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#11. Wit observation(意外にも機転が利くんすよ)


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


「よし、ここから反撃といこうぜ!」


「うん! ジンタ、頑張って!」


「……いやいや。あんたら二人とも、戦闘できないんでしょ? いいから後ろに下がっていなさいよ」


 拳に手を当てているジンタ君と、それを無邪気に応援するアンジェちゃん。戦う気満々の二人を見て、私は呆れるように両肩を落とす。


 先ほど、まるでヒーローのようにアンジェちゃんを救ったジンタ君であったが。その正体は、何の能力も持っていない一般人パンピーだったとは。


 ……いや~。私が出会う人間は、素手で悪魔を殴り飛ばしたり、爆炎の魔法で黒焦げにする人ばっかりだったから。何の能力も持っていない人は、逆に新鮮だなぁ。


「てか、マジで? 本当に何の能力もないの?」


「そうっすよ。魔法も使えなければ、特別な異能の力も持っていない。まったくもって健全な一般男子っす」


 何も悪びれることなく、ジンタ君は腰に両手を当てて笑った。


「え、ちょっ、待って。……アンジェちゃん? 確か、ジンタ君がいれば何とかなるって、言ってなかったっけ?」


 心なしか、肩身が小さくなってる蜂蜜色の美少女を見ると。彼女は、しゅんと肩を落とした。


「ごめんなさい。ジンタはね、本当に何もできない普通の男の子なの」


「……マジか」


 頭の中で立てていた計画のほとんどが、音もなく崩れた。


「で、でもね! ジンタがいれば何とかしてくれる。そんな気がするんです! 実際、これまでだって何度も、わたしを助けてくれて―」


「わ、わかったから。そんなに力説しなくてもいいよ」


 いくら彼のことが好きだからって、気休めみたいな言葉はいらないよ。現状が良くなるわけでもないしね。


 ……わかった。一度、状況を整理しよう。


 夕方。市街地の広場。

 遮蔽物はなく見晴らしも良い。夕陽を遮るものもない。

 影の中から襲ってきた影絵のような悪魔。なぜか、あれから襲ってくる様子はないが、退いたわけでもないだろう。どこからか私たちを狙っているはずだ。


 私の武装は『デリンジャー』だけ。

 しかし、悪魔には一撃必殺であるはずの銀の銃弾。あれが効かないのでは、有効な攻撃方法は無いに等しい。


 あとは頼りにしたいのが、この二人だけど。

 アンジェちゃんは戦えるタイプではないのは明らかだし、ジンタ君は気合いだけで何の能力もない。


「(……あれ? もう詰んでね?)」


 思わず溜息をつきたくなる状況に、私は慌てて頭を振る。

 考えろ。考えろ。

 選択肢は常に残されているはずだ。それを導き出せるのかは、自分自身に掛かっている。


「……せめて、ジンタ君がもうちょっと使える男だったら」


「いやいや、ナタリア師匠! 俺だって、ちゃんと役に立ちますって。親が放任主義だったから、料理だってできるし。掃除や洗濯だって―」


「家政婦かよ!?」


「あと、追い込まれてから本気を発揮するタイプなんで! テストは一夜漬けが基本。前日までゴロゴロと英気を養ってから、一気に追い込むのが、俺の流儀っす」


「知らねーよ!」


「あと、意外にも機転が利くんですよ。そう例えば―」


 ジンタ君は目を細めて、夕暮れの広場を睨む。

 わずかに背筋がピリつくほど、真剣な目だった。


 彼が纏っている空気、……明らかに変わっていた。


「……さっきの悪魔。たぶん、あれは本体じゃない。あの影は悪魔の攻撃の一部なんだ。本体は別のところにいる。だから攻撃しても倒せなかったんだ」


 確信しているかように、ジンタ君ははっきりと言い切った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの家事万能型 まあ弾が当たらなかったからそんな予感はしてました
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