11-49 罠だと気付かず
あぁ、私も乗っ取られてしまった。
祝にナドなりたくナカッタのに、断りたかったのに引き受けたのは全て、残される人のため。独り身だから私が消えても、この身を奪われても構わない。
そう思っていたのに違ったよ。
「テイ。祝の力を求めるのは、強い力を求めるのは死ぬのが怖いからか。」
・・・・・・。
「生贄や人柱にして殺し、力を吸い取って生き長らえる。それで生きていると言えるのか。言い切れるのか。」
ダマレ。
「なぜ奪う、なぜ恐れる。死んで体を持たぬのに、祝の力を失っているのに。」
ダマレ、ダマレダマレ。
「私にも祝の力は有るがテイ、ヌシが求めるような強い力は無いぞ。」
ソレガドウシタ。
「もう諦めろ、根の国へ行け。祝辺が動き出した。ヌシに勝てると思うか、逃げられると思うのか。」
ハフリベナドコワクナイ。
「ホゥ。なら、どうして震えているのだろうな。寒くもないのに。」
ウルサイ、ヒッコメ。デテクルナ。
祝の力は有るが、こんなで良く祝になれたな。
山守には他に、強い力を生まれ持つのが居らぬのか。・・・・・・いや違う、この男が選ばれたのだ。
私の狙い、思いを叩き潰すために。
まぁ良い。弱いが有るには有るのだ、カラッカラになるまで搾り取ってやるさ。
祝辺の守を乗っ取れれば早いのだが、アレにはベッタリ隠が張り付いている。手も足も出ない。
「何かがオカシイ。烏を放っても分からないなんて。」
放っても放っても何も持ち帰らない。良山に入る事すら出来ない? どれだけ強い力に守られているのだ。
「欲しい。」
良山に居る北山の生き残り。はじまりの隠神、蛇神の愛し子なら恐ろしく強い力を生まれ持ったに違い無い。
ソレを奪う事が出来れば、私は私を遣り直せる。
「フフフフフフフフフフフ。」
この感じ、守りの力だ。宝玉の継ぐ子を隠していたのも、良山の守りが強くなったのも全て。
「そうだ、玉置を落そう。」
玉置は大国、戦好き。
宝玉の社の司が長を従えた? どの国にも逸れ者は居る。弱い心に付け入ればコチラのモノ。
スッと立ち上がり、ズンズンと進む。山守社を通って玉置、宝玉社へ。
「ナッ。」
行けなかった。
「何だ、この糸は。」
体に絡みつくネバッとした糸が、これまで集めた力をグングン吸い取ってゆく。祝の力では無い、新しい祝には無かった力だ。
とすると、この力は。
「キツネぇ。」
祝の体から逃げられないテイを見つめる九尾の妖狐。微笑んでいるように見えますがビックリ! 真顔なんです。
「この体に何をした。」
スンナリ入れたのに出る事は出来ない。
獄だと、罠だと気付かず奪った気になっていたのか。この私が魂ごと捕らえ、た? 騙したのか、私を。
キツネと手を組み、この私を騙したのか!
ニガシマセンヨ、テイ。
「離せ、離れろ。」
アキラメナサイ。ヤットシネルノデス、キヨメラレテ。
「諦めるモンか、何が清めだ。」
「テイ、まだ分からぬか。」
山守神の使わしめ、シズエに問われハッとする。
「蜘蛛の、大貝社の糸か。」
大正解! 使わしめ土の尻から出た、清めの糸です♪