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『裏切者のLOST‐No.(ロスト・ナンバーズ)』 ~ナタリア・ヴィントレスは、今日も逃げ出したい~  作者: てばさきつよし
Chapter10:Gambling Load(ギャンブル。それは人生と書いて過ちを読むどうしようもない奴ら)
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♯12. The best throw of the dice is to throw them away.


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


「極道マフィアのボス!? えっ、お姉さんがですか!?」


「えぇ、そうですよ。ここで正座しているバカ連中だけではありません。あたしは、この裏社会で一番の勢力を誇る、マフィア連盟のボスでもありますから」


 ふう~、と長い煙草で一服すると、すぐさま灰皿に突っ込んで火を消す。やっぱり、私がいることに気をつかってくれているのかな。……まぁ、その様子はめっちゃ怖いけど。


「自己紹介が遅れましたね。あたしは、ミリア・プロヴァンスと申します。……コルレオーネ・ファミリーの三代目の首領ドンでもあります。先ほどは、部下たちが不甲斐ないばかりに、申し訳ありませんでした」


 にこりと微笑んで、長いピンク色の髪をかき分ける。


 このお姉さん、……ミリアさんだけを見れば、優しそうに品の良い女性に見えるけど。その背後で正座をさせられている極道ファミリーたちは、全員もれなく黒焦げにされていた。幹部のゲンブに至っては、髪形がパンチパーマになってしまっている。


 ちなみに、カゲトラの奴は。

 面倒事に巻き込まれないうちに、さっさと姿を消していた。あの野郎、せっかくコーラを奢ってやろうと思っていたのに。くそっ、この私を置いて逃げるとは。なんて卑怯な男だ。


「それで、ナタリアさんの借金の件ですけど。今回の迷惑料ってことでチャラにしてあげます」


「本当ですか!?」


「えぇ。危ないことに巻き込んでしまって、本当にすみませんでした」


 ぺこり、とミリアさんが頭を下げる。

 なんだ。この人、本当に良い人なんだなぁ。……あの過剰ともいえる火力の魔法され見ていなければ、だけど。


「でもね、ひとつだけ約束してほしいの」


「はい! なんでしょうか、何でもしますよ!」


「うふふ、そう。それじゃあ―」


 ミリアさんがにっこりと笑って、私に言い放つ。


「今後、あなたにはギャンブルを禁止します。成人になっても、おばあちゃんになっても。この国でギャンブルに手を出さないように。あたしたちのカジノ店に入ってきたら、その時点で、お仕置き部屋に直行ですからね」


「へ?」


 目が点になる私に、ミリアさんは申し訳なさそうに言った。


「だって、ナタリアさん。賭け事で身を滅ぼすタイプでしょ? 部下たちから話を聞きましたけど、カジノでも暴れたみたいですね?」


「いや、ほらっ! そんなの今回だけですから! 次は絶対に大丈夫です! それに負けた分を回収しないといけませんし、今度は勝てる気がするなぁ、って」


「はい、決定っ! ナタリアさん。あなたは本当にダメダメな女の子ですね! 結婚して、子供を産んで。その時でも家庭を崩壊させかねません。なので、……出禁です。お墓の下で眠るまで」


「そ、そんなぁ~」


 がっくし、と項垂れる。

 うぅ~、次こそは勝てるような気がしたのにぃ~。絶対に勝てるのにぃ~。


「……あ、そうですわ。ナタリアさん、あなたにもうひとつお願いがありますの」


 うるうると泣きそうになっている私に、ミリアさんは更に酷いことをしようというのか。


「大丈夫ですよ。ただの伝言ですから」


「うぅ、まぁ。それくらいなら」


 ぐすり、と涙を拭いて。ミリアさんの言葉を待つ。

 そして、彼女はわずかに深刻そうな顔になって口を開いた。


「……時計塔のアーサー会長に伝えてください。『悪魔卿ロード』が何か動きを見せています。ただの悪魔だったら、何の問題もないけど。あの連中だけは別格。下手をすると、この首都さえ消滅しかねませんから」


「はぁ。よくわかりませんけど、アーサー会長に伝えればいいんですね。……そういえば、ミリアさんは。どうして悪魔のことを知っているんですか?」


 私が尋ねると、きょとんとした顔でミリアさんが答えた。


「あれ? アーサー会長から聞いていませんか? あなたは、あのシロー・スナイベル先輩と一緒にお仕事をしたと聞いていましたが」


 シロー・スナイベル?

 あぁ、あの狙撃手の男スナイベルか。それがなんだというんだ?


「あたしは、『13人の悪グリム魔を狩る者・リーパー』の一員ですから。『爆炎のミリア』、と呼ばれています。スナイベル先輩とは同期でもあり、彼の後輩でもあります」


 なので、何かあったら助けてあげますよ。

 そう言って、彼女が可愛らしくウインクをする。


 あぁ、なるほど。

 よくわかりました。つまり、こういうことですね。この綺麗で優しそうなお姉さんも、人間を辞めてしまった化け物たちとお友達だと。そういうことですか。……うん、絶対に近づかないようにしよう。


 私は強い覚悟の元、ミリアお姉さんに別れを告げた。



 そして、後日。

 変装して、こっそりとカジノの入り込んだ私は。

 すぐに正体がバレてしまい、こってりとお仕置き部屋で説教を受けることになってしまいました……





『Chapter10:END』

 ~Chapter10:Gambling Load(ギャンブル。それは人生と書いて過ちを読むどうしようもない奴らの所業)~


 → to be next Number!



…次回、一話短編。とあるカゲトラ君の日常を送ろうと思います。


※脚注

・The best throw of the dice is to throw them away.(サイコロの一番いい目とはな、そのギャンブルを止めちまうことさ)

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― 新着の感想 ―
[良い点] まあ彼女がボスなら極道が極道(笑)なのはなっとくかなあ 運営が禁止するなかまだやろうとするとは懲りないなあ
[一言] ミリアの裁定により借金がなしになったナタリアさん、カジノに永久出禁。 翌日に再挑戦してしっかりお仕置き部屋へ(苦笑) ナタリアさんの眠っている方が弱いのかそれとも中の人が弱いのかどちら…
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