11-36 頼みの綱
※ お願い ※
前漢に包子が有ったかドウか分かりませんが、この話は古代ファンタジーです。ご了承ください。
杵築大社にフラリと、背と横腹に左右八つの目があり、人語を話す妖怪が現れました。はい、あの御方です。
「ハジメマシテ。ワタシ、ハクタク。」
中国妖怪のドン、来日。
「コレ包子。オイシイヨ、タベテ。」
包子は肉や餡などを入れた饅頭で、中華饅頭とも言います。
点心の一種で肉餡を入れたモノは肉包子、小豆餡を入れたモノは荳沙包子。餡を入れないモノを饅頭と呼ぶそうデス。
「これは良い品を。ありがとうございます。」
ポカンとしていた稻羽、お口を閉じてニコリ。
「ドウイタシマシテ。」
さすが良く人語を話し、万物の情に通じる神獣。語学堪能でいらっしゃる。
モチロン、突然の来社には理由が御座います。
先触れなく神成山、渦風社を尋ねると排泄物扱い。コホン、激流に呑まれてしまうでしょう。
そうなる前に何とかシタカッタのですが、残念ながら瓢の民と面識がアリマセン。
白澤は神獣。特級妖怪だった滑でも、遠目にチラッと御見掛けする程度。
麒麟や鳳凰など、瑞祥ズは天獄でも地獄でも大人気。チラ見したダケで良い事が起こりそう♪ なんてコトを考える妖怪が多いのです。
話を戻しましょう。やまとに知り合いがイナイ白澤は、大国主神を頼みの綱とするコトにしました。
中つ国、国つ神のトップですもの。笑顔で仲立ちしてくださるハズと胸を躍らせ、包子を蒸しましたヨ。
保存料を使用してイナイので、本日中にお召し上がりください。
「・・・・・ニャァ。」
大社から連絡を受けた流、思わず溜息。
「流、会いたくナイなら流そうか。」
渦風神がサラリと、オソロシイ事を仰った。
「いいえ、会います。」
明里に落ちたのが雷獣王妃、加津に落ちたのが雷獣王子。雷獣王は妻子の死を聞かされてから公開処刑。
エゲツナイ事を考え、実行に移した天帝は呪い殺された。で、一家は仲良く地獄行き。
無罪では無いけど情状酌量の余地、大いに有ると思うよ。地獄裁判で訴えて。
ソレは扨置き、何しに来た? 白澤。
ケンカ売りに来たなら買わニャいよ。喧嘩ってのはね、『ここぞ』という時に売るもんさ。ニャッニャッニャッ。
「流、いつ見てもキレイだね。ドキドキしちゃうよ。」
・・・・・・。
「はい、どうぞ。僕が心を込めて作った包子です。毒なんて入ってナイよ、安心して。」
アヤシイ。
「そんな目で見ないで、照れちゃう。」
「ニャにしに来た。」
「小耳に挟んだんだけど、やまとには強い浄化能力を生まれ持つ人が居るんだってね。」
「ソレがドウした。・・・・・・ニャッ!」
神獣が頭を下げるなんて、天変地異の前触れか?
「雷獣一家、浄化できるなら浄化してください。お願いします。」
大陸の地獄なんて行ったコト無いが、現世に悪業をなした者がその報いとして、死後に苦果を受ける所だと聞いている。
何でも贍部洲の地下にあって、鬼類が罪人を呵責するトカ何とか。
「雷獣は妖怪だけど死後裁判、受けられるんじゃ。」
「逆賊扱いされ、幽閉されている。」
「・・・・・・地獄へ行って戻れるのに心当たりがある。けどね、難しいと思うよ。」
「頼むだけ頼んでもらえないだろうか。」