#4. Money.Money.Money!(お小遣いも出るよ?)
指令書を受け取るのに拒否権など存在しない。
そんな東部陣営の癖が、染み付てしまっていた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 私みたいな素人に、悪魔の調査をしろって!? 正気ですか、私は何もできない普通の人間なんですよ!?」
こうなったら、恥も外聞もない。
悪魔がらみの事件ということは、また異形の怪物に襲われるかもしれないんだ。
そしたら、今度こそ。
……本当に命はない。
「ははっ、心配はいらないよ。今回は最初のお仕事だし、ミーシャ姫と一緒に行ってもらうから。……いいかい、ミーシャ?」
それまで会話に参加していなかった黒髪の少女に、アーサー会長が声をかける。すると―
「……貴族街に新しくできたクレープ屋さん。トッピングは苺とラズベリーソース。それで、手を打ってあげる」
こちらに顔も向けず、手だけをひらひらさせる。
その様子を見て、アーサー会長は満足そうに頷いた。くそっ、最初から私に働かせるつもりだったのか。と悔しさに歯をぎりぎりさせてしまう。
「それじゃ、今度の日曜日。よろしくね?」
「嫌です。危険だとわかっているのに、わざわざ自分から行く必要がありません」
私は、『ノー』といえる女の子なのだ。
何があっても屈するわけにはいかない。例え、卑劣な脅迫に脅されても、この鋼鉄の心は決して折れないぞ。
「これだけ、お願いしてもダメかな?」
「ダメなものは、ダメです!」
「何を言っても?」
「はい! 絶対に行きません!」
「そっか、それは残念だなぁ。『No.』のお仕事をすれば、報酬という名目のお小遣いも出るよ? 欲しいものだって買えるし、売店の限定スイーツも好きなだけ食べ―」
「あ、やります。やらせてください」
きゃぱっ、と反射的に私は立ち上がっていた。
もう、アーサー会長も人が悪いなぁ。そういうことなら先に言ってくださいよぉ〜。無償のボランティアなんて糞くらえだが、お小遣いが出るなら話は別だ。これで白色だけの下着生活からオサラバできるし、あのクソダサい支給用のジャージをまとめてゴミ袋に捨てられる。
ああ、素晴らしき。華の女子学生の学園生活!
「よーしっ、気合いが入ってきたぁ! ミーシャ先輩、よろしくお願いしますね。私、頑張りますから! えいえい、おーっ」
天井に向けて、小さな拳を振り上げる。
この時、すでに私は。自由になるお金の誘惑に取りつかれてしまっていた。
そうだな。お仕事が終わったら、まず最初に。
可愛い洋服を買おう!