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♯26.POPs or ROCK?(カゲトラの戦い①)


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


「よし、もうじき大聖堂の入り口だ。警戒を怠るなよ」


 シロー・スナイベルが大通りを大股で歩いていく。スナイパーライフルを肩にのせて、憮然と進んでいく姿からは、どこにも警戒している様子はなかった。


 そんな彼の背中に向かって、アーサー会長が声をかける。


「……急に悪魔たちが出てこなくなりましたね。何か理由でもあるんでしょうか?」


「あの女だって、無限に悪魔を呼び出せるわけじゃない。そもそもアラクネ本人には、悪魔を召喚するような大魔法は使えないはずだ。ルーブル美術館の地下金庫に保管されていた古代の魔術書があって、初めて悪魔を呼び出している」


 自分だけではできないことを、無理やりやっているんだ。それなら限界もあるだろうよ、とシロー・スナイベルは答える。


「それなら、打ち止めということでしょうか。もう悪魔を召喚することはできないと?」


「いや。次の戦闘のために力を残している、と考えたほうが妥当だろうな」


「なるほど。つまり、僕たちをノートルダム大聖堂の中におびき寄せて、大勢の悪魔たちで待ち伏せをしていると」


「所詮は、頭がイカレているだけの狂人だからな。気に入らないから壊したい。それだけだ。人間としての理性や思考は、著しく程度が低い」


「頭は子供のままの大人になった、そんな感じですね」


「まさに、その通りだ」


 シロー・スナイベルとアーサー会長は、並んで歩きながら言葉を交わす。

 その後ろを、ミーシャ、カゲトラ、気絶しながらも運ばれているジンタが続いている。時刻は、そろそろ日付が変わるころだ。このままいけば、陽が昇るころには決着がついているだろう。


 薄い雲が、月を覆っている。

 欠けた満月が、深夜の首都に月光を灯す。

 その欠けた満月が、一瞬だけ。

 ……何か、黒い影のようなものに遮られた。


「……む」


 その異変に気が付いたのは、シロー・スナイベルだけだった。肩にのせたスナイパーライフルを両手で構えて、周囲の気配を探っている。そんな彼の姿を見て、わずかに遅れてミーシャとカゲトラも戦闘態勢に入る。


 そのわずかな遅れが。

 致命的な結果をもたらすこともある。


 ――チ、チチィ。


 蝙蝠の鳴き声だろうか。人の耳に聞こえる可聴域の限界の音がして、空間がわずかに歪む。そして、気が付いたときには。


「……くそ。やられた」


 カゲトラが体から血を噴き出して、その場に倒れていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] カゲトラが一瞬でノックアウト。
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