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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
988/1585

11-39 何という事だ


先帝消滅から三週間後、新帝誕生!


天帝は非人格神。人に擬して現れるワケでは無いが先帝はナゼか、人の姿になる事を好んだ。理由は不明。


親しみ易さを演出した、のかも。



天獄てんごくや地獄の生き物、その多くは人に近い姿をしている。


角が生えていたり目が二つ以上あったり、耳が長かったり肌の色が個性的だったりイロイロだが二足歩行し、両手を器用に使う。


中級以上になると妖術も使えるので、人間界で生活しながら情報収集する妖怪も少なくない。






「無実の王を捕縛し、この場で公開処刑した事。先帝に代わって詫びる。」


人に擬した天帝が謝罪した。


頭は下げないし尊大な態度だが、天帝が謝罪するなど異例中の異例。


「今後このような事が無いよう、励め。」


まさかの丸投げ宣言。


「不正に関与した妖怪を捕らえ、地獄へ落とす。刑の減軽を求めるなら自訴せよ。」






自訴とは自ら、己の罪を訴え出る事。自首、と言った方が解り易いカナ?



犯罪事実・犯人発覚前に犯人自ら捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その処分を求める。


一般に刑の減軽事由となるので、犯罪発覚後に犯人が捜査機関に出頭する事にも。自首減免じしゅめんげんですネ。




『新帝バンザイ』『先帝とは格が違う』ナド、いろいろ言われています。けれど幼い新帝は内心、穏やかではアリマセンでした。


猫の大妖怪、ながれと愉快な仲間たち。白澤はくたく率いる特権階級妖怪を怒らせれば、それはもうスゴイ事に。


誕生ホヤホヤで消滅するなんて嫌!


美味おいしい物を食べてグッスリ眠り、楽しい事やワクワクする事を経験したい。せっかく生まれたんだもの。






「ホウ。諫言かんげんを聞き入れず兄、是をおとしめ、甘言かんげんに乗せられたと。」


「はい。」


隣接脱毛部が融合し、全身脱毛した王が項垂うなだれる。加えて食欲不振、不眠症にも悩まされた歖は本気で考えた。


兄一家の呪いだ、と。



ウトウトするたび、幼獣の鳴き声が聞こえるのだ。


何を言っているのか分からない。けれど助けを求め、必死に生きようとしている。父に、母に会いたいと。己はココに居ると声の限り。



「で、何をした。」






愚かだ。


獣望も無いのに王座を奪い、心を病んで自訴。コレを処刑するのは簡単だが、継承権を持つ雷獣が一体も・・・・・・。


面倒、いや迷惑極まり無い。


獅王の側妃が賢ければ、是王一家が死ぬ事は無かった。雷獣軍団を統率し、天帝たる我の手足となって働いたろう。






「申し上げます。地獄よりの使者が、こちらを。」


差し出された巻物を広げて直ぐ、天帝の顔色が変わった。真っ青を通り越して真っ白、いや透けて見える。


「ハァァァ。」


天を見上げ、脱力。







ハラリと落ちた巻物に記されていたのは、地獄で起こった奇跡の詳細。



やまと国つ神の御力により紡がれた清らな糸が布となり、キラキラ輝きながら是王、王妃、王子をフワリと包み込んだ。


優しく温かな光に導かれるように浄化された一家は、寄り添って宙を飛ぶ。と同時に輝く布が白い光芒こうぼういて消え、地獄に光の雨が降り注ぐ。



悪業の果報として責苦せめくを受ける亡者どもが、罪を認めようとしなかった亡者どもが罪悪を自覚し、悔い改めて涙を流した。


その涙がカラッカラに乾いた地獄の土を濡らし、川になったと。






「何という事だ。」


詳細を知った妖怪たちは巻物を厨子ずしに納め、神体とする。




ちなみに今も朝夕、おがんでいるそうな。


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