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♯45.Re:JAZZ & Silver GIRL①(ナタリア・ヴィントレスは再び舞い踊る)


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


 切っても切れない、それが人の縁だろう。


 だから、自分から消えようとしていた。

 それなのに探してくれる人たちがいた。守ろうとした少女がいた。それを現実と繋いでくれやがった悪魔卿(ロード)がいた。


 こんな自分には、居場所なんかないと思っていたのに。

 覚えてくれた人たちがいた。

 必要だと言ってくれた。 

 それだけでー


「ほんと、余計なことを。なんて、いなくなってしまえば良かったのに」


 魔女アラクネが目を見開いている

 そのすぐ隣を。通り越すように、ゆっくりと歩いていく。


 透き通る銀色の髪。華奢な体。足取りは軽く、歩くたびに学園の制服が揺れる。スカートの裾からは、太ももに隠してある小型の銃『デリンジャー』がちらりと見えた。その少女は、倒れている者たちを見て、静かに呟いた。


「……よくわからないんだけど。本当に、わからないんだけどさ」


 傷だらけで倒れている、アーサー会長。

 大好きな少女を守ろうとして倒れた、ジンタ君。

 そんな彼に守られながらも倒れている、アンジェちゃん。

 かつての威圧感がなくなり、その身体までも利用されそうになっていた、ミーシャ先輩。


 その光景を見れば、胸の内に火が宿るのも当然だ。

 言葉も名前もいらない、身を焦がすような情動。


「あれ? カゲトラは?」


「顔に火傷がある坊やなら、外にいたぞ。なんかアパートの屋上から飛び降りて、足を捻ったとか」


「あー、相変わらず無茶苦茶ですね。それにしても『S』主任までいるなんて予想外ですよ」


 なんだ。可愛い部下を迎えに来てはいけないのか。そう言って、『S』主任が火をつけていない煙草を噛む。手にしたヴァイオリンケースを見せつけるように掲げると、その少女は嬉しそうに微笑んだ。


「……手出しは無用ですからね」


「当たり前だ。お前は私の部下だ。あんな半端者に負けるわけがない」


 その少女は。

 そのどこにでもいるような銀髪の少女は。


 ようやく、魔女アラクネのことを見た。


「わからないけどさ、今の私はとても不機嫌だ。腹の底から煮えくり返っていて、どうにかなってしまいそうなほどに」


 たぶん、許せないんだ。


 お前がいることに。

 お前が存在することに。

 お前が当然のようにそこに立っていることに。


 お前が仲間たちを傷つけて何も感じていないことに。お前がこれまでに何人もの人を殺めてきたことに。お前が悪魔を呼び出した犯人であることに。お前が原因で『彼女』を巻き込んでしまったことに。


 お前が。

 お前が。

 お前が、ナタリア・ヴィントレスという普通の少女を。その人生を無茶苦茶にしたことに。


 私は何があっても。

 許せないんだ。


「……私の名前は、ナタリア・ヴィントレス。東側陣営の諜報員であり、悪魔を狩る組織『No.ナンバーズ』の下っ端。私を必要としてくれた仲間のために、私を送り出してくれた彼女のために、私を繋ぎとめてくれたお節介な奴らのために。……お前をぶっ飛ばす」


 瞬間。

 魔女アラクネは彼女のことを見失い。そして、気が付いたときには。


 ……懐から、強烈な蹴りが下顎へと炸裂していた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 喰われたはずの眠り姫が起こされちゃったか
[一言] ナタリアさん、先制の一撃
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