを観察してどこに逃げるかを予想して撃つ。そうしたことを繰り返していると、十二機いたデュラハンは既に一機もいなかった。
初めての戦闘だったため、アルバートは撃墜数を数えてはいなかった。ただこの戦場でなんとか自分のやるべきことをやったという安心と緊張から一瞬だけ解き放たれたことから呼吸を整えていた。
『よし。次は敵基地の迎撃兵器の破壊だ。』
「了解です。」
雲より上にあった機体をアーレイ基地へと降下を始める。といってもやることは迎撃兵器の位置をエマソンたちに送信し、彼女達がミサイルを撃ち着弾するまでの目となることだった。
そのため十分に距離を取りながらアルバートは着弾する様を眺めていた。
*
ブライム・エイブラウはアルバートの想定外の活躍に驚いていた。
「これは、中々強いな。」
感心したような声を出す。当然本人には聴こえないようにではあるが。
「この調子なら占領までは予定通りにいくか。」
しかし物事はいつもそう思い通りに上手くいかないというのはブライムの経験上では明らかであった。
『大佐、至急パトン小隊の援護に向かってください。』
そのブライムの予感が的中したかのように司令室から指示が飛んでくる。
「了解した。デグレア准尉。私と一緒にパトン小隊の援護に向かってもらう。エチュード少佐とアークウィン少尉はそのまま敵基地への砲撃を続けろ。」
『了解です。』
アルバートの声に影があるが特に気にすることはしない。
機体を再度雲の上まで上昇させるとパトンの小隊がいる戦域に向かう。
一方で少し嫌な予感もしていた。
パトンの小隊にいる隊員は旧知の仲であった。そしてその強さも知っていた。
(珍しいな、あいつらが苦戦するなんて。敵が強いのか?)
だがそんな疑問は不要だとすぐに忘れ戦場に向かった。
その戦域にいたのは四機のデュラハンではなく連邦軍の新型機であった。
「そういうことか。」
ブライムは以前連邦の兵器博覧会で見た機体だと思い出す。
機体名メルジア。連邦の機体では珍しく北欧神話でなくギリシャ神話の名前を冠した機体であった。
今までの主力機デュラハンと異なり、形は再び頭がある人型の機体に戻っていた。
また背面には従来機よりも大きくなった背面は巨大なスラスターがついていた。それに伴い装甲も増加していた。そのため従来のライフルが効かず、撃破するにはレールガンが必要な機体であった。
だから有効打になる兵器を持っていなかったパトン小隊は苦戦していたのだった。
次に味方部隊の状況を確認する。
オリバー機は左足首より下が無い程度だったが他の三機は四肢のいずれかが失われている上に武装なども破壊されており、とてもではないがこれ以上の対キャスター線は不可能であることは明白であった。
「中佐、一度部隊を下がらせろ。そんな状況ではもう無理だ。」
『いや、まだだ! まだ私の部隊は!』
「命令だ! 撤退しろ! 中佐!」
そう強く命令する。一方でブライムはパトンの反抗も予測していた。
「だとしたらどうやって戦う? その程度の武装しか持っていない部隊が? どのみちそのままでは敵の撃破は出来ない! それなら下の軍事施設を破壊しろ。早く下がれ!」
『ブライム、貴様! 小隊各機はこのまま戦闘を継続しろ! あんな裏切者にできてお前たちにできないことは無い!』
裏切者が誰を指しているのか、その場で理解できたのはアルバートブライムだけだった。
「冷静になれ、パトン中佐! これ以上この部隊に関わっていても意味は無い!」
対応できないことがあれば対応できるものが行う。そんなことは軍の将校過程で教えられる最も基礎的なことだった。
だが実際には現場でなんとかしろという精神がまだ根強く残っていたのでパトンの対応も一概に間違っているとは言えなかった。
そこまで考えた上でブライムはそう語気を強めて言う。
『ふざけるな! あれは俺たちが!』
「これは命令だ!」
その言葉に従ってパトン小隊の他の三機は機体を降下させる。
「デグレア准尉。私の援護を。」
ブライムはそれだけ言うと目の前の部隊にまず持っていたライフルで攻撃を仕掛ける。
「一人で新型四機の囮をするのは応えるが……!」
コックピットのフットペダルを踏みこむ。それに合わせてゼウスも一気に加速した。
次は24時半頃に投稿します。




