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『裏切者のLOST‐No.(ロスト・ナンバーズ)』 ~ナタリア・ヴィントレスは、今日も逃げ出したい~  作者: てばさきつよし
Chapter 15:~ Good luck , Your life with Happiness (さようなら、友よ)~
110/205

♯1. 120 years later (だから私は、お前たち人間が嫌いなんだ)

挿絵(By みてみん)



――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


 ゴッホ、という画家は知っているかい?


 ……そうかい。


 それでは、パブロ・ピカソは?

 ヨハネス・フェルメールは? 

 エドゥアール・マネは? 


 ……どれも全員知っているって。

 ……みんな有名人じゃないかって。


 そうだな。その通りだ。誰もが知っている偉大な画家たちだね。


 じゃあ、それでは。

 ビゼ・クローチという画家は知っているかい? 


 なに、知らない? 


 それはおかしいな。

 彼も、先ほどと同じ偉人たちと肩を並べるほどの、大画家だというのに。


 生前、真っ白なキャンバスと向き合って、彼の信じる美しさへの挑戦を続けてきた。心からの渇望を、心からの慟哭を、そして心からの喝采を。ひとつの絵画として、この世界に生み出そうとした。


 そうだな、先ほどの画家たちと違うところを挙げるなら。

 彼が本当に評価されるのは、今から『120年後』ということかな。君たちにとっては遥か未来だろうが、私にとっては明日のようなものだ。


 誰が見ても、彼の絵画には圧倒されるだろう。

 誰が見ても、彼の技量を絶賛したはずだろう。


 そうでないのは、お前たちが自分の目で見ようとしていないからだ。誰かの言葉を借りるだけで、気取った評論家の言うことを鵜呑みにして、彼のことを売れない画家として貶めた。


 どうして彼が生きている内に、その絵を称賛できなかったのか。

 どうして彼が絶望で苦しんでいる時に、その傑作を正当に評価してやれなかったのか。


 それが、腹立たしくてならない。


 ……だから私は。

 ……お前たち人間・・が、嫌いなんだ。



――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 



「……ナタリアさん。君は、『悪魔卿ロード』という言葉を耳にしたことがあるかい?」


 夕方の放課後に。

 時計塔の執務室にいるアーサー会長が、私のほうを見ながら言った。


 珍しく書類仕事に追われていなかった。優雅にティーカップを傾けている、その姿は。この時計塔の代表に相応しいものがあった。


悪魔卿ロード? 初めて聞きました。……あ、いや。ちょっと待って」


 私はこみかみに手を当てて、記憶を手繰り寄せる。

 そういえば、ここ最近に出会った人たちが、そんなことを言っていたような気がする。確か、「悪魔卿ロードが動き出している。気をつけろ」みたいな。


 そのことを伝えると、アーサー会長は唸るように頷いた―


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― 新着の感想 ―
[良い点] 大人数または力のある人々の評価が優先されるのである(偏見
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