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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
999/1585

11-50 知っているから


いくら頑張っても、マルの力で守られている良山よいやまの事がサッパリ分からない。焦ったテイは玉置へ行き、宝玉たかたまの継ぐ子から体を奪おうとした。


ミヨもタマも北山の生き残り。マルに近づき、その力を奪えると考えて。



「ア゛ァァァァァァ。」


作戦、大失敗。






タッタッタッ、ピョーン。パクッ、トタッ。タッタッタッタッ、フリフリ。


「イイコ、イイコ。」


飼い主マルに撫でられ、ウットリとするマルコ。大きくなっても木の枝ポーンが大好き。


「そろそろ村に戻ろうか。」


「ワン。」 ハイ。


大好きなマルと朝の山歩き。



大蛇社おろちのやしろを清め、良村よいむらからトコトコ歩いて大実社おおみのやしろへ。社を清めるマルを守りながら、良山にいるおにたちとオシャベリ。


ルンルンで山歩きを続け、木の枝ポーン広場で楽しく遊ぶ。



夕の山歩きでは舟寄せ場、ははそ大木おおき、舟置き場を通って村に戻るが今は朝。広場から村への近道を、罠を避けながらユックリ歩く。






「おはよう、マル。」


「おはよう、タエ。」



良村には口をけなかったり、上手うまく話せない子が多かった。なぜ話せないのか、どもるのか知っているから悪く言わない。


だから滑らかに言えず、つっかえたり声が出難でにくかったりしても恥ずかしがらず、少しづつ話すようになる。


マルもカエもタキもくじけなかったから、スラスラと話せるようになった。



「まりゅこ。」


朝の山歩きから戻ったマルコを見つけ、嬉しそうにトコトコ。マルをジッと見つめ、ニコリ。


「ぉたぁり。」



南の地でいくさに巻き込まれ、生き残った幼子おさなご。共に逃げ出した親に死なれ、食べ物も無くなり一人きり。


誰にも頼れず、どこへ行けば良いのかも分からない。



遠くに家を見つけ、フラフラしながら向かったらボロボロだった。焼け残った家に入って眠ったハズなのに、気が付いたら閉じ込められていた。


隅っこで丸まっていたら他の子と共に出され、どこかへ運ばれた。



「おはよう、アケ。」


「まりゅさ、あぁよ。」



良村に引き取られて直ぐは話せず、犬を怖がっていた。


三日ほどして落ち着いたのかマルコに近づきジィィ。マルから『撫でてみる?』と問われ、コクンと頷く。



少しづつ話せるようになったがおのが幾つで、どこの生まれなのか言えない。名だってアヤシイが『アケ』と呼べば応じるので、そう呼んでいる。



「お顔を洗いましょうね。」


「あい。」


今でも他の犬に近づこうとシナイ。人見知りも激しいが、マルとマルコは別。






良村の大人は『早稲わさの他所の』人と言われ、子らと早稲の外れで暮らしていた。


親に死なれた子は、男も女も長く生きられない。だから皆で助け合い、耐え抜いたのだ。『いつか早稲を出て、新しい村を作る』ことを夢を見て。



大人はモチロン、子も知っているから伝えられる。


誰かが何かを伝えようとしているなら、黙って耳をかたむければ良い。どこか悪いなら手を差し伸べ、支えれば良い。


出来る事をして、出来ない事は出来るようにして、ユックリでも少しづつでも努めれば力が付くと。



他から救い出されたり、逃げてきた人の中にはまなったりどもったり話せない人、見えなかったり聞こえなかったり、腕や足が動かない人だって居る。


その多くが争いや戦に巻き込まれ、傷ついたり傷つけられたのだ。



体の傷は見えるし癒える。けれど心の傷は見えないし、癒えるまで時が掛かる。癒えないカモしれない。だから見守り、待つ。


己の力で立ち上がり、前を向くまで。


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